第36回<自社へ招待する準備をする>

“稼ぐオフィス”は、

顧客ごとの招待でココロの笑顔を提供する、

“稼がないオフィス”は、

いっしょくたな招待で自社の欲求を露出する

 製造業や小売業は、良い製品をつくっても、低価格を追求しても、以前のように消費者の購買意欲をそそる事ができなくなっています。

 メーカー、代理店、小売店共同で模索して、新商品発表会、リニューアルお披露目会、感謝祭など、タイトルは様々ですが、顧客接点を増やすために、自社製品を知ってもらうために、とにかく売るために会を催します。

 同じ発表会をするにしても、顧客の購買意欲を掻き立てる、“買いたい”と思わせるには、どこを変えたら良いでしょう?招待会の効果を最大限期待できるようにするには、どこに注力したら良いでしょう?今回は<自社へ招待する準備をする>ことに焦点をあてます。

 オフィスを取り巻く業界では、年に少なくとも一度、「お客様招待会」を開催します。

 ある家具メーカーは、この招待会の準備に多大な時間をかけています。招待期間をデッドラインとして、スケジュールを立てます。どの商品を、どこに展示して、どのように魅せるか、招待客を案内する経路や、運営する人員配置など、プロジェクトチームを立ち上げて計画します。

 ショールームを持っている企業では、日常の業務にプラスして、新商品や参考出品、売れ筋、シリーズもの、各社得意分野を活かした、テーマ別、機能別のコーナー、レイアウトを考えます。流行を追って、最先端の技術や製品をっ競合に先駆けて展示するために、競合の動向に目を光らせ、出展のタイミングを計ります。

 開催も、ライバルの招待会に合わせて「われらこそ、最先端、トップランナー、一等賞!」と競い合っています。

 盛りだくさんの展示会の成功を測るのは、顧客動員数になります。各社ともに、建物のキャパシティも決まっていますので、より多くの客を入れるためには詰め込む方法しか選択肢はありません。

 普段、「健康的なオフィス生活」を提唱している企業が、この時だけは、快適さも無視した多人数を収容することに躍起になっています。「いったい誰のための招待会なの?」と疑問をもって観察していました。営業総動員で招待状を配布しますから、VIP客も一般客も、直販も代理店通しの客も一緒に集客できて、人数はたくさん集まります。

 でも果たして、招待された顧客は心から笑顔になれるでしょうか?

 招待をする目的は、自社をもっとよく知ってもらい、将来的にも継続して取引したい、買う時にはあなたの会社から買いたい、と感じてもらうことでしょう。大事なことは、懐の深さや余裕を感じさせることではないでしょうか。

 これが目的であれば、なぜ反対の余裕のなさを披露してしまうのでしょう?こうした二律背反が起きています。自社を外部にアピールしたいがため、それも、既存客、見込み客、その他の利害関係人、競合までも一度に取り込みたい。欲張り過ぎてます。

 一気に囲い込みたい、あそこはスゴイと言わしめたい、「こっちを見て!他を見ないで!」と言っているかのようです。追いかけるのも度が過ぎると逆効果。相手は逃げてしまいます。同様に、顧客離れにもなるでしょうし、競合からも「恐れるに及ばず」と思われてしまうでしょう。

 ではどうしたら良いでしょう。招待会をどのようにコントロールできるでしょうか?

 それは、目的別に招待客を分けることです。優先客・劣後客を分けるのです。優先させるのは、優良な見込み客と既存顧客、取引先と利害関係人です。劣後させるのは、その他一般既存顧客と競合他社です。それぞれを別々に招待します

 優先客A社を招待する目的は、コラボレーション(共創)するためです。
劣後客B社を招待する目的は、優先客へ格上げされるにふさわしくなってもらうためです。
取引先C社を招待する目的は、協働していくために、取り組みに共感してもらうためです。
株主D氏については、イキイキ働く社員に接して、投資を続けたいと思わせるためですし、
競合E社に至っては、「うらやましいな、マネしたいな、なにか一緒に出来ないかな」です。

 これをするために、周到な準備をします。大きく3つの準備をします。「自社を魅せる・招く・商談する」準備です。自社を魅せる準備にはA~Eそれぞれ違う仕掛けをします。

 仕組みはたった一つですが、仕掛けは各社にあったモノに変化させるのです。

 たとえば、A社には、「我が社の利益向上を真剣に考えてくれている」とインパクトを与える提案をします。

 C社には「この会社と付き合い続けたい」と感じさせるために、協力会社を大切にしている印象を強調します。

 E社にさえ、「競うばかりでなく、互いの強みに協力したり、弱みは補い合いませんか」というメッセージを込めます。

 おみやげは、持って帰っても家族も喜ばないグッズなどではなく「これからの自分たちの仕事で役立ちそうな知識」を持ち帰ってもらうのです。各社個別の、笑顔になってもらうための準備をすることです。

 あのトヨタでさえ、同業、異業種を問わず、提携を加速させているのではないですか?
これまでは、車を開発・製造・販売する会社でしたが、すべての人が自由に楽しく移動できる未来の社会を実現するため、「モビリティカンパニーへ変革する」と、社長が宣言しました。背景には急速な技術革新、業界にとっての100年に一度の大変革があるようです。
 海外の企業や団体にまで触手を伸ばして、次の市場を開拓しようとしています。初期メンバーは、アマゾン、ウーバー、滴滴出行(ディディチューシン)、ピザハット、マツダと、モビリティサービスのために提携し、みんなで市場を広げようと考え方を変えています。
一つの会社が全方位でやるより、協調するところは一緒にやって、相乗効果を狙えます。

 ここに共創・協働・協力する戦略が、いまのステージに合っていることを見て取れます。
ですから、折角企画するなら、いっしょくたに招待して、来客に不快感を与えるのではなく、来客に合わせた個別招待を企画して、共創・協働・協力関係を築く演出をすることが大事だと考えます。

 目的は、お客様に喜んで頂き、新たな価値を創造することだからです。

あなたは、3つの準備で確実に顧客を取り込み、業績を伸ばしていますか?
それとも、一度っきりのための準備に追われて、優良顧客まで失いますか?