第34回<協力業者選択のコツ>

“稼ぐオフィス”は、

共創する顧客と共に、優良取引先を選んでいる、

“稼がないオフィス”は、古くさい慣習を重んじ、

搾取の対象にされる

今回は<協力業者選択のコツ>を考察します。
 長年付き合いのあった業者を、大事にしている社長は称賛に値します。ほんとうに律儀な方なのでしょう。

 商売をしていれば、いままでの付き合いの中で、苦楽を共にし、貸し借りもきっちり返しあって、信頼を刻んできたことでしょう。

 しかし、酷なことを申し上げ誠に恐縮ではありますが、この付き合いに終止符を打っていただきたいのです。この先も、この現状の付き合いをを続けていっても、利益が減ることはあっても、増やすことを望めないからというのが理由です。何故だと思われますか?

 慣習というのは怖いもので、取引当初は確かに親身で、献身的にしてくれた良い業者も、経営者の交代や、技術やサービスが時代遅れになり、経営に陰りが出たりと状況に変化が起こります。すると、必ずといっていいほど、そのしわ寄せを顧客の方に向かせるのです。
それも、付き合いが古くからあって、信用していたところがそうだったりするものです。

 「うちに限ってあり得ない!」と怒る方もいますが、事実ですので正直に言わせてもらいます。悪化していることはあっても、良くなっていることはまずありません。劣化程度であれば、カンフル剤投与で回復することもありますが、人の身体と同じように、細胞が“がん化”していたら、“取り除く”以外に方法はないのです。

 オフィスを変革するときが良いタイミングです。「社員の働かせ方」や「顧客」も見直しますが、「取引先」も例外ではありません。古い慣習を引きずっていては、新しい未来への足かせになりかねません。

 とはいえ、そこは長年のお付き合いです。突然「取引停止」を宣告することはできません。まずは確かめてから徐々に変えていきます。これらをまとめる社員をアサインします。

 現状を調査させ、是正できないかを検討させます。日常の取引で、「“なあなあ”になっている慣習の棚卸」です。主だった項目を抽出して、見積書を提出させます。家具であれば、〔机、椅子、収納〕です。

 ポイントはすべて細かく精査しないことです。オフィスを取り巻く環境の業者は多岐にわたり、とてもすべてを調べている時間がもったいないのと、網羅できずに面倒になってしまい「まあいいや」にならないためです。電気工事であれば、〔配線材、蛍光灯、電工費〕ですし、移動作業であれば、〔作業員費、車両費、資材費〕程度です。金額の中心になる、3点を比較することで適正価格かどうかを検証します。

 そして、同じ項目で、今後付き合ってみようと目をつけていた業者に見積もり依頼をさせます。「同ランク、同価格帯、同機能」の“見積依頼書”を社員に作成させます。また、提出期限を指定して、同時に見積書を集めます。期限を守る業者かどうかを確認するためです。

 この段階で、既存業者の方が“安い”見積もりを出せば良いのではないこと、に注意が必要です。比較対照しているモノが本当に同等なのかを確認します。先程、ポイントはすべて細かく精査しないことと述べましたが、同等品か否かはきちんと指定します。塗装工事ひとつとってみても、Aの塗料とBの塗料は同じ「白」でも価格の差が倍の商品もあるのです。業者に依頼するときには、〔Aの塗料とする〕と備考欄に指定するように指示します。

 また、“安い”から、で決めてしまって困ることは品質です。移動作業を行う時に、社員を派遣する業者と、軽作業のアルバイトを派遣する業者とでは作業員費にかかる金額が違います。同等品であるか、品質は同じかといった点に注意して、比較検討してください。
必ずや、一緒に明日を創るパートナーとの出会いがあることでしょう!

 こうした方法は、時間短縮をするツールとして、寺崎が用いる手法です。特に改修・移転をするプロジェクト以前に準備しておくと、プロジェクト進行時に有効に作用します。
 やり方も単純ですので、アサインするのは、新人社員でも大丈夫です。会社に貢献する仕事を与えることにもなり、やりがいを感じて取り組むことでしょう。

 このように、協力業者選択のコツは、プロジェクト発足前に、出入り業者とこれから付き合う業者を比較検討して、決定しておくことです

 なにもプロジェクトマネジメントのプロを雇う必要はありません。彼らは業者選びをするときに、採点表まで持ち込んで、「こちらは安いが、任せるのにはこちらの方が安心だ」とか、「こちらは高いが、デザイン性が高く信用がおける」など、小むずかしい理屈をつけます。余裕がある方なら、お金と時間をつぎ込んで、付き合ってみても良いかもしれませんが、私はそこまでする必要はないと考えます。

 時間を大事になさる、スピード重視の社長なら、シンプルに考えて、「うちのことを、本当に親身になって考えてくれる会社かどうか」だけが基準になります

 プロジェクトが発足してから、すべてを、“まるっとまとめる業者”に丸投げすると、先方もあなたの意図や方針が分からず、「腹の探り合い」になってしまいます。これでは、時間がかかっても仕方がないことです。

 しかし、私のオススメするやり方は、協力業者選択のコツも盛り込まれた、「社長が意図するオフィス戦略方針書」を先につくるので、基本方針、基本プラン、概算見積もり、会社の信用などを精査する工程は終わっています

 あとは、どう実行するかにかかっています。プロジェクト進行の時点では、実施設計と、工程をどう詰めていくかに集中出来て、極めて単純にできるのです。

あなたは、どうあっても既存業者を使うつもりですか?
それとも、一緒に明日を創るパートナーとの出会いに賭けますか?