第43回<オフィス変革がなぜ「戦略」といえるのか>

“稼ぐオフィス”は、

ブレない方針で変革を成就する、

“稼がないオフィス”は、

方向性がはっきりせずに変更ばかりする

 

「働き方改革」や「ワークプレイス変革」といった、社員の働かせ方を変えようと様々な製品やサービス、場所が提供されています。

「コ・ワーキングスペース」も増えてきて、利用しようか躊躇している企業も、やろうと思えば導入できるようになりました。

 オリンピック開催期間の交通についても議論されています。このような取り組みは、仕事の仕方に焦点を当てて、モバイルワークで時間差を生み出す方法を編み出していると言えるかもしれません。

 しかし、売上げを伸ばすことや利益を上げることとは関係なく、むしろ、いらないところにお金をかけざるを得ないよう仕組まれているように見えます。“稼ぐ営業オフィス”では、オフィス変革を戦略として捉えています。

 戦略と戦術、戦闘とはご存知のように、社長が、ご自身のビジョン達成のための絵を描くこと、それを社員にやってもらうことを通して実現するためのものです。

 つまり、戦略とは社長ご自身の意志を行動で示すということです。皆に分かり易く示すためには、言葉にできる指針が必要です。この指針を「オフィス戦略方針書」として作成して全員の前で発表することが重要です

 一般的に戦略と言えば、経営戦略やマーケティング戦略が浮かびます。経営戦略の中には、事業戦略、機能戦略があり、「市場戦略」「財務戦略」「人事戦略」もそこに含まれます。

 市場の視点から、顧客ターゲティングやセグメント、商品の提供方法を考えます。財務の視点からは、収益を最大化するための利益率の上げ方を考えます。そして人事の視点においても、優秀な人財を集め、定着させて、育てることが重要だと言われます。

 しかし、“稼ぐ営業オフィス”に変革する視点としては、「顧客と共創するため」の成長戦略が重要です。全社戦略として、城下町式の「誘い込み戦略」、市場の視点から、「優良顧客囲い込み戦略」、財務の視点から、顧客利益優先の「ソーシャル戦略」、人事の視点では、今いる社員を活かす「全社営業化戦略」を策定します。

 通常の順序としては、経営戦略から、マーケティング戦略、最後にオフィス戦略をつくることになりますが、“稼ぐ営業オフィス”にするためには、全体を考える、経営戦略と同時にすすめることが大事です。社長のビジョンから逆算した近い将来像のためにオフィスを変革するわけですから当然と言えます。

 事業も機能もマーケティングも、そしてオフィスの仕組みや仕掛けも方針化しなければなりません。

 以上のようにオフィス変革というものは、各段階の要素全てが絡む“行事”と言えます。複雑に絡む要素を整理して、シンプルに方向性を定めるためには戦略が必要になります。

 例えていうなら、グランドデザインとも言うべき全社戦略をジグソーパズルに見立てることです。パズルではまず、全体像、つまりビジョンから始めます。そしてピースを大分類します。

 核になる部分や際にくる部分、似た色や模様などをまとめていきます。ビジョン(全体像)に照らし合わせながらピースをつないでブロックにして、ブロック同士をつなぐピースを探します。

 同じように絡み合った要素は“行事”で一度分解して再構築することが、整理するのに有効です。これを戦略として考えます。

“稼がないオフィス”は、流行の戦略に飛びつきます。競争戦略や、逆の考えであるブルー・オーシャン戦略、その他コンサルティング会社が考え出した数多くの戦略を導入します。

 そして、業界内でどの会社も似たようなフレームワークを用いて、同じように「儲からない」と嘆いています。社員達も変化する経営に合わせて、戦術を練り直すことになります。

“稼ぐオフィス”の戦略は、独自のブレークスルーを用います。
業界や業務の常識を疑うことで、他社とは違う方法を見つけます。顧客の製品・サービスと別のものを組み合わせることで、顧客も気づかなかった新しい価値をつくり出します。

 日常便利だと思っているコトを制限して、社員に不便を体験させることで、「自分ならこうして欲しい」という思いつきを得ます。そうすることで、素人視点で顧客の必要を満たす商談をつくり出すことが「利他的商談」になります。

 要するに「日常の当たり前を壊して、非日常ならどのように行動するかを探求する」ことです。オフィスにこういったブレークスルーを生み出す場をつくり、ここで考える社員の意識づけや動機づけを促進するにはどうしても“行事”を用いた戦略が必要なのです。

 このビジョンに基づく戦略は、行くべき道の足もとの灯りになります。いわば誘導灯のようなものです。ビル火災において煙に巻かれた廊下で、非常口までの頼りになる唯一の道しるべです。同様に、この不確かな先の見えない状況で、足元を照らして導いてくれるものが戦略です。

 これを、「やっぱりこっちの戦略にしようか、いやあの戦略の方がよさそうだ」などと変えていたらどうなりますか。避難するときに、さっきは右方面だったのに次の標識を見たら戻れと指示され、今度は左に行けとなったら、煙に巻かれてしまうでしょう。

 言葉にできる指針である「オフィス戦略方針書」をきっちりつくったなら、つぎに幹部社員とのコミュニケーションを密にして戦術を練ります。この戦術を幹部から一般社員に落として戦闘させます。世の中の動きに合わせて戦術は変化しますので、戦闘方法もおのずと変わっていきます。

 しかし、「実現したい!」とあなたが掲げたビジョンに基づく戦略は、目的を達成するまで変えないものです。この戦略に基づくオフィス変革のためにいま、投資をするということが肝要です。

あなたは、きっちり戦略を立て自らの意志を行動で示されますか?
それとも、ブレブレの思い付き戦略で社員を振り回していますか?