“稼ぐオフィス”には、
将来有望な社員がいる、
“稼がないオフィス”では、
本来有望だった社員を活かせない
「ねぇテラサキさん、社長が決意表明したら次は何するの?」
先週取り上げた社長の決意表明を実現させるべく、“稼ぐオフィス”をつくるために社員の中から実行する人選を行います。
選抜社員の役割は、
ズバリ“稼ぐオフィス”のプロジェクトリーダーです。
一般的なオフィスプロジェクトでは、社員が指揮を任される時、総務部長なり経理部長なり、実行部隊の長が責任者になり、部下たちにいつまでに、何をしておくようにと指示します。
優秀な部門長は、チームをうまくまとめ、動かして、プロジェクトを導いています。
この方法が間違いだというのではありません。
ただ、せっかくのリーダー養成の機会を、「慣れているから」「できるから」という理由で見過ごしていないでしょうか?
例えば、筋力トレーニングのときにあなたは毎回同じ回数しかやりませんか?
それでは筋肉は鍛えられないでしょう。少しずつ回数を増やしたり、負荷をかけていくことで筋力アップが図れます。
同じように、できる人に出来ることをやらせても、手抜きをすることはあっても、向上することは望めません。それよりも未経験の人、特に若い人を抜擢して、少しずつ負荷をかけて育てます。
オフィスの改装や移転は、ある意味「棚卸し」のようなもので、日常を見直し、業務を改善し、新しい取り組みを導入する又とない機会です。しかも、社内行事であり、失敗しても大きなダメージはありません。
こんな時こそ、将来会社を担って欲しい若手社員を思い切って起用して、彼らが思う存分“仕事”できるように後ろ盾を与えてやります。
“稼がないオフィス”は、権限がある部門長をプロジェクトリーダーに据えます。経験者でもあるので、ミスはしませんが、あなたの構想しているオフィスを作ることはできません。
言い方は悪いですが、やっつけ仕事なのです。「社長は面倒なことをさせるな、さっさと片付けてしまおう」という感じです。
このリーダーのもと、本当はたくさんのアイデアで満ちている若手社員の意見は握り潰されます。
「せっかくの機会なので、こんなことをしてみてはいかがでしょう?」と若手社員が斬新な意見・提案しても、「ううん、いいかもしれないね。でも今回は内装にお金がかかっているから次回にしようか」などと取り合わなかったりします。
「こうした方がお客様に喜んでもらえるのではないですか?」と食い下がっても、「君がそれを言うのは10年早いよ。今は自分の仕事に集中すべき時だよ」なんて訳のわからない説教をします。
顧客の喜ぶことを考えて、オフィスに取り入れようとする意見を、“仕事”と捉えていないこと自体が“稼げないオフィス”の上司の特徴です。夢も希望もあったものではありません。
優秀で、若く才覚に溢れた社員もこれでは宝の持ち腐れです。本当は挑戦させ、失敗させ、フォローして成長させるべきです。
その点“稼ぐオフィス”は、社長の任命によって、若手社員に権限を委譲します。社長の構想している将来に希望を持って、それに貢献できる喜びから、一生懸命取り組みます。
若手への権限委譲の利点は、機転と柔軟性です。
突拍子もないアイデアで「そんなこと心にも浮かばなかった」と思うようなものを彼らは持っています。
また、「そんなことできはしないだろう」と普通は考えることを、他社に行った学生時代の同窓生を巻き込んで見事にやってのけたりします。
星野リゾートでキャッチコピーを検討したとき、星野社長の意見を若手社員が「そんなんじゃだめです」と一喝し、「ヤバイ」という大昔なら“やくざことば”といわれた文句を入れて成功した例もあります。
たまの飲み会で、大学の研究室やサークルでの仲間が面白がって「だったらこんなのどう?」とヒントになるアイデアや具体的な意見を言ってくれたことを真面目に受け止めて、一晩温めて自分なりの答えを仕事に活かしたりしています。
確かに難点もあります。経験不足のようなことです。
でも、この難点を補って余りある利点に焦点を合わせることが、これからのオフィスづくりに大切な要素なのです。
何故なら、何も経験を積まないまま、歳を取ると、頭の硬い、人任せな無責任社員になる恐れがあるからです。
「経験豊かだから」、「あの人に任せておけば安心だから」では、一般的なオフィスをつくったり、値段交渉がうまく出来たり、工期を短縮できたりする利点はあるでしょう。
でもそれは、ただの“きれいなオフィス”を安くできたに過ぎません。
そんなことよりも、将来のあなたの会社を担う社員達が自主性をもって積極的に取り組む、“粗削りのオフィス”の方が優れていると思われませんか?
失敗したり、不足しているところは変更したり、付け足していけばよいのです。実験、実行あるのみです。
こういうことができるのが若い人の特権ではないでしょうか?
重要な任務を与えられ、実行に必要な後ろ盾も得た社員の方も、こうしたことが「やりがい」になり、会社がお金を積んでも得られない、自主性を育てるものとなります。
人に強制されて嫌々やるのも1日の仕事、自ら進んで取り組み、喜びを持ってするのも1日の仕事です。
そして、オフィスづくりを通して「顧客満足」を向上させようとする取り組みは、必ずや若手社員の成長に寄与します。
また、「やりがい」を持って取り組む人は自分の仕事の段取り次第で早くも遅くもできます。
この「働かせ方変革」を指揮するのは社長であるあなたしかいません。
これができれば、社員の方も働くことが楽しくなり、残業時間がどうの、給料がどうの、といった不満はおさまります。
そして、選抜社員が試行錯誤して作り上げた“稼ぐオフィス”でリピート率の向上、新規開拓をしていけば、結果として配分も増えてみんなが幸せになれるのです。
あなたは、社員の将来を明るくできますか?
それとも、社畜として飼い殺すようなことをしますか?