“稼ぐオフィス”は、
業者の繁忙期を外しつつタイミングを計る、
“稼がないオフィス”は、
流れに任せタイミングを外し高い買い物をする
「ねえ、テラサキさん、次の家賃更新あたりで考えてるんだけど、移転するのにベストなタイミングってありますか?」
好調な業績で、オフィス変革に次の一手をお考えの、社長のお言葉です。投資案件にも絶好のタイミングがあるように、オフィス変革にも最適な時期があります。
思い立ったらすぐに実行したいところですが、やはりタイミングによって損をしたり得をしたりします。
今回は改装・移転を含めた、<オフィス変革に最適な時期>をとりあげます。
“改装・移転”に最適な時期とはいつごろでしょう?
企業によって、決算期、賃貸の契約期限、繁忙期は違いますので一概には言えませんが、
2月、8月、11月あたりがねらい目です。
オフィス業界では、移転やレイアウト変更が集中するのが、3月から5月の大型連休、9月の中間決算期、12月には年内駆け込み需要があるからです。
彼らが需要期と呼んでいるのが、3月から5月と9月、10月です。ここで稼がないと年間の数字達成がおぼつかないようです。ですから、キャンペーンもこのころに打ち、営業にも発破をかけて、「期末までにねじ込んで来い!」と勢い込みます。
この時期に良い計画立案や、良質な仕事を提供してもらうことは望めません。業者が、デザイナーも、プランナーも、工場も、物流も、作業員も、取り合いになっている状態だからです。施工するにあたって、よい監督者も職人も人手不足です。
ねらい目の月は、比較的落ち着いているので、声をかければ喜んで協力してくれますし、実際に施工してくれる、質の良い職人さんも手すきです。
では、“オフィス変革”に最適な時期とはいつごろでしょう?
こちらは、自社の繁忙期に、業務を他部署にも手伝わせることで、他部署の「素人目線」でムダを洗い出すことをしておきます。
繁忙期を終えて、洗い出した業務から、やること、やめることを決めて、そこから次の繁忙期までの間に、変革をして招待会まで済ませるのがベストと言えます。
3月や9月が繁忙期であれば、“オフィス変革”は4月や10月から始めて、翌2月あるいは8月までに完了することです。この時期に終えておけば、業者の繁忙期を避け、質の良い仕事を提供してもらえますし、自社のあらたな繁忙期には、オフィス変革された場で、質の良い仕事を顧客へ提供できます。
通常6ヵ月から1年かかると言われる、オフィス移転期間ですが、それには理由があります。業者側の都合です。
不動産賃貸契約で、退居通告の項目があります。これが6か月になっているため、6か月よりも短い移転計画はないと、仲介会社が考えていることがひとつあります。
退居予告から6ヵ月が慣習になっているのは、出て行った後の新規テナントの募集期間だからです。
この期間を自分都合ですっ飛ばすなら、新しい店子が入るまでの6か月に入るはずだった家賃を保証してねという意味合いです。
もうひとつは、オフィス設計をする業者の都合です。現状調査、ヒアリング、プランニング、体制づくり、工事日程調整などを、自分たちでコントロールできるように、クライアントへは、「じっくり計画して、1年は見た方がいいですよ」と言います。
そうであれば、契約通りに退居せざるを得ませんか?
最近では、このルールを無視して、「来月移転する」と解約を申し出たり、「3か月先には引っ越すからレイアウト描いて」という経営者もいます。ペナルティ料金を払ってまでルールを破るのはなぜでしょう。そうです、「いまがその時」と判断するからです。
そう判断をするのは、失う金や労力も考えた上でのことです。
その金を惜しまずに移転する企業には、損失額を上回る効果を見込んで「このタイミングで移転すべき」と判断するのです。
移転する理由が、単なるわがままや、「家賃交渉にオーナーが応じない」「ビル管理会社が横柄」「近隣に比べて電気代を多く徴収されていた」など交渉や人間関係が原因で、消極的で、腹いせに移転するといったパターンではありません。
この手の早期退居はもめにもめます。そもそもコミュニケーションがうまくいっていない両者ですから、まとまりにくいのも頷けます。「たつ鳥あとを濁さず」で、遺恨を残さずにきれいにお別れしたいものです。
儲かっている会社は、「勝手に出ていく我が社に非がある」ことを認めて、お金で解決します。それは、ここにとどまって、出ていくお金よりも、新天地で“稼ぐオフィス”をつくって、利益を仕組みで得られるタイミングは今だと判断するからです。
“稼がないオフィス”にはもちろんこんな芸当はできません。せっかく移転するのに最適な時期でも、ペナルティ料金を出し渋り、ベストなタイミングを逸してしまいます。
契約更新は2年後の3月だから・・・。なんて待っていると、その時は業者の最需要期で、先程述べたように、お金をかけても良い仕事は提供されません。
なにより残念なのは、準備ができていないので、移転してもお金を消費するだけでよいオフィス投資にはならないことです。これこそ本当の遺失利益です。
“稼ぐオフィス”をつくろうとする意欲的な社長は、タイミングを図ることに長けています。ベストタイミングを図る賢い社長は、最適時期なら、思い切って移転して成功を勝ち取ります。
普段から「いまよりも良い方法はないものか」と探求心旺盛のこの社長は、その状況になる前に準備をしているからです。
「オフィス戦略方針書」を作成して、いつでも「その時」になったら即応できるように備えをしているのです。
方針書自体は3か月程度で完成します。これを選抜社員とパートナーに引き継いで具体化します。ここまで出来た状態で動き出せば、更に3か月程度の準備で、招待会の計画まで準備をすることが可能になります。
あなたは、時期も考慮した移転計画をされますか?
それとも、タイミングも考えずに移転を流れに任せますか?