“稼ぐオフィス”は、
顧客を感動させるために共創へマキコム、
“稼がないオフィス”は、
自社を絡ませるために競争のコラボに巻き込む
「テラサキさんの“稼ぐオフィス”って結局、顧客とのコラボレーションのことでしょう。うちの受付周りには、すでにコラボスペースをつくっているけど、これも変えるの?」
50名ほどの社員をかかえる、ある機械メーカーの社長との会話です。
「いまよりもっと稼ぐ仕組み」のために、せっかく設えたスペースを壊すことはありません。それでは本末転倒です。運用の仕方を変えればよいのです。
ただ、物理的にそれが邪魔をするならどうでしょう?
3大機能を有機的に連動させるのに、そのコラボスペースが場所をとり過ぎていたり、逆に手狭だったり、他の機能と分断されているようなら、除去することをお勧めします。
内装工事も“資産”としてお金をかけているので、簡単ではないことは承知の上です。しかし「もったいない」との理由で放置するのであれば、いますぐ“稼ぐオフィス”に変革することは諦めて戴きたいのです。
私の推奨するオフィスづくりは、設備そのものというよりも、社員の働かせ方や意識を変革することから、顧客優先の考え方、儲かる仕組みを重要視しています。
いまはまず「オフィス戦略方針書」を作成し、次回の改装や移転のときの準備として、社長のオフィス構想をまとめておくことをお勧めします。
方針書の中にあるオフィス変革では、優良顧客の特別招待という「行事」を定期的に行って、顧客の商談決定率を上げ、受注率を向上させ、先行利益を得られるようにさせます。
3大機能 其の参「商談の場」では、「創造の場」や「提案の場」で企画したことを、顧客と共創する打ち合わせをします。「利他的商談」をカタチにする場です。
「利他的商談」とは、顧客の製品・サービスそのものよりも、商品価値向上の提案を行うことです。
顧客の先のエンドユーザーが期待するものを、彼らの視点、「いち消費者としての目線」で、「自分にして欲しいこと」に置き換えてつくることです。
たとえば、招待予定の顧客が「家電メーカー」だとします。その商品は「炊飯ジャー」です。これ自体を「改良しましょう」と言ったら出過ぎたマネになってしまいます。
そこで・・・
「うちでも使ってみたのですが、欲しかった機能は次の3つでした」
・地元産の白米が美味しく炊ける機能
・時間通りに炊き上がるタイマー機能
・メンテナンスしやすいジャー本体の形
「この製品の特徴にはその他以下もありますが、」
・全国各地の銘柄米別に炊き分ける機能
・音声で知らせる機能
・スタイリッシュな5色のカラー選択
「『どんな場面で、どのように使ったら効率的か』などの説明があったら良いと感じました。たとえば・・・」と、ユーザーの立場で“響く”売り方やコピーなどの提案をします。
それと、もしかしたら、6つある機能は過剰なのかもしれず、「機種のリニューアルを検討されるときには、3つの機能に絞ってみてはどうですか」と助言できるかもしれません。
「その方が、コストダウンや、3つの機能を強化するコストに変換する、あるいは宣伝に充てるなどの選択肢もありますね」
こうした話し合いを、大きく映し出したモニターを見ながら、エンドユーザーへの「提案書」を顧客と一緒につくり、練り上げて「おみやげ」にして持ち帰ってもらいます。
「おみやげ」は、顧客が使えるように加工したデータを、保存して渡すことです。顧客側ではそれを社内共有して、エンドユーザーに拡販する材料にします。
“稼がないオフィス”は、ターゲットを絞らず、どの顧客にもコラボを仕掛けます。数社が交われば触発されて、イノベーションが生まれると信じているのです。
こじつけの組み合わせを「提案」して、無理やり顧客を巻き込みます。たとえば、
「御社が競合他社に勝つためには、我が社のサービスと組み合わせたらどうでしょう?また、効果を最大化するために、広告代理店も巻き込んで宣伝しませんか?」のように。
でも、自社の都合を優先させるので当たりはずれが出ます。「どの顧客のどんなエンドユーザーが何を欲しがっているか」を十分に吟味せず、偶発的なものに賭けているからです。
うまくいかなかったときの言い訳も考えています。
「今回ご一緒できたことで互いの理解を深める事ができました。では次回こそは・・・」
相手の時間を奪っておいて、結果を何も生み出さないことに悪気すら感じません。
こんな巻き込み方ってあるでしょうか。
顧客の社内では、業務の見直しをして、“ムダな会議”を無くしたり、時間を捻出したはずなのに、これでは、“外でのムダな会議”を奨励しているようなものです。
この点“稼ぐオフィス”は、必然的に結果を生み出すストーリーを準備しています。
顧客をマキコムからには、利益を出すように企画します。
「商談の場」から、エンドユーザーへ訴求する「提案」づくりを繰り返すことで、顧客の利益を最優先し、感動を与えファンに固定し、自社も利益を得られるようにするのです。
どうせ同じ時間を使うなら、「偶発的な発想力」で顧客の時間を消費するよりも、社内で事前準備をして、顧客を喜ばせることに充てた方が、生産的かつ効率的なのです。
最新のオフィス家具や機器などの設備は確かに有効でしょう、ただ、使う人が顧客のためを思いやり、「気づきやひらめきを誘発」しなければ、機能不全になってしまいます。
やはり、オフィスワークは「人が中心であること」に変わりはありません。コラボスペースという“場所”よりも先に、考えを触発する“場”を作ることが肝要なのです。
3週にわたりお話した3大機能は、一連の流れです。どれか一つという事では完成しません。また、この機能を最大限活用するためには、あと2つの事柄が関係してきます。
次回は、これを回転させるためのICT(一致・コミュニケーション・提案)の話を準備しています。
そしてその次には、この仕組みを使いこなす社長に求められる特質とはなにかという話題を予定しています。どうぞご期待ください!
あなたは、顧客にも益を与えたいと利他的商談を仕掛けますか?
それとも、自社の益を優先させる利己的商談で顧客の時間を奪いますか?