第32回<‟稼ぐ営業オフィス”の営業力とは>

“稼ぐオフィス”は、

顧客からの信頼の隅石があり、

“稼がないオフィス”は、

もろい土台の上に家を建てる

 今回は<“稼ぐオフィス”の営業力とは>を考察します。
 営業力を強化する名目で、「訪問効率を上げる」「受注率を上げる」「顧客フォローと再契約を増やす」など、売上げや利益をアップさせるために、どこの企業にも共通で行っていることがあります。

 挨拶や名刺交換から始まって、訪問スケジュールとファーストコンタクトの手順、販促物の提供の仕方、訪問時の注意点や面談での印象づけ、クロージングのテクニックといった、実践型の営業研修です。ひとりの営業担当者の能力を底上げすることで、個人の販売努力から、売上げ向上を目指すことをさせるものです。

 このような施策は間違った事ではないにしても、とても高効率と言えるものではありません。

 なぜなら、信頼の「土台」というべきものがもろいからです。話し合える「土台」とは、相手に対する理解度、共通の事柄や共有している話題、親近感が関係しています

 しかし、一般的にはこの基礎が出来上がらないところに、商談という「家を建てる」ことを進めます。会話の基礎がないところで、どんなアプローチを試みても、運が左右することはあるとしても、成功する確率は低いままです。

では、どのようにすれば成功する確率が上がりますか?

 どんな人でも信用している、信頼している「影響力」のある、友人知人がいるものです。この人たちがなぜ「影響力」を持っているのかを解き明かし、同じ方法で影響を与える存在になることが成功への近道です。

 インフルエンサーとも呼ばれる、「影響力」を持つ人にはある共通点があります。「人と人の結びつきに敏感である」ということです。

 また、その人自身がある分野に精通していて、その分野の良き相談相手です。もしも分野違いの相談をしても、自身の分野以外においても、「誰に聞けば答えを持っているか」を知っています。そのような社会的ネットワークを持つゆえに、「影響力」があるのです。

その影響力を利用するには、オフィスにどう当てはめたら良いのでしょうか?

 “稼ぐオフィス”の営業力とは、新たな社内ネットワークを構築して、顧客への「影響力」がある組織にすることです。そこには、営業担当者の能力を底上げする必要も、販売努力させることもありません。誰でもができるように仕組み化されているからです。

 社長の持つ力は、「プロデュース力」です。映画作りを例にとれば、どんなに優秀な監督、脚本、カメラ、美術、音響、演じる役者がいても、できるプロデューサーがいないとヒット作にはなりません。

 同じように、会社の全体像(ビジョン・ミッション・コンセプト)といった理念を考え、未来も稼ぎ出せるオフィスをつくることは、構想力ある社長をおいて他にいません。いかに全体の絵を大きく描くか、どうやってやるか、誰を巻き込むかと「プロデュース力」を発揮するのです。

 これに対して営業の持つ力は、「伝える力」だと言えます。会社の中で営業部は花形です。社長の考えを理解して、社外に宣伝し、売上げをけん引しています。

 業界の知識も、自社の製品・サービスのメリットもデメリットも、顧客に正確に伝えて、説得し納得させて、契約を取ります。販売後もフォローして、欠陥が見つかれば、社内のクレーム処理担当者や開発に伝えて、改善を図ります。そして新製品開発、販売へと続きます。

 この営業マンに必要な特質として、話がうまいとか、切れ者だとか、数字に強いなどが着目されますが、実は「一点だけ光っていればあとはオマケである」と言いたいのです。それは、企画・提案を人に伝える術である、「資料作成能力」です。

 これさえできれば、セールストークもロールプレイングも営業研修も必要なしと考えます。「伝える力」さえあれば、その場に居合わせない、その会社のトップにさえ、自社の魅力を伝える事ができます。ただし、これを養うのは大変ですから、だれでもできるように仕組み化することです。

 “稼がない営業オフィス”では、平均的な研修会社に社員を通わせます。平日日中のゴールデンタイムに、研修室に缶詰めにして、どこでも同じような営業研修をしています。

 自社の売り込みたいものを「売るため」の技術を磨くことに心血を注ぎます。大事な時間とお金を、稼ぎ出さない平均的な研修に充てるなんて、もったいないと思われませんか?

 “稼ぐ営業オフィス”では研修会社には頼りません。「顧客の利益のため」に最適化した、「人と人の結びつきに敏感な、集団の知恵にする技術」に、時間とお金を投資します

 「プロデュース力」のある社長はここに着眼して、組織を変革します。
 顧客との間に、信頼の基礎が築けていれば、提案が通りやすくなります。これを仕組み化するために変革するのです。営業部の社員だけが社員ではありません。営業部以外の社員でも、「資料作成能力」に才能を発揮する人はいます。

 いままで当たり前に行ってきた、営業一人に負わせることをやめ、内勤者も一緒に企画から考えるようにするのです。

 「資料作成能力」と「伝える力」には、相手に対する深い理解や、親近感をいだくことが必要です。“稼ぐオフィス”に顧客を呼び込み、接点を増やすことによってそうします。そして、「顧客の利益のため」に企画・提案するという共通の体験から、顧客との話題の共有も生まれます。このように、「土台」ができたところにアプローチをすれば、成功する確率は格段に高くなります。

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