“稼ぐオフィス”には
一流の心掛けがあり
“稼がないオフィス”には
原則という芯がない
今回は一流会社に見られる、稼ぐオフィスとはどのようなものかを考察します。
稼ぐオフィスにはどんな考え方があり、稼がないオフィスには何が足りないのか。一流とそうでないかは何が違うのでしょうか。
一流という言葉には人を魅了する響きがあります。一流店、一流の人、一流の考え・・・とにかくなんにでも一流が付くと何か良いもの、期待が生まれます。
会社でいえば、一流企業。パナソニックやトヨタといった企業名が浮かびます。どちらも世界的に有名な大企業です。
しかし大企業=一流企業ではないことが分かります。粉飾決算やデータ改ざんをして利益を得ていたことがバレて、信用まで落としてしまう企業もあるからです。
大企業になったから一流企業にもなったのではないのです。まだ小さい会社であっても一流は一流です。
商品やサービスが優れているから一流なのではなく、一流の企業が世に問うた商品やサービスだから一流なのです。
企業の成長と共に徐々に一流企業にして行こうとか、「我が社も社員が100名になったから、そろそろ一流企業の仲間入りをしよう」といって出来上がるものではないのです。その時はすでに遅いのです。もっと早い段階で手を打つ必要があります。
では一流企業はその他の企業と何が違うのでしょうか。
どんなことをすれば良いのでしょう。
私は、一流企業の定義として、「顧客へのおもてなしを原則と考え行動する企業」だと考えています。
そしてそこには、社員一人ひとりに「一流の心掛け」を植え付けている経営者がいらっしゃいます。
社員一人ひとりに社長の想いが伝達できる小さい組織の時に、「一流の心掛け」を各人の心に刻み込み、信念を浸透させねばなりません。
徐々に、あるいはある程度の規模になったから、などと考えていたら、その時には誰も社長の想いなど意に介さず、ただ毎日のルーティンワークに追われるだけで、一流になんてなれなくても、毎月の給料が出ればそれでよしと思うようになるでしょう。
考え方が一流ではないので、「よりよく」を求めはしないのです。そうであるから早めに手を打つ必要があるのです。
では「一流の心掛け」を社員たちにさせるにはどの様に進めたらよいのでしょう。
それにはまず、社長自身が一流を身に着けていることが前提条件になります。こういう時こそ「率先垂範」ということばが活きてきます。声だけ張り上げて社員たちにやらせようとする社長にお会いしますが、こんな人に誰がついていこうと思うでしょうか。
やはりここは社長がお手本として、真っ先に示すべきです。
私が営業マンだったころ、入居工事の現場で見た「率先垂範」の例を紹介します。
個室を作るために、間仕切工事を行いました。数日かかる工事でしたが、いつも夕方になると現場にやってくるお爺さんがいました。
彼は何も言わずふらっと来て、職人たちが開梱した残材を分別してまとめたり、使い終えた電動工具をしまったり、箒と塵取りで掃除したりしながら、職人たちがこれから使いそうな部材を近くに揃えて段取りをしていました。
そのお爺さんが来ると、職人たちの動きが格段に良くなるのです。そしてしばらくすると先に帰ってしまいます。
「あの方はどなたですか?」と職人の一人に聞くと、「うちの社長だよ」とのこと。毎日夕方になると社員たちの様子を見に来て、片付けと段取りをしていたのです。
この会社は、依頼していたメーカーも重宝していて、「大きい現場には○○さん」と決めているほどでした。なるほど、と合点がいったものでした。
このように社長が下働きでさえも「率先垂範」することで「一流の心掛け」をを社員たちに植え付けられます。
では「一流の心掛け」とはどんなものでしょうか。
日頃から習慣にしている、「挨拶、掃除、整理整頓」です。
何も難しいものではありません。
“稼ぐオフィス”にしたいなら、清潔であることも条件になります。清潔なオフィスを目指すなら、外部委託業者のプロの清掃員を雇うことは必要です。
しかし、身の回りの事柄は自身で行う。この一つだけで、外部からの目が変わります。雇われた外部委託業者からの評判が上がるのです。
「あそこの会社は清掃員を雇う必要がないくらいいつも整っている」と。そしてプロの清掃員としては、自身が恥ずかしくないように、きっちりと仕事を行ってくれるようになります。
なぜなら、一流には一流で返す義務があると思うからです。こちらがきちんと行う会社であれば、委託業者もきちんとしている会社でないと付き合っていけないのです。つり合いが取れなくなるからです。ここに「一流の心掛け」の真髄があります。
社長の手本から、その成果を見ることにより、社員たちにも価値が浸透します。自然と行いやすくなるのです。
教育というものが容易ではないことは確かです。ただなにも全てを手取り足取り教えることはないのです。重要なのは芯になる「原則」です。細かな規則を強いるのではなく、「原則」である「一流の心掛け」を学ばせることです。
これが身に付いている社員がいる会社は強い。「原則」を基盤として、自ら考え行動することができます。もちろん、自分勝手な判断をさせろと言っているのではありません。そこには事前に相談するとか、ここまでは許容するとか、明確なルールは存在します。
但し、何でも上の指示を仰がないと判断できないようにガチガチに規則を設けると、「指示待ち人間」ばかりになってしまい、少し前に流行った「忖度」して間違う輩が出てきます。
「忖度」自体は良いことですが、使い方を間違えると、社の命運を左右する一大事にもなりかねません。やはりきちんとした「原則」である「一流の心掛け」を教え込むことが肝要です。
分かり易い例として、一流の料理人の話をしましょう。
彼らは、一流店で修業したから一流になれるわけではありません。もちろん、二流店で修業してもなれません。一流の人について、「一流の心掛け」を学ぶから一流になるのです。
この考えがあれば、「料理人に一番大事なことは何か」を導き出せます。「料理がうまいこと」は当然のことで、むしろそれよりも「お客様本位かどうか」が重要なのです。
この重要性が分かっていれば、店を清潔に保ち、道具の手入れを怠らず、従業員を大切にし、笑顔でお客様を迎える準備に心を砕きます。レシピ云々よりも、「おもてなしの原則」を優先させます。
お客様というのは、何もうまいものが食べたいだけで来て下さるのではないのです。楽しい会食、記念日の祝い、家族や取引先との歓談、心をリラックスさせて集まれる場といった、空間や時間を求めていらっしゃいます。
そういう方々に対して、心を込めたおもてなしをするには、お迎えする人々の笑顔や気配り、塵だけではなく臭いにも注意した清掃、磨かれた道具や備品類が必要な要素にななります。
段取りよく仕事をして、お客様に見て感じて戴くこと。そこに「ここの料理はいいねぇ」という感情が宿ります。こういった「おもてなしの原則」を適用する人は成功します。
成功しないのは料理だけに集中して、腕前だけ上げた職人です。二流とかどうとかより、料理人の場合、「一流の心掛け」のない人は、死活問題になるのです。
では、一流のオフィスとはどのようなものでしょうか。これはすなわち、“稼ぐオフィス”とはどのようなものかと同義です。
オフィスへの意識として、必要な機能にはお金をかけて、知恵を絞って運営をしている。清潔感があり、整理整頓され、人を招く仕組みがあり、働く人がイキイキした雰囲気がある。一流の考えを持った優良企業との交流により、取引先にも利益を提供できるサービスの本質がある。といった「一流の心掛け」をする人々が働く場です。
そこには芯になる「原則」で回す仕組みがあるので、いつでもブレることなく顧客をもてなすことができるのです。
一流の経営者として、「顧客へのおもてなしを原則と考え行動する企業」になるために、“稼ぐオフィス”を創りませんか?
あなたの会社には「一流の心掛け」がありますか?
そこには芯になる「原則」で回す仕組みがありますか?