第63回<新規開拓とリピーター育成を同時に行うには>

“稼ぐオフィス”は、
顧客を惹きつけるシステムがある、

“稼がないオフィス”は、
人を管理するシステムがある

 

 「ねぇテラサキさん、新規開拓とリピーターの育て方では、まるっきりやり方が違いませんか?」ある集まりの席で雑談的に出た質問です。

「普通はそうですね。でも、オフィスに誘い込めば同じやり方でもできますよ」

 営業部員を大勢抱えている普通の会社では、どんな場面でどのような対処をするのかと、対新規開拓と対リピーターでマニュアルが細分化されているところも見受けます。

 新規開拓には、売りたい商品の提案書を用意して、訪問する突破力が求められますし、既存深耕には、新製品など目新しい話題を用意して訪問する提案力が求められます。

このように、それぞれを別々に考えているのです。

 確かに、相手の会社へ訪問するのであれば、当然やり方も、「新規の場合」「既存客の場合」と場面を変えなければならないでしょう。

あなたはどのようにお考えですか?
“稼ぐオフィス”ではどうでしょう?

 “稼ぐオフィス”の場合、自社へ誘い込むので、やり方も「新規の場合」「既存客の場合」を「顧客を惹きつけるシステム」という一つの仕組みに相乗りさせることができます。

 普通のオフィスとの大きな違いは、導入する仕組み(システム)の視点が、社内か社外かの差になります。

 “稼がないオフィス”の視点は、社内重視です。社員を管理するシステムにお金をかけています。

 勤怠管理に始まる人事管理に多額の費用を支払っています。効率化を目指しているので適材適所を探り出そうとしますが、自由な意志を持つ社員個々の考えまでは把握できずに、適任者を配したつもりが本人は辛さを覚えて心の病になったりします。

 これでは効率化どころか、お金をかけて戦力を失ってしまう結果になっています。

 しかし、“稼ぐオフィス”の視点は、社外を重視します。社員を管理したりはしません。

 社員の自由な発想を生むために、業務を見直して個人の負担を軽くします。そして「顧客を惹きつけるシステム」に集中します。

業務の見直しは、やることとやらないことを決めてしまえばよいことですが、「顧客を惹きつけるシステム」に集中させるには、権限の委譲も関係します。

具体的にどのようにするのでしょう?

一つの例として、老舗酒蔵を考えてみましょう。
「顧客を惹きつけるシステム」として、歴史的な物語を宣伝しています。

創業から変わらない精神。
常に変化させ続ける技術。
人や環境に優しい原材料。
地域社会に貢献する経営。・・・

といった項目に肉付けをして、地元の風景、地場産業、名物、見どころなどの一般情報に加えて、人に優しい土地柄、人柄、頑固一徹で無口な杜氏の時折り見せる優しい笑顔など、会社で働く人をクローズアップして、「いい会社だな」「一緒に仕事してみたいな」と思わせる宣伝を物語仕立てにしています。

同じようにあなたの会社でも「自社宣伝物語」をつくるのです。

 項目を挙げればいくつも出てくるはずです。だっていままでこの事業を継続させ、顧客の信頼を勝ち取ってきたのですから。

 たとえば、顧客が訪問から益を受けて、他の顧客を紹介してくださる場面があります。あなたのオフィスでの成功体験から、顧客がその先の顧客へ、クチコミで宣伝をします。

 しかしながら、顧客任せにすると、現実とは異なる話が独り歩きする場合があります。何故なら、さながら伝言ゲームのようになってしまい、相手にうまく伝わらないからです。

 こちらでは、「顧客を思ういい会社」という宣伝を仕掛けたいのに、顧客が話すのは、「あそこの技術とうちのサービスを組み合わせて受注できた」と自社がうまくいったことだけかもしれません。

 これでは、聞いている他の顧客の側では、「それはよかったですね」で終わっていまいます。たしかに意味合いとしては「あそこと組めば成功する」というメッセージを伝えてくれてはいますが、本質を伝えきれてはいません。

 そうならないように、伝えたい情報を絞って、自社でコントロールします。

 あなたが「本当にやりたいこと」である、“顧客を満足させて自社も潤う”というビジョンを、社員に共感してもらい、社員達がそのための物語を紡いで「顧客を思ういい会社」という宣伝を制作します。これが「顧客を惹きつけるシステム」になるのです。

 顧客を惹きつけるには、「この会社は我々のために尽力してくれていて、それが結果として現れている」と実感した時です。

 これは表面上の製品である、技術やサービスでは表現できません。

・あなたの顧客への思いが顕れていること。
・あなたの会社で働く社員達の顔が、顧客側にも見えていること。
・共創することで、顧客の売上げ向上の実現可能性が想像できること。

など、「確かにこうなればいいのにな」「そうだと助かるな」「一緒にかなえたいな」といった、やってみたいと思うけれど、自社だけでは難しい、パートナーとして組みたいと思える、利他的な感情を醸し出す必要があるのです。

 新規開拓とリピーター育成を同時に行うには、この「顧客を惹きつけるシステム」で、自社において、外部視点による顧客の商談づくりのサポートによって行います。

 社内でガチガチに管理されてるようでは、社員も利他的に振る舞うことなど出来ません。責任は経営が取る、裁量は社員に与えて、自由な発想力を発揮させることが大切です。

「自社宣伝物語」は、いわば会社の実態を見せる試金石となります。

 “稼ぐオフィス”の仕組みを導入して、社員が自主性を持って企画するとき、自動的に、新規とリピーターが付いてくるのです。

 ですから、これからも付き合いたい「いい会社」として認識されるよう、「自社宣伝物語」で積極的に宣伝しましょう。

あなたの会社には、顧客に紹介しやすい宣伝物語がありますか?
それとも、名前は知られているけど何をしてるかわからない会社でしょうか?