“稼ぐオフィス”は、
利他的行動への投資を心得ている、
“稼がないオフィス”は、
自社的な設えに時間とカネを浪費する
今回は<好業績のときにこそやるべきこと>を考察します。
事業が好調の時に、経営者のあなたがすることは、“次の一手への投資”でしょう。新規開拓、新商品、新規事業、設備更新、人員増強等、「ひと、もの」に関してお金を投入して、より稼ぎ出す準備をします。
“稼ぐオフィス”でも、「投資すべきか、タイミングは今か、それを誰とやるか」という、“次の一手への投資”をいつ、だれと、どのように効果的にかけるかの判断軸があります。
但し、私の提唱する仕組みは、好業績の企業にお勧めしている商品です。申し訳なく存じますが、本業で行き詰まっている企業経営者にはお勧めしていません。
それは、独創的な「他社に真似されない仕組み」を追求した結果です。新規の見込み客を「ヨビコミ」、リピーターに育てて「ヒキコミ」、その顧客を「マキコミ」、紹介からまた新規を獲得する、城下町を模倣したオフィスづくりメソッドです。決して悪気はないのでお許し戴きたい。
“稼がないオフィス”は、好業績のとき、オフィスに投資をします。オフィス環境改善業者が提案する「社員がイキイキ働けるオフィス」を作ります。また、内装をきれいに、家具も更新して、「その場限りの贅沢」をするために、打ち合わせの時間と、多額の資金を投入します。
稼ぐ仕組みなど無いきれいな場所、「いいオフィスですね」という取引先のお世辞に満足しています。
時が経ち、じり貧になってから「さあ、あれをして巻き返そう!」と必死になります。時間もカネもない中で、「お客様本位の工夫をしろ!」と号令をかけます。
“稼ぐオフィス”も、好業績のとき、オフィスに投資をします。違いは、時間とおカネのかけ方です。オフィスの内装や家具を贅沢にするのではなくて、顧客本位の仕掛けづくりに投資します。
傍から見れば「何の変哲もないこと」かもしれませんが、招待された来客には「居心地よい場」との印象を与える仕組みです。
一つの例として、「利他的商談」を仕掛けます。
これは、体力があるときに「やるべきことに集中」することです。これには時間とカネがかかります。しかしこれが、「他社に真似されない仕組み」なのです。
なにしろ他社は、真似しようと思った時にカネはあったとしても、時間までとれないとか、その逆もあり、なかなか時間とカネの両方をかける余力など無いからです。
「その場限りの贅沢」と「やるべきことに集中」するという大きな違いです。
まるでアリとキリギリスの物語みたいです。
ただ私は、必死に“自分のために”巣作りで夏を過ごし、たった一冬の“自分のための”食糧しか手にしないアリよりも、“利他的なコト”を提供して夏を過ごすキリギリスに愛着を感じます。
自然に食糧のある夏にはボランティアとして活動して、余裕のある時には自分が犠牲を払う、“利他的なコト”に精力的に取り組む姿勢が好きです。
「宵越しの銭はいらねぇ」という江戸っ子のような、気風の良さというか、“文化的なもの”を感じます。江戸の庶民は決して自堕落になっていた訳ではなく、「どうせ人生明日は生きているかわからないのだから、みんなで楽しく行こうや」という精神です。こうした精神を庶民に植え込んだ城主の意図は見習うべきことだと言えます。
この精神で、登場者の立場をひっくり返して、物語を別の視点から見てみましょう。
アリは働き者で、いつも称賛されていますが、キリギリスにも大いに褒めるべきところがあります。
キリギリスは、アリが“自分のために”馬車馬のように働いている間、“利他的なコト”で遊んでいます。子供のように、ただ遊んでいたら教訓的物語の通りですが、商売のことを意識して遊んでいるなら違う結末を迎えます。
むしろ遊んでいたほうが効果的です。なぜ効果的かといえば、キリギリスは、音楽という“文化的なもの”を聞く人たちが喜ぶように提供します。それを夏の間ボランティアでやっていけたのは、自然に食べ物があったからです。
しかし、夏が終わり食糧が尽きた時困ってしまいます。自力で調達できないのです。
でも、この時に援助者やファンがついていたらどうでしょう?
スポンサーがいたらその支援で、自分が食べ物を集めるという行動をせずとも“利他的なもの”の恩返しで、食糧を買うことができます、ファンが多ければ、裕福な暮らしさえ出来ます。
同じように、好調の時にこそ、オフィスに「利他的商談」の仕掛けをして、顧客を「ヨビコミ・ヒキコミ・マキコミ」をすることで囲い込みます。
「オフィス変革に投資をする」ことで、ファン化を推進するという行動に集中します。この行為は、初めから自社に利益をもたらしません。核となる部分が、「利他的商談」という、(自社の利益にならない)いわば“文化的なもの”です。
でもこれを、好業績のときに仕掛けておけば、顧客をファン化できる頃には、競合他社が真似をしたくても、参入障壁が高すぎて、真似られない域に達しています。「ひと、もの」にお金をかけることも大事ですが、好業績のときにこそ、このような“利他的なコト”に、時間とカネをかけるべきなのです。
冒頭で、好業績の企業にお勧めしている商品だと申し上げたのは、余裕のある時に、利他的な準備ができる企業でないと、体力が続かないからです。
本業で行き詰まる前の、ある程度業績が安定している時期の“次の一手への投資”をする段階で、是非とも考慮して頂きたい投資案件です。事業に意欲的な社長は“利他的なコト”の手伝いを望まれます。
あなたは、好調のときに生きた投資に踏み切れますか?
それとも、散財してその場限りの贅沢をしてしまいますか?