“稼ぐオフィス”には、
基本を習慣化した一致した社員たちがいる、
“稼がないオフィス”には、
売り込み教育された社員がいるにはいる
「ねえテラサキさん、うちの若手を訓練してくれませんか?」とは、ある古くからの知り合い社長からの相談です。私がかつて勤め人だった時に、営業マンとして買って下さっていた方です。
雇ってから2年経つのに、自分からは仕事をとってこないで、ただ与えられた作業をこなすだけで困っているとのこと。私に同行させて営業術を「教育」したいと言うのです。
この会社のように、人材育成のなかで、営業術を会得させるのに苦労されている経営者が多いと聞きます。自社でのOJTや研修に参加させて、挨拶の仕方や心構え、アポイントの取り方、応酬話法、クロージング法など、有料・無料問わずに受講させます。
これだけ「教育」してなぜ上達しないのでしょうか?
今回は、若手の育成や内勤者の営業化に役立つ情報をお伝えします。
営業に必須の要素とはなんでしょう?
人柄、身なり、容姿、聞こえの良い声、清潔感などのパーソナルな部分。
巧みな話術、身振り手振り、情報収集能力、といったテクニカルな部分。
その他にも、観察力、聴く力、計数力、把握力、実行力、再起力、辛抱強さ、忍耐力、など該当する要素は無数にあります。
しかし、残念ながらこれらすべてを持っている営業なんて存在しません。
またすべてを「教育」訓練から培える人もいません。
逆にこれらの内、ひとつでも該当する要素があれば、それを磨き上げることで、唯一無二の存在となります。人それぞれ、磨くものが違うので、一律に「教育」しても皆が伸びる訳ではないのです。
じゃあ、どうしたら優秀な営業を育成できますか?
ある映画の会食シーンで、主人公がポケットからペンを取り出し、「このペンをおれに売ってみろ」と相手に渡して問いかけました。
一人目は、ペンの特性をたくさん挙げて「だからお勧めします」
二人目は、他のペンとの比較をして「だからこちらの方が優れています」
しかし、三人目は目の前にあったナプキンを差し出し、「この紙にサインをくれ!」と言い、「ペンを持ってない」と答えると、「じゃあ、これを買え」と、ペンを相手に渡しました。
この例のように、営業の極意とは、「相手の必要をつくり出すこと」です。そして「誠実対応と真実を告げること」です。これを普通に行えるよう習慣化することだと考えます。
必要のなのは商品知識でも、比較表でもなく、この極意を知ることです。極論ですが、できる営業は商品を選ばず、売る相手さえいれば、何でも売ることができるのです。
でも、じつはこれは、だれでも学ぶことのできる、シンプルな営業術です。
「誠実対応」するには、顧客に対して、均一化したサービスを提供することです。いつもブレずに基本に忠実に対応するよう習慣づけます。
「真実を告げること」は、正直な商売をすることです。いくら顧客が欲しいと言っても、製品・サービスがその顧客にとってデメリットがあるときに、「この事情でこれはお勧めできません」とはっきり言えるかどうか。簡単に言えば「信頼できるヤツ」になることです。
“稼がないオフィス”の営業は、一律の「教育」を受けた個人の集まりです。研修で、売れる人はもっと売れるように、売れない人には少しでも売れるよう、テクニックを学ばせます。でも、ある人はよく売り、ある人はまったく売れません。同じように「教育」したのに、みんなが売れるようにはなりません。
このような状態で招待会を開いたら逆効果です。ある人は上手にエスコートしますが、他の人は下手な案内をします。顧客を不安にさせる、ちぐはぐなサービスを提供します。
自社に招く目的も、「うちの会社を知ってもらって、うちの商品を知ってもらって、うちの・・・」と自社の商品やサービスの押し売りをする方向に持っていきがちです。
これでは、いくら研修で学んだ術を駆使しても、どんなに容姿端麗で、口がうまく、計算高い能力があっても、心掛けが間違っているので失敗するでしょう。
付け焼刃の術を顧客はすぐに見抜き、「薄っぺらいヤツ」とレッテルを貼ります。
“稼ぐオフィス”の営業は、「誠実対応と真実を告げること」を習慣にしている、信頼できる人の集団です。もちろん、それぞれに得手不得手はありますが、「相手の必要をつくり出すこと」で一致しています。会社の方針に沿ったサービスを偽りなく提供できます。
どの社員が対応しても均一です。担当営業以外の社員も、一つのチームとして歓迎します。招く目的は、自社の売り込みではありません。その顧客にとってよい提案を、共に創り出すことです。
若手社員には、営業テクニックを教えるのではなく、あなたの経営方針やビジョンを共有できるように習慣化します。勉強会などで事あるごとに彼らの心に刻み込んでいきます。
あなたの目指す社風を早いうちに浸透させるのです。そして、オフィス招待の時にベテラン社員達と一緒に「商談の場」で顧客と接することから実戦を経験させるようにします。
営業化する内勤者たちにも同様です。あなたの方針を共有し、日頃ご贔屓にして下さる優良客を知り、顧客が必要とする「売れる企画」を考えられるように習慣化します。
社内でのコミュニケーションから、外回り営業社員に情報提供してもらい「創造の場」で企画に参加します。招待会の時には「提案の場」で営業と一緒に顧客と話し合います。
これらの「習慣化プログラム」で、実戦経験を積み、成長を感じるようにするのです。
若手には「結果」が出るクロージング近くを、内勤者には企画・提案という「ワクワクする」アプローチを体験させながら、“顧客に向き合うことに慣れさせること”が営業術を会得させる近道と言えます。
そして、間をとり持つ営業マンも社内の強力なバックアップから、ともに商談をカタチにする一体感を覚えて成長していくでしょう。
テクニックでは太刀打ちできません。等しく「教育」することでななく、あなたの経営方針やビジョンを共有できるように、基本を「習慣化する仕組み」こそ、“稼ぐオフィス”で社員みんなが等しくできる営業術を身に着ける極意なのです。
あなたは、顧客の信頼を勝ち取れる営業の「習慣化の仕組み」がありますか?
それとも、「一律の教育」で営業強化プログラムにお金をつぎ込みますか?