第8回<ICTオフィスとFFFオフィスの違い>

“稼ぐオフィス”は
ICTの機動力があり

“稼がないオフィス”は
FFFに陥る

 今回は、<ICTオフィスとFFFオフィスの違い>の話です。
 ICTとは、インターネット・コミュニケーション・テクノロジーのことではなく、

I=一致して、

C=コミュニケーションをとり、コラボレーションして、

T=提案力を発揮する事。

FFFとは、F=不一致で、F=不協和で、F=不満だらけの負の連鎖です。私の造語です。

 オフィス環境改善業界で盛んに叫ばれている魔法の言葉があります。

「社内コミュニケーションアップのために」

「他社とのコラボレーションを潤滑にできる」

「競合に負けない提案力」。

 このような言葉に乗せられて作る、FFFオフィスにならないようにするにはどうするか、について考察します。

 現在も儲かってはいますが、更に飛躍を考える経営者は、自社の社員たちを観察して思います。「彼らの能力をもってすれば、今よりもっと売れても良いはず。少し環境でも変えてみるか。」手始めに、働く場であるオフィスに新たな仕掛けを考えます。

 「コミュニケーションを活発にするために、スペースを作って社員たちの交流の場にしよう。」

「様々な部署の人たちが“偶然出会う”止まり木のような場を作り、コミュニケーションから創造性豊かなアイデアを発掘できないか」

「訪問してきた他社とのコラボレーションをする場が欲しい。」

「競合他社に負けない提案力を、社員が身に着けられる場所ができないか。」

 そのようにお考えになるかもしれません。

 あったら良いですよね、そんな場が。

 そして経営者は担当者を呼んで、ご自身の“もやっとした”考えを述べます。

 これを聞いた担当者は早速、オフィス環境改善業界の営業マンに相談します。営業マンは自社に戻ってデザイナーに伝えます。そしてデザイナーは、納入事例を参考に、そのオフィスに適しているであろう、自分の好みのデザインを見つけて、パクります。

 伝言ゲームさながら行われる通常の流れですが、これでよく皆さんが不思議に思わないものだと常々考えます。

 だって、人伝に聞いて、元の本人の意図ってお分かりになりますか?

 私は勘違いこそあれ、絶対に伝わらないと思います。先程の例でも、このデザイナーの作成したオフィス空間を採用して作った場は、きっときれいなオフィス空間になりますが、果たして意図したような使い方をされるか疑問です。

 コミュニケーションは特に改善されず、コラボレーションも立ち消えになり、次が続かず、提案力を発揮するはずの場も、女子社員たちの「食堂」と化しています。金をかけて改装したのに、有効に活用されない、無駄なスペースになってしまいました。

 何がいけなかったのでしょう?

 FFFオフィスの元凶は、経営者の“もやっとした”考えをカタチにしたことです。

 このような願望を、ただ人伝にしていること自体がコミュニケーション不足です。

 ここから改善する事です。経営者の明確な意図を誰にでもわかる仕方で伝えることです。

「何のために、誰と組んで、どのような方向に進むのか」を社員たちに啓蒙することです。

「会社が何のためにこの度の改装をするのか」を社員たちが理解しているなら、オフィス環境改善業界の営業マン(とそのデザイナー)に要求する確度も変わりますし、置き家具や機器ではなく、空間をどの様に使用すれば、最大限の効果が上げられるかを、社員たちが考えるようになります。

 社員たちが経営者の意図を理解していれば、その最適空間にある家具が、たとえみかん箱でも、暗い空間であっても、狭くても、うるさくても、「あそこの会社と、この製品やあのサービスと組み合わせて、新たな創造ができないか」とあれこれ発想を膨らませる場となることでしょう。

 要するに、きれいなだけのオフィスで終わらずに、稼ぐオフィスを目指すなら、ICTなのです。I=一致して、C=コミュニケーションをとり、コラボレーションして、T=提案力を発揮する事。

 逆に稼がないオフィスはFFFです。F=不一致で、F=不協和で、F=不満だらけの負の連鎖です。

 ただ空間を飾っても、コミュケーションは向上しません。

 先週のコラムにも載せたように、世代間ギャップがあるからです。また好き嫌いもあります。私の観察したところによると、食べ物の好き嫌いの激しい人は、人間関係にも当てはまるようです。

 何の根拠もなく「あいつはいけ好かない、直感で嫌、私には合わない」とコミュケーションを取ろうとしません。逆に何でも食べる人は、人に対しても偏り見ることがなく、「何となく苦手」な相手とでも、コミュニケーションをとるものです。

 偏食家は偏人です。新規採用ならいざ知らず、雇い入れた人に、「君は好き嫌いがあるからクビ」とは言えません。この偏人はすでに社員なわけですから、うまく使っていかなければなりません。

 ではどうしたら、そんな偏人にコミュニケーションを活発化してもらえるのでしょう。

 最善策は、「一致した目標」を置いてあげることです。共通の目標を与えること。

 個人的な趣味の違いや好みの違いはありますが、仕事をしに会社に来ているわけです。これは共通しています。ここに働きかけて、共通で一致した利害のある取引先に目を向けさせるのです。

 つまり、社内ではなく社外に目を向けさせるのです。すると、そのことにおいては仕事とみなしますので、一致しやすくなります。これが第一です

 そして第二に、定期性を持たせます。よく「NO残業Day」とか「新規開拓Day」などとやっていますが同じようにします。強制的に習慣づけることによって、コミュニケーションを活発化させるのです

 第三は、コラボレーションしたいと考える、取引先を自社に呼び込むのです。通常の営業は、営業マンが客先へ出向き商談しますが、そうではなく自社に呼んで商談するのです。

 事前の準備にはテクニックが必要ですが、提案力が向上する良い方法です。スポーツでも、アウェイではなくホームの方が、本領発揮するのと同じです。

 是非ともその取引先とコラボレーションしたい内容をオフィス内に仕掛けてみて下さい。一致してコミュニケーションした社員たちが、取引先を待ち構えてトリコにする戦略です。

 この方法こそ、寺崎が提唱する、城下町式オフィスの典型例です。

 コミュニケーションとコラボレーションが大事なことは、皆さまよくご存じです。しかし、働く場であるオフィスに、その仕組みを創る賢い経営者は稀です。

 あなたが先陣を切ってみては如何ですか?

 黙っていても提案力はこれ以上改善しないのです。外回りの営業だけでは、これまで以上の商談力はないのです。

 ですから、構想力のある経営者のあなたが奮起して、「商談するためのオフィスにするぞ!」と考えを明確にして、そして「いつ、どこで、どのように成し遂げるか」を決めて、そこに社員たちを「一致した提案力に集中」するように仕向けることをしなければ、到底実現しえないのです。

 あなたのオフィスにはICTの仕組みがありますか?
 FFFを砕くためのノウハウは構築出来ていますか?