第60回<「買いたい」衝動をつくる>

“稼ぐオフィス”は、
招待会の目的を果たすべく準備をしている、

“稼がないオフィス”は、
ただ招待して成り行きに任せている 

 

 「ねえテラサキさん、自社への招待作戦ってどこの会社でもやっていませんか?」との問いには、「確かにその通りです」とお答えしています。

 かつて勤めていたのが、オフィス家具メーカーの子会社だったので、親会社のフェアや自社の招待会など、何度も経験したからです。

 ショールームを持っているメーカーであればどこでも、新商品のお披露目を兼ねて、年に数回「お客様招待会」を開いています。但し、効果的かどうかは別です。

 確かにお客様を招待して、自社を知って戴く、新製品を見せて感想を聞きたい、日頃の感謝を込めておみやげを持って帰ってもらうなど、招待作戦のために時間と労力、そして宣伝費をつぎ込みます。

 ただ、招待日には、「いいじゃないですか」「ほう、こんな製品ならぜひ使ってみたい」とお褒めの言葉をもらいますが、ただの社交辞令の場合も少なくありません。

 では、招待会が終った後の顧客の反応率を上げるにはどうしたら良いでしょう?

どのように開催すれば、「買いたい」という衝動を顧客から得る事ができるでしょうか?

招待会を効果的に演出するには何が必要でしょうか?

 今回はここに焦点を当てたいと思います。

 一般的な「お客様招待会」は、こちら側の一方的なお願いです。
慣習として毎年秋に、競合他社もフェアを開催する場合、10月半ばから12月にかけて企画します。

 「今年もフェアを開催しますので是非来てください」と案内状を配ります。商品開発部が手塩にかけた新製品を「買ってもらえるであろう」展示方法を考えて飾ります。

しかし、これだけではただ開催しただけで終わります。
なぜなら、
・まず第一に、日程も出し物も自己都合の招待だからです。

 現場の営業マンなどは、顧客ごとにその会社の繁閑期を知っています。

 自社都合の日程に合わない企業こそ、是非見てもらいたい顧客だったりします。この時期にたまたま外出可能な会社に見てもらっても、的を射ることはできません。

・第二に、絞り切れない、一方的な顧客ニーズを探っていることも挙げられます。

 業種を問わずに顧客なら皆招待して、「売りたい」気持ちで勧めるので、どの顧客にとっても、心に響かない中途半端な訴求方法にならざるを得ません。

・第三に、招待会のときに商談に導く仕掛けがないからです。

 ただ「見て下さい」「使ってみてください」「いかがですか?いいでしょう?」と説明員は言いますが、これを「その顧客が具体的に、どんな場面で、どのように使用すれば、その会社の将来的な利益につながるのか」という利点を伝える術がありません。

 二番目の点にも関係しますが、招くターゲットを絞り込めず、導線を“顧客ごと”に設計できていないからです。

 では、どのように開催すればうまくいきますか?

 顧客が普段気づいていなかったことに注意を引いて、問いを発して興味を抱かせ、更に触らせ、感じさせて、相手の意見を傾聴することから変化を見抜くことです。見せることに加えて、聞かせて、触れさせて、変化をカタチにすることで自動的に商談化します。

 これを「おみやげ」にして持ち帰らせて、その先の顧客との商談を活発化させることです。招待会を効果的に演出するにはこれが必要です。

 とにかく自分たちが「買いたい、使いたい、人にも教えてあげたい」とワクワクするような企画を考案することが重要です。

 招待当日、「提案の場」で、この企画を顧客に、見せる、聞かせる、触らせる、そして問う。相手の意見も俎上に載せて「商談の場」で一つの提案書にまとめることを行います。

 これが、「利他的商談」から生み出される「おみやげ」になります。彼らは帰社後、報告とともにその先の顧客へ提案できるように更にカスタマイズするなり、そのまま宣伝する資料とするなりして拡散させます。

 あなたの会社で「おみやげ」を渡した翌日には、彼らは営業活動に利用できます。本来社内で企画・提案書づくりを行っていた彼らの業務を担ってあげるのです。それも、狭い視野から脱して、外部視点で見直した新商品の付加価値としてです。

 “稼がないオフィス”も、招待会を開催します。今流行っているキーワードから、顧客が興味を持っている話題で呼び込みます。セミナーを準備して、社内の専門家、いなければ外部から講師を招いて講演させます。

 そして、講師は「このままではいけません」と脅して、最終的にこの会社の“ソリューション”を利用することが問題解決になると締めくくります。あとは、受講された顧客を自慢の社内見学に誘導して見せはしますが、そこまでで終了です。

 後日、この会社の営業マンが「先日はいかがでしたか?なにか買う気は起きましたか?」と反応を確認しに行きます。これでは売れる商品も大して売れはしないでしょう。

 聞かされる方はうんざりです。「見に来ていただけるだけで結構です」と言っていたのに「やっぱり、売り込みなんですね」となるからです。

 “稼ぐオフィス”の招待会は、まるっきり違います。何が違うかと言えば目的が違うのです。もちろん、自社を魅せ、案内をしますが、“ソリューション”など提供しません。

 そして、自社の商品を売り込むためではありません。あくまでも、「利他的商談」から招待客であるその顧客の利益を最優先している、という“全社の姿勢を示すため”なのです。

 客が既に興味を持っているセミナーを餌にして呼び込む手法も取り入れません。顧客がまだ気づいていない、顧客の先の客が「欲しい」と思う内容を準備します。なにをどのように提案するか企画して誘い込むのです。

  一つ目の問いの答え、反応率を上げるには、「呼ぶ目的を顧客のためにすること」です。
「顧客の旗艦商品への付加価値提供」を方針に定めて開催し、共創の仕掛けをすることで、「買いたい」という衝動を与える事ができます。これが二つ目です。

 そして三番目の、最も効果的な演出とは、「商談化への導線」が大切だということです。営業部に任せっぱなしではいけません。全社一丸となって、一消費者として考えられるように仕向けます。

 それゆえ、社員が顧客を導けるよう、戦略方針として習慣化させる仕組みが必要です。それを、オフィス機能に組み込んで初めて招待会を効果的に演出することができるのです。

あなたは、オフィス招待会を「買いたい」と思わせる仕掛けにしますか?
それとも、ただ忙しい顧客を呼んで「買いたくはない」と思わせてしまいますか?