第47回<働き方改革よりも働かせ方で変革する>

“稼ぐオフィス”は、

アナログ思考の働かせ方で変革する、

“稼がないオフィス”は、

働き方改革のデジタル推進にのせられて損をする

「テラサキさん、よその会社では、働き方改革ってどの程度すすんでいますか?」少数精鋭のオフィスで、元気のいい社員達を雇われている社長のお話です。

 この営業主体の会社は、いつ訪問しても活気があり、整理整頓ができていて、清潔感のあるオフィスです。まさに“稼ぐオフィス”のカタチなのです。

 そのような環境を整えられているにもかかわらず、世の中の働き方改革を取り入れなければ取り残されてしまうのではないか、という一抹の不安もお持ちです。

 人々の不安に付け込んで商売をしようとする業者もいます。どの程度乗っかったら良いのでしょう?

 今回は、どのような順序で働かせ方で変革すれば、将来的に儲かるオフィスにできるのか、例を挙げながら解説します。

 私の考えでは、政府と「働き方改革」の推進企業の思惑通りにはいかないと考えます。

 なぜなら、デジタル化は、確かに必要かもしれないですが、先行して採用すべきものではなく、その前にやっておくべきことがあるからです。

 たとえば、PCのデスクトップの整理を考えてみてください。アナログの世界できちんと片付けができない人は、デスクトップも片付ける事ができません。

 それにもまして、社員の働き方などアナログの最たるものです。人の心理的作用があって、やる気にも影響が出るのです。

 とても、突然デジタル化して対応することなど出来ません。無理もいいところです。

 すべて最初は、ひとの頭で考えるアナログ思考で絵を描いてみることが大切です。

 そして輪郭を掴んで、効率的にするための手段として、デジタル化を進めることは賛成です。

 これをオフィスに置き換えたとき、人が働く場で考えてみれば分かり易いでしょう。

 “稼がないオフィス”は、「働き方改革」の推進企業の誘惑に負けてしまいます。
 いきなりデジタル化することが、「効率化」の近道だと錯覚します。

 業務部とシステム部が業者と打ち合わせをします。
 「日常のAという業務から、Bという業務へ移ることを自動化しましょう。」

 そして、システム部と業者が打ち合わせをして、必要になるプログラムを組んだり、機器の導入を検討したりします。

 「見積もりが高いの安いの」と、会議を聞いて打ち合わせをします。トップの承認が下りて、やっと導入に漕ぎつけます。

 しかし、一年もすると要らないシステムになってしまいます。

 世の中の動向に伴って、Aという業務自体が無くなってしまったからです。かなりの時間とカネを投資をしたシステムなのに、もう不要になってしまうなんて、なんという無駄なのでしょう。

 こんなことにならないように、一人ひとりが自分の頭で考ることです。
「そもそもAという業務自体がこれからも必要なのか?」
「その代替としてCという業務が必要になるのではないか?」

 その後、ミーティングや会議の席で積極的にアイデアを出し合ったほうが、きっと効率的で無駄のない業務改善につながるでしょう。

 アナログ思考で考案して、より稼げるように変革した方が、時間とお金の使い方がうまいと言えます。

 ただ表面上の働き方を変えるのではなく、「原則を定め、社風とともに、働かせ方を変える仕組みをつくること」で、将来にわたって儲かるように仕掛けることです。

 “稼ぐオフィス”は、まず社員に「意識」を根付かせる仕組みを導入します。

 なにもコスト削減に限ったことでなく、

「何が原因でこんなに使っているんだろう」

「どうしたら減らすことができるだろう」

「そのために必要なことは何だろう」と“常に考える”ことです

 このことが大事だ!とわたしは強調します。
 日常“当たり前にやっている業務”を疑ってかかることです。

 “常に考える”習慣があると、

「果たしてこのままでいいのか?」

と頭の片隅にある社員が思いつきます。

「Aをなくして、Cを採用すれば業務を1/3に短縮できませんか?」

 この仮説に他の社員も参戦して、やがて一つの意見にまとまります。「そもそもAはいらないのだ」と。

 効率的になった、CからBをもっと効率よくするために、「こうしたい」という方針が決まってから、デジタル化を検討します。

 システム会社に声をかけて、「このようにつくって欲しい」とやりたいことをきちんと伝えます。

 まずアナログで考えて、もんで、まとめて、それからデジタルです。きちんと伝えれば、時間的にも手戻りなく安く上がります。

 例として挙げられる企業は「未来工業」です。
 何年も前になりますが相談役の山田昭雄氏が健在だったころ、よくTVや雑誌の取材をうけていましたから、ご存知の方も多いでしょう。

 山田氏の本には、「人は楽をしたい、信頼されると裏切れない、任せることの大切さ」などが説かれていましたが、最も注目できることは、「一人ひとりが“常に考える”ように、仕組みを仕掛けていること」です。

 この会社での取り組みで有名なのは、オフィスの照明に、社員個人の名前を書いたひもをぶら下げて、離席するときには自分で消灯するということです。

 別にこれを徹底したところで、電気料金が劇的に安くなるわけではありませんし、もっと言えば、蛍光灯が、つけたり消したりを繰り返すことで消耗する、逆効果にもなります。

 ではなぜ敢えてこんなことをさせるのか。

 ここに「コスト意識」を根付かせるという目的が関係しているのです。

 「コスト意識」を一人ひとりが“常に考える”ように仕掛けることで、日常業務の改善策を社員達自身が編み出していくところに、この会社の強みがあります。

 このように、オフィスにある無駄を削減したり、生産性を向上させたりするのは、そこで働く人の“頭の中”にあるものです。

 外部目線で客観的に見る必要のある分野もありますが、業務改善や働き方を変えることは、自社内で考え出すことがベストなやり方なのです。

 アナログ思考で編み出した最善のやり方を、もっと効率的に行うようにするにはどうするか。

 そのとき初めて、デジタル化の導入を考慮しても良いでしょう。重視するのは「社員個々に考えさせる働かせ方」です。

あなたは、社員の頭から知恵を引き出す働かせ方を重視しますか?
それとも、システム会社に丸投げしてお小遣いを献上しますか?