第52回<オフィスの3大機能 其の弐「提案の場」

“稼ぐオフィス”は、
顧客の成功のために提案をする、

“稼がないオフィス”は、
自社の宣伝のために提案書を刷る

「テラサキさん、うちも営業を強化したいけど、どうやったらできる?」
 提案することに力量を置くコンサル会社が提供する、営業マン研修に、社員を送り込んでいる社長からの質問です。

 ここのコンサルを受けていると、オマケで“無料研修”が付いていて、定期的に開催されるセミナーに、何度でも、社員を参加させる事ができるのです。

 「印象的な名刺交換のしかた」から始まって、「絶対うける提案書づくり」など、営業のイロハを教えるものです。

 「顧客が喜ぶことを、喜ぶ仕方で、タイミングよく提案する」と三拍子そろった、実に聞こえがよい教えなのですが、これって現実に行えるでしょうか?

 顧客が喜ぶことをどうやって知りますか?顧客が喜ぶ仕方とはどのようなものですか?
顧客に直接聞きますか?

 タイミングの計り方に至っては、運任せ以外考えられません。

 そんなことよりも、顧客の“その先のお客様”、つまり「エンドユーザーの気持ち」を考えてみたらどうでしょう。それが分かれば、顧客が何を提供していけば成功するかが分かります。

 「優良顧客へ、“その先のお客様”の『ほしい!』を提案する」、それが今回お話する3大機能其の弐「提案の場」ですることです。

 ただ、いかに素晴らしい提案でも、顧客の商売につながらなければ絵に描いた餅です。空想のたわごと、趣味の世界です。本当にエンドユーザーが求めている、商品の先にある「結果」にフォーカスします。

 顧客の商品を改善するためではなく、「売れる可能性」づくりのための提案をするのです。 

 たとえば、プレハブメーカーがあなたの会社の顧客だとします。
 通常は、工場の事務室や資材置き場、現場事務所などに利用されます。このユーザーは、工場を持っている企業か、建設会社、またはレンタル会社に絞られます。

 しかし、本当にエンドユーザーが求めている、商品の先にある「結果」にフォーカスするならば、「遊び場」「勉強部屋」「趣味の部屋」「地下室代わり」と、各家庭に向けても売ることができ、商圏を拡大できないでしょうか。
 エンドユーザーは、プレハブという「ハコ」が欲しいのではなく、本当は様々な「欲求を満たしたい」と思っていると仮定します。

 すると、「子供たちを安全に遊ばせたい」「集中して勉強できる空間を与えてやりたい」「ひとりになれる落ち着いた場所が欲しい」「ミニシアターをつくりたい」「フィギアの展示室にしたい」「シェルターや基地のように、防災用品などをまとめておきたい」と、使い勝手は多種多様であることが見えてきます。

 「売れる可能性」づくりのための提案として、「これらを叶えてあげるには、どんな設備が必要で、削っても良い不要な要素はなんでしょう」と、質問と提案をしてあげることができます。

 エアコンや吸気・排気はもちろんですが、断熱、遮音、防音、吸音の床、壁、天井は必要でしょうか?

 それとも設備過剰でコストがかかり過ぎ、エンドユーザーの財布のひもを締めつけていますか?標準装備から外して、オプション仕様にはできませんか?

 顧客が試すための具体的な数字も入れます。「コストをいくらかけて、いくら回収できそうか」など、顧客が成功するための要素を提案していきます。

 “稼がないオフィス”は、自社のことで手一杯です。自社製品の汎用提案書をつくって、出力し、綴じて、営業マンがバラまきに行きます。折角パワーポイントで作成したのに、カラー印刷でバンバン印刷します。

 “稼ぐオフィス”は、顧客が客先で提案できるように、提案の場で資料作成を手伝います。そこにはPCやタブレットと接続できる大型モニターがあり、営業化された社内スタッフと打ち合わせながら提案書を作成します。顧客との商談の場に使用するためです。出力はしません。カラーインクや紙の無駄にもなりません。

 また、変革行事のひとつである、顧客招待日に、「提案の場」として利用する、
・受付エリアで、その顧客の商品を利用した「率直な感想」を文面にして貼り出します。
・執務エリアで、「エンドユーザーの声」など、収集できる情報を集めておきます。
・会議エリアで、得られた情報と、自社がエンドユーザーなら「こうして欲しい」ということを提案します。

 カスタマーサクセスという言葉がありますが、そこでは、「顧客になり切り、顧客目線で視ること」が顧客の成功に寄与すると述べられています。

 この考えを一歩進めて、「その先のエンドユーザーになり切り、彼らの目線で視ること」をするのです。「自分ならこうして欲しい」ということを顧客に訴求することです。

 こうすることで、顧客側では、分かってはいるが言葉にならない、「もどかしさ」を解消できます。「お客様が本当にもとめているのは、このようなことではありませんか?」という提案を適切に提供することで、顧客の成功を後押しすることから信頼関係を深めるのです。

 自社にヨビコミ、「創造の場」で顧客のためにできることを企画をして、「提案の場」でエンドユーザーの視点で提案します。そして顧客をヒキコミ商談の場へ誘うのです。次回は3大機能のまとめ「商談の場」でマキコムやり方をお届けします。

あなたは、利他的な企画と提案力をオフィスに仕掛けますか?
それとも、利己的な目的で提案するためのスペースで満足ですか?