“稼ぐオフィス”は、
考え方を刷新して前進する、
“稼がないオフィス”は、
過去に囚われて後退していく
ゴールデンウイークに突入し、巷では観光や、注目スポットに意識が向いています。
そんな中で、静かに「平成」が幕を閉じようとしています。平成天皇、明仁さまの生い立ちを振り返る特番なども組まれています。
天皇家の世継ぎとして、第二次世界大戦を経験され、皇太子としての昭和、天皇として平成を駆け抜けてこられた激動人生は、さぞご苦労が絶えなかったことだろうと思います。
ひるがえって、あなたも激動の時代を生き抜かれてきたことと思います。消費税も3%から5%、8%、そして秋には10%・・・次から次へと、本業以外の外的要因が経営を圧迫しています。「もっと稼いで、社員達にも報いてやらねば」と奮起しても、肝心の社員たちは他人事のようで頼りなくも見えます。
第27回で<オフィスづくりでやらなければならないこと>として、オフィス戦略方針書の重要性について書きました。
5つの要素のなかで、特に「仕掛け」である“色づかい”に焦点を当てて解説しました。デザイナーとの打ち合わせに、あなたの方針を適用する方法について、どのように行うかをお伝えしました。
今回は、別の角度「目的」に焦点を当てていきます。
<オフィス変革をするためには>何が必要になるでしょう?
・ビジョン・ミッション・コンセプト・パーパスといった「企業理念」があります。
ポイントは、オフィス戦略の3大要素の、「市場戦略、利益戦略、人材戦略」を「売上高、投資効果、経営の継続性」とも合致させながら策を練ることです。
この中で「目的」を、すぐ目の前にある、手の届きそうな目標にすることで良いでしょうか?ご自分の目の黒いうちに実現したいこともあるでしょう。
しかし、もっと先の「壮大な理想を掲げて、社外に積極的に発信していく」ことと、あなたが、「価値創造のための環境をつくり出して、そこでやる気のある社員たちが働く姿を見せていく」ことが重要なポイントと言えます。
“稼がないオフィス”は、「われらの成功体験」という過去の延長で、ものごとを推察します。失敗もありますが、それ以上に成功体験を持っていることが足かせになっています。
「あの事例でうまく対処できたのだから、今回もあのやり方で大丈夫だろう」と考えます。判断軸が、経験値によって決められているので飛躍できません。すなわち、過去に囚われた思考法です。これでは、未来志向の消費者には通用しません。
“稼ぐオフィス”は、「求心力」を目指した考え方に刷新します。原理原則はありますが、若い力や自由な発想を起点に、相手の立場になって考慮します。もちろん人間ですから、分からないこともありますが、企画をするときに、「自分はこうして欲しいが、あなたも同じように考えますか?」と提案をして、相手の真意を引き出すようにします。
「いやいや、そこまでは不要だけど、面白い発想ですね。そこにこれを足してみたら、うちのお客さんは喜ぶかもしれない・・・」こうしたやりとりから一歩ずつ商談を進めるのです。
中東地域では、新しい葡萄酒は新しい革袋に保存するそうです。古い革袋に入れると、発酵の力で袋が裂けてしまうので、新しい革袋にするのです。同じように、新しい仕組みを導入するときには、“稼ぐオフィス”の考え方に刷新します。
あなたが意図する方針書の中に、「目的」を明文化することから、未来の成功体験が生まれます。実現する社員も、顧客との協働から、ともに喜びが芽生え、これが習慣化します。
これは、徹底的な効率化によって成し遂げるという、現行のやり方ではなく、あなたの会社の存在意義に賛同・共感してもらうことで“稼ぐオフィス”を前進させるやり方です。
皇室の番組の中で、平成天皇のご結婚のエピソードを伝えていました。新聞各紙の記者たちは、皇太子のお妃選びを取材する際、旧皇室典範の範囲で、民間人を除外して候補を探したそうです。8年もの歳月をかけて宮内庁も候補者選びをしていました。
ところが、周知のように、軽井沢でのテニスの試合で巡り合ったお二人は、周囲の懸念を乗り越えて、前代未聞のご成婚に至りました。過去の習慣など何の意味もなさない、陛下の決断でした。
この当時、若手だった女性記者の回想ですが、「取材陣のだれ一人として、まさか皇太子が恋をするなんて思ってもみなかった」と言っていました。こうした、過去の経験則や、思い込み、法としての皇室典範に縛られていては、「世紀の恋愛結婚」もなかったことでしょう。陛下は、古い革袋を捨て去り、新しい革袋を用意されたのです。
平成の30年を振り返ってみて、あなたの事業にも様々な変化があったことでしょう。会社の規模を大きくされたかもしれません。業績不振による撤退や、人手不足を理由に縮小する競合をしり目に、事業を拡大されてきたのかもしれません。
しかし、その成功体験にいつまでもしがみついていては、この先の経営が危ぶまれます。昭和から平成で、日本経済が鈍化した原因として、攻めの設備投資をしなかったことと、デジタル化の遅れを指摘する人もいます。
アベノミクスによる効果で、労働率は上がりましたが、生産性は落ちてしまったともいわれています。経営は、ただ立ち止まるだけでも、下流に流されていく小舟のようです。力を尽くして前進しなければ流され続けて、最後には滝にのみ込まれてしまいます。
ですから今こそ、「オフィス変革」をきっかけに、社内外に変革を呼びかけるのです。「オフィス戦略方針書」に明文化した「目的」を、あなたの会社の進むべき指針として、社内外の意識改革とともに、新しい時代を切り拓いて戴きたいと切に願います。
いよいよ明日から「令和」の時代の幕開けです。
あなたは、刷新した“稼ぐオフィス”で飛躍前進しますか?
それとも、過去の延長でずるずると後退りますか?