“稼ぐオフィス”は、
シンプルにして稼ぎ出す、
“稼がないオフィス”は、
ムダな備品で肥え太る
新元号に変わり、オフィスで使用する印刷物なども、「平成」文字の入ったものは処分して、「令和」文字入りのものをさっそく使用されているのではないでしょうか?
何かをきっかけに古いものを捨て去るということに、すぐに応じる人と、出来ない人がいます。過去の遺物に執着して、いらない荷物を背負い込んで、せっかくのスペースを塞いでいるオフィスをたくさん見てきました。
業種にもよりますが、「本社機能」というものであれば、倉庫というものは本来、書類をストックする棚があり、年度別に記した整理箱が順序良く並べられているはずです。
ところが、レイアウト変更や移転を機に整理してみると、出てくる出てくる。いらないものであふれかえっているのが現状です。
「ちょっとだけ置かせて」と置いたままのサンプル品をはじめ、リースアップしたOA機器、ソフトとその空き箱、90年代に購入して、今はもう本体もないのに保存されているマニュアルの類。その他にもイベントで一回きり使用したディスプレイや販促品など、もう二度と日の目を見ないものまでも隠してあったりします。
経営者からすれば、明らかに家賃の無駄遣いをしていると思うのですが、いったい社員たちは、このスペースに賃借料がいくらかかっているのか知っていてやっているのか?と怒りたくなる気持ちも理解できます。
そこで今回は<オフィスを使いやすくする仕掛け>を考察します。
ムダなものは排除して、みんなが使いやすくシンプルなオフィスにすること。これは“稼ぐオフィス”にすることに直結します。
“稼がないオフィス”は、倉庫の他にもムダなモノに囲まれています。机上には、PC,固定電話機にプラスして、個人所有のファイル、本、雑誌、文房具、お土産にもらった菓子で散乱しています。
コピーコーナーでは、リサイクルボックスにミスをしたカラープリント用紙や新聞紙、リサイクルできるのかどうか判別できない紙類を仮置きする収納庫、柄が折れて使用できないにもかかわらず置きっぱなしのコロコロ。
はっきり言って業務に関係ないものであふれています。目に入る情報量が多くて疲れますし、なにより儲けるための妨げになります。
以前トーク番組で、女優の倍賞千恵子さんが思い出を語っていました。古い方ならご存知の映画、「幸福の黄色いハンカチ」で共演した、高倉健さん。「男はつらいよ」での渥美清さん。二作共に山田洋次監督作品です。
監督は「この二人の役者はよく似ている」と言っていたそうです。「ぜい肉のない演技をする」ところが共通点でした。
健さんは寡黙ですからわかりますが、“寅さん”はアドリブが多いことで有名でした。“さくら”さんの話では、「一本筋が通っていて、その本筋から外れたアドリブは無かった」ということでした。
下手な役者のアドリブは、枝葉に分かれて収拾がつかなくなるのですが、渥美さんはそこにも無駄のない、ぜい肉をそぎ落とした演技をしていたという話でした。
“稼ぐオフィス”に置き換えれば、シンプルさの追求で筋を通します。業務の洗い出し、見直しから、要らない作業を削ぎ落し、業務に不要なものは捨ててしまいます。
顧客のことを考えて企画を練ったり、その材料を探し集めたり加工したりと、提案のために集中しやすいように、「省力便利性」の仕組みをとりいれます。
ファイリングシステムというのをご存知でしょうか?
ひと言で言うと、発生した書類を、自動的に廃棄するシステムのことです。
オフィスに書類が蓄積されてゴミの山になるのを防ぎます。そして、共有と検索をしやすくします。
ザックリとしたやり方は、まず、個人用のファイルを廃止して、共有ファイルを作成します。
3段引き出し型の収納庫の上段・中段に当年度、下段に前年度の書類を整理します。入れ替え時期に、いままであった、当年度の書類を整理して圧縮して、下段に収納します。いままで下段にあった、前年度分は箱詰めして、倉庫の棚へ持っていきます。
当年度分を整理した、上段・中段の2段分が空になります。ここが、新年度(今度の当年度)の書類置き場になります。
倉庫に行った書類箱は、年度順に押し出されて、あぶれた書類箱はチェックせずに自動的に捨てるシステムです。
同じようなシステムを取り入れます。
例として、「文具一元管理」を仕掛けます。
普通のオフィスでは個人机に袖机(あるいはワゴン)が付いていて、引き出しには文房具が入っています。個人管理をするために、人によっては、同じボールペンが何本もストックされていたり、使用中に芯が無くなり、ホッチキスの針が切れたりして、管理部門へ取りに行ったりしています。
便利なようで実は不便だったり、ムダを許しているのです。個々がきちんと管理できれば問題ありませんが、そのへんが怪しいと思っていませんか?
これを共有にするのです。個人所有をやめさせて、管理部門の一元管理にするのです。
管理部門に行った文具箱は、グループごとに仕分けされて、自動的に補充するシステムです。
個人はチェックせずに、自分のグループの文具箱を、朝取りに行って、夕方使ったままで返却する方式にします。
個人で持たせなければ、引き出しは空きますし、管理部門でまとめて補充もする事ができて、過不足なくそろえる事ができます。運用の仕方はまたの機会にするとして、当たり前だった習慣を変えて、お金をかけることなく共有と検索をしやすくする事が可能です。
二次的な効果として、「他の人への気遣い」も生まれます。
自分だけのモノではなく、みんなのモノです。乱雑に扱ったり、汚したりすることは、メンバーに迷惑をかけてしまうことになります。みんなのために、丁寧に、きれいに使用する習慣が生まれます。
また、管理部門が補充してくれるのを当たり前とみなさずに、「いつも揃えてくれてありがとう」という気持ちを伝えれば、社員間の血行も良くなります。
いきなり、「顧客のことを考えろ!」と言うより、まず身内から実践させる良い機会になります。こういうことを習慣づけていくうちに、自然と顧客の必要を、自分ごととして考えるようになります。
この仕掛けは、「省力便利性」の仕組みの一部です。なんでも便利にしてしまうのではなく、多少ある不便さで、工夫や気遣い、ひらめき、企画、提案、商談づくりと、しつけていくのです。
あなたは、オフィスをシンプルにすることから、新たな需要を創造しますか?
それとも、不要物の山に囲まれて、商機を逃しますか?