“稼ぐオフィス”は、
チーム力で圧倒的アイデアを積み増す、
“稼がないオフィス”は、
一人力に負担を強いて疲れを積み増す
自社の製品・サービスをより多くの人々に提供したい。どこの会社でも持っている願望です。社内で話し合い、顧客の意見を聞き改良を重ねて尚、商品の向上を目指すとき、他社とのコラボレーションを考えるでしょう。
確かに一社でやるよりは、パートナーと組んで、多くのアイデアから相乗効果を狙うことは間違いではありません。しかし、落とし穴もあることを意識していらっしゃいますか?
今回は、<安易なコラボレーションの弊害>をとりあげます。
例えば販社の場合、売る商品が決まっています。
この商品をいかにたくさん売るか、営業部の販売力にかかっています。できる営業マンは、情報収集だけではなく、その情報の使い方を心得ています。販売するだけではなく、使い心地を調査するために再訪問します。顧客が当初採用を決めた目的を果たしているか、それとも思い通りではなかったのか、使い方の問題なのか、製品の問題なのかを、顧客に良い質問をすることによって探求します。このようなやり取りを通じた、円滑なコミュニケーションの先にあるのが、コラボレーションです。
熱意や真摯な対応から、顧客側が「この人と一緒に仕事がしたい」と思い、「じつは我が社で新サービスを開発しているんだが、組まないか?」という運びです。コラボレーション自体は大歓迎です。しかし、安易に行うことには弊害があります。
“稼がないオフィス”では、この話に小躍りして、安易に引き受けます。営業の持ち帰った報告に、「ようしコラボレーションや!早速、君が相手のキーマンと会って話を詰めるように」と意気揚々です。互いの会社を行き来して、具体的に話を進めて、合成した“商品”が誕生します。
これはこれで良いことです。実際に新しい“商品”が生まれたのです。決してムダではありません。しかし、この行程に振り回される社員のストレス、精神的な損失を補って余りある収穫が得られるならばです。
日常業務にプラスして、互いの会社の連携を促進するために、電話やメール、直接・間接の質問への回答、会議、報告、更に増す新“商品”の広告宣伝費の調達方法。これらを一人でこなす努力から、コラボレーション疲れが生じて、生産性は落ちていくのです。
“稼ぐオフィス”が優れているところは、コラボレーション疲れを起こさずに生産性を向上させる仕組みがあることです。
「一人の負担を軽くして、チーム対応で他の人の荷を負える仕組み」です。これにはまず、日常業務の軽減から取り組みます。
そして、個人が抱えている業務を分担します。メンバーは情報を共有します。アイデアは、一人ひとりが自分の頭で考えますが、期日を決めて、それぞれの考えを出し合い、まとめてから方向性を打ち出します。この時点ではまだ先方を呼んだり、中途半端な話をもっていったりしません。メンバーで具体的な企画まで準備してから、営業担当は顧客に持ちかけます。
「あなたにとってタメになりそうな提案がありますので来ませんか?」と誘って自社にヨビコミます。社員個々ではなく「チームのコミュニケーション力」で対応することです。これは、省力便利性のあるオフィスで、良い準備をして、イキイキ働く社員を魅せる広告宣伝も兼ねています。
ある会社では、自社に顧客を招いてセミナーを打っています。
毎月一度、定員を決めて、働き方やオフィスの改善方法など、問題解決型のセミナーです。なるべくお金を払わなくて済むように、社内や関連会社の社員を講師にして開催します。
このこと自体が悪いわけではありません。目的も、その会社にとっての新規開拓と、リピーターとのコラボレーションのキッカケづくりだからです。ただ言えることは、準備不足と行き当たりばったりの策だということです。経験上わかることですが、すぐに集客も講師も頭打ちになります。
「何を言っているんだ、うちはセミナー開催の予算もとっているし、講師も金を掛けず節約して何が悪い」と怒られそうですが、「だからいけないのです」と返答するしかありません。そんなことだから、来場者が少し興味は持っても、その場限りなのです。
効果的なセミナーで、コラボレーションを考えるのなら、半年分の予算を使って、一流の講師を呼ぶことです。
その話から、最もヒキコミたい顧客だけを集めた方がよっぽど良いと考えます。
余計な予算を使わずに効率を求めるなら、事前準備をすべきです。日常業務にさらに積み上げた招待作戦では、その先に待っているのはコラボレーション疲れで病になる哀れな社員達です。実際に「コラボレーションしましょう!」と呼んだ時には、笑顔も見せない疲弊した姿。これを見た共創先に「本当にここと組んで大丈夫か?」と思われるのがすぐに想像できると思います。
社員の、創造力、提案力、商談力を発揮させるには、やはり仕組みが必要です。
先程の営業マンが情報を持ち帰ったところまで話を戻します。
「どんな会社だ。すぐに調べて、その会社が喜ぶような企画を考えるように」と、個人の業務負担を軽減したチームに指示します。圧倒的アイデアを生み出す「創造の場」で、互いを築き上げるコミュニケーションをさせます。ここが重要です。事前準備で、発散させるだけでなく収束までさせて、チームとしてアイデアをまとめます。ここでまとめてから、顧客を誘います。「提案の場」で、良い質問とプロトタイプをつくり、顧客と意見交換しながらコラボレーションします。更に、圧倒的アイデアを生み続ける「商談の場」で“商品”を誕生させます。この行程なら、目新しい経験から仕事に対する満足感を与えられます。さらにこの体験は自信を強化する作用もあるので、繰り返すことで、創造性とパフォーマンスの向上が望めます。ここに負担を強いられる社員は存在しません。こうして、コラボレーションを活性化させ、生産性を上げていくことで、稼ぐオフィスとして余りある収穫を得ることができます。
あなたは、コラボレーションする前のコミュニケーションを大切にさせますか?
それとも、やたらに声をかけ、手を広げて社員を疲弊させますか?