“稼ぐオフィス”は、
顧客を成長させるために機能に適した場をつくる、
“稼がないオフィス”は、
社員を成長させようと快適な場をつくる
「ねえテラサキさん、オフィスづくりは社員達に任せた方が、本人たちもやる気になるし、自主性という面でも効果があると思うんだけど・・・」
“自分で考える社員”に成長させたいと考える社長からの質問です。
この質問に対する答えは単純です。
「“だれのため”のオフィスなのかを明確になさっているなら、それが社員の務めか、社長の務めかは明らかですね」ということです。
もちろん、“稼ぐオフィス”は、“顧客のため”につくるものです。
その顧客のことを考えるのは、まず社長からです。
“稼ぐオフィス”には、3大機能があります。「付加価値共創の場」をつくって、自社へ誘い込んで攻める戦略をとります。
簡単に言うと、“顧客のため”に儲かる企画とアドバイスをする場を整えます。
自社に“ヨビコミ”、顧客の抱く良い考え方を定着させるために、「提案の場」で意見交換を行うことで“ヒキコミ”ます。ここで、顧客の優秀さを再現させるために、「商談の場」に“マキコム”のです。ここから「利他的商談」が生まれて、顧客と一緒に商談をつくり出していきます。
これを継続的に行い、「顧客の持つ強み」に磨きをかけることが大事なのです。
では、3大機能のうち、其の壱「創造の場」とはどんな場でしょう?
それは、社内で一致して顧客創造を推進したり、外部視点で顧客の顧客を考える場のことです。“ヨビコミ”の前段階で、招待の企画を立ち上げる場でもあります。
それにはまず、社長がトップ会談を仕掛けます。顧客企業の社長と面談して、その企業の「儲けの源泉」を探ります。いわば現場確認をして、方向性を打ち出します。
そして、顧客が現在提供している、良い製品・サービスを再認識させるために「創造の場」に社員を集めてアイデアを錬るのです。とはいえ、製品やサービスの足りないところを批判しても、逆に褒めちぎったところで、顧客の成長にはつながりません。
必要なことは、顧客自身に、自社の良いところを自覚させ、自分たちで改良していけるように、手助けしてあげることなのです。
例えるなら、災害時の救援活動のようなものです。混乱した現場から上がってくる情報を鵜呑みにせず、まず現場に足を運んで状況を確認します。
「停電」しているから、電源を何とかしてあげるのがいいのか、屋根が破けているからブルーシートを供給したらいいのか、食料品の問題なのか、思いつくことは様々でしょう。
しかし、実際に現場を見て、本質を考えるなら、「どうやったら元の生活に戻すことができるのか」ということを、現地の人に自覚させ、手助けして、一緒に対策を打ち出すことではないでしょうか。
「停電」による障害はいずれ復旧するでしょう。食料品も支給されたり、スーパーやスタンドも再開するでしょう。でも、ブルーシートでは雨対策にはなりません。
またひと雨くれば、家じゅうが水浸しになり、その後にはカビが繁殖します。住む場所を確保しない限り、安心できる生活はすぐには復旧できないのです。
同じように、よくある、「ソリューション提案」や「問題解決」ではなく、「あなたの会社の強みは、このような価値があるのですよ」と気づかせてあげることなのです。
それをするためには、顧客の現場にまず行って、顧客との関与を深めて、顧客と対話して、顧客の学習を手助けすることから、「顧客を成長させて、先に儲けさせるにはどのようにすれば効果的か」と考えることをします。
“稼がないオフィス”は、社員満足度を上げればいい仕事をしてくれると錯覚します。
「君に任せる」と社員にオフィスづくりを丸投げします。
彼らは自分たちにとって快適な空間づくりに精を出します。社内アンケート調査をして、みんなの希望を聞き、平均化して不満の出ないようなオフィスを作り出します。
他の儲かっていない会社と同じような平均的なオフィスです。社員にとっての快適は、“自分で考える社員”に成長することにも、儲けにもつながりません。
“稼ぐオフィス”は、顧客の成長を第一に考えて、“顧客のため”に「快適ゾーン」である、3大機能をつくります。
トップ会談により、現場を確認したうえで、「このようにする」と社長が方針を決めて、社員とパートナーに指示を出します。彼らは、明文化された方針書に沿って、具体的な仕掛けや、レイアウトなどの詳細をつくりこんで行きます。
顧客の学習を手助けすることとは、顧客の製品・サービスに「何かを追加する」というよりも、「既にあるもの」を顧客自身が認識し、それを強化、洗練できると思うように促すことです。
顧客自身が得意とする分野において、より大きく成長するための気づきを与え、顧客の強みに注目して、顧客が今、うまくやっていることに目を留めて、刺激を与えることで学習効果を最大化させます。そうすることで、副交感神経が刺激されて、学習が促進されるのです。
脳の働きの研究でも、より良い方法に気づいたときや、自分の中でうまくいっていることに他者が目をとめ、それを賢く伸ばすことを求めた時に学習効果が最大化するそうです。
つまり絶好調のときに、最も柔軟に可能性を受け入れ、最大の創造性、洞察力、生産性を発揮するということです。
絶好調である「快適ゾーン」はやはり“顧客のため”であって、“社員のため”のものではありません。社員は“顧客のため”に働くことによって「快適さ」を得るのです。
このように“顧客のため”にオフィスをつくる社長が、率先して現場を見て判断し、スピード感を持って方針を決定することで、3大機能 其の壱「創造の場」が生まれます。
そして、明文化された方針書という枠に集中して、これを実現する社員たちが、自分の頭で考え、他の人に考えを伝え、他人の意見を取り入れることを重ねていくことで、“自分で考える社員”に成長することができるのです。
あなたは、“顧客のため”に率先して現場を確認しますか?
それとも、“社員のため”と現場を見ずに丸投げしますか?