“稼ぐオフィス”には、
外部に魅せる・楽しませる儲かる仕掛けがある、
“稼がないオフィス”には、
内部を喜ばせ、接客を拒む雰囲気がある
「ねえテラサキさん、“稼ぐオフィス”のロケーションって何か決まりはあるものですか?」ある集まりでの雑談的立ち話で質問されました。
通常のオフィス移転では、賃料・坪数・駅近等、求める物件の条件がありますが、稼ぐオフィスの場合、オフィス内の条件の方が重要です。
お客様を招待するわけですから、来てもらいやすくするため、立地もまるっきり関係ないわけではありませんが、高い賃料で、完璧なロケーションにこだわる必要もありません。
では、オフィスへ誘い込んで顧客を喜ばせるオフィスとはどんな場でしょうか?
“稼ぐオフィス”の考えは、城下町の仕組みと仕掛けを施します。招待する目的は、「価値創造のために、ふさわしい相手といかに意義ある協働が出来るか」を追求するためです。
製品やサービスを好ましく見せて「買いたくなる」仕掛けをしたり、自動的に商談が進む仕掛けをして「契約したくなる」ようにしたり、顧客の必要をよく汲み取り、顧客にとって「実現可能性のある提案」を繰り返すことで、「信頼できる」と感じてもらいます。
招待する会社によって、仕掛けを変え、魅せ方を変えて、何度でも飽きずに来てもらい、利他的な商談を積み上げていきます。
それを行うには、それ相応の広さは必要です。少人数ではあっても、働く人々も詰め込まれているようなオフィスに顧客を呼び込んでも、息苦しさを感じてしまうだけです。
そして大事なことは、オフィス内の条件、つまり、入り口から出口まで招待客を楽しませ、興味を持って商談に臨み、おみやげを持ち帰らせて、受注に結び付ける。この一連の物語をオフィスに仕掛けることです。
“稼ぐオフィス”を城下町に見立てたのは、「人を集め情報を発信する場」としてのオフィスは、お客が楽しみ、訪問しやすくする工夫を続けている町の仕組みに倣うべきだと考えるからです。
これからの時代は、「知恵・創造・スピード」が要求されますが、こんな時こそ、古風ではありますが、アナログの発想を活かして、顧客が喜ぶ仕方で誘い込むのが効果的です。
なにもお金をかけて、豪華なしつらえにしなくても、顧客を喜ばせることは可能です。
たとえば、遊園地のアトラクションのようなものです。
子供の頃、下町育ちの私には、遊園地と言えば、浅草「花やしき」か「後楽園遊園地」でした。後楽園には、有名なお化け屋敷があって、訪れる度に利用しました。
入り口から暗闇になり、通路には残忍な拷問風景やお岩さんの人形、といった古風で、さして驚きもしない屋敷なのですが、怖がらせる仕掛けとしては、おどろおどろしい連想をさせる照明や、音や悲鳴、念仏のような放送、柔らかくムニュっとした感触の床などがありました。
多分スペースの問題だったと思うのですが、一度外に出て、もう一度屋敷に入るように設計されていました。お客さんが一番驚くのが、ここの仕掛けでした。
それなりに不安がって進路を進み、やっと明るい外に出ました。「あっ、終わったぁ」とホッと一息ついて、「あれ、また入り口がある」と気をとられ次の扉に近づく瞬間、井戸の中から白装束の人が「うぉー!」と出てくるのです。
心臓が止まるほど驚きます。怖さではなく、びっくりしてです。ここだけ本物の“お化け”が出てくる仕掛けなのです。何度も利用しているアトラクションでも、その度に“バイトのお兄さん”に驚かされたのでした。
このように、お金を掛けなくても驚かすことはできるものです。
“稼がないオフィス”は、オフィスのロケーションには神経を尖らせ、お金を使っていますが、実際の運営には無頓着です。顧客を「接待する仕様」にはなっていません。
高い家賃のオフィスは、内勤社員の作業場として機能しています。売り頭の営業はみな出払っていて、訪ねてくる人がいても、アポイントがなければ「来客」とみなさず受け付けません。
ただの作業場なら、家賃の安い、天井が低く、窓のないビルでも、新しい家具を与え、たまに来る来客用に、受付周りさえキレイにすれば事足りそうです。
“稼ぐオフィス”の考えは、どのように社員が働き、おもてなしをするか、外部に魅せる仕方で運営します。一つの方法として、この先、統廃合などで空室になった金融機関をオフィスにできます。
一時期、カラオケボックスが衰退期になり、復活をかけて取り組んだことに、「レンタルオフィス」「会議室利用」「主婦の集い」などがあります。
ボックス自体はそのままで、使用目的をカラオケ以外のジャンルに変更しました。これと同じです。使い方だけ変えて、大きな設備は「居ぬき」で構いません。
銀行の店舗は、「お客様を迎える仕様」になっています。なにも大改装して、「普通のオフィス」にすることはないのです。カウンターやテラーデスク、接客ブースなどの銀行仕様の家具を取り払い、“稼ぐオフィス”の「接客する仕様」に変更できます。
高い天井があれば、空間を活かして開放感を演出できますし、通りに面した大型ガラスは、通行人の目を引きます。丸見えにせずに、グラデーションのフィルムで見えそうで見えない、あるいは、一部見えるが「何をしているんだろう?」と興味を引く演出をします。
金庫室だって開放して、来客との休憩・雑談スペースに利用できます。カウンターと接客ブース、待合コーナー、ATMがあった場所は、「創造の場」「提案の場」「商談の場」が交差する「価値創造の場」につくり替えて、もてなす社員を顧客と接触させます。
オフィスは恐怖で驚かせるアトラクションではありませんが、これらのことも、自社の魅力を発信するための導線を計画するときの参考になります。
お客さんが帰るときに楽しかったと感じさせるために、「接客する仕様」に変更します。このように、オフィスへ誘い込み顧客を喜ばせる招待会を繰り返すことができるのです。
あなたは、内部の仕事ぶりを外部にアピールできるオフィスを探しますか?
それとも、オフィスのロケーションにこだわって閉鎖的な空間にしますか?