第26回<オフィスづくりで絶対にしてはいけないこと>

“稼ぐオフィス”は、
豊かな発想力で独自の仕組みをつくり、

“稼がないオフィス”は、
創造的真似のきれいなオフィスをつくる

今回は<オフィスづくりで絶対にしてはいけないこと>を考えます。
“稼ぐオフィス”にしようと決断されてあなたはまず、何から手を付けられるでしょうか?

 個人的にネットで情報や知識をあつめたり、社内アンケートやヒアリングで、社員達の意見を調査をしたり、普段から出入りしている業者に「お知恵拝借」と聞き込みをしたり、外部の友人経営者に相談したりと、情報収集からなさるのではないでしょうか?

 そして、紹介された「最先端のオフィス」をつくった他社オフィスを見学したり、オフィス家具メーカーのショールームに見学へ行ったり、「オフィス改革」の勉強会への出席をしたりして、「新しいオフィスとはこういうものか」という知識を得ます。

 ざっと以上のような行動は、一般的には“よし”とされているものです。しかし、これが寺崎の指摘する、「絶対にしてはいけないこと」なのです。

なぜいけないのでしょうか?

 オフィス環境改善業界では、他社よりも勝った提案力に力を注ぎます。その中で重視するのは、ビジュアルに訴えることです。

 見栄えの良い「デザインオフィス」をまず見せて、「こんな素敵なプランを考えるデザイナーがいる会社に任せれば、きっと我が社も素晴らしいオフィスが完成する」と思い込ませるところがスタートです。
 顧客の側も、「提案力のある会社と組みたい」と考えます。ビジュアルに訴えて、目から入る情報で人の決定を左右するのが、マーケッティング理論では正しいことが証明されています。

 ただ、それは売るために有効な手段であり、“稼ぐオフィス”にするための要素ではありません。

 ある不動産会社が自社オフィスを改装して、ニューオフィス賞を受賞したとありました。
「あそこに頼めば、いいオフィスをつくってくれるはず」とテナント候補が思ってくれれば良い、というテナント誘致の宣伝効果はあるでしょう。理論として正しいことです。

 しかし、「自社オフィスを“稼ぐオフィス”にすること」を考えておられるあなたには、まったく関係がないのです。それどころか弊害があります。

 何が害になるかと言えば、事例を見てしまったことで先入観が植え付けられて、「見て好ましかった」という印象が、脳に残像として焼き付くことです。

 これは、後で拭い去ることが難しく、だまされてしまう人も多いのも事実です。

 売り方の上手な、オフィス環境改善業者はまず、納入事例、自社のプロジェクト実績、イメージパースを見せつけて、印象作戦を展開します。

 そして、見事に成功させて、「仮発注書」に責任者の印鑑を要求し、「では、御社に合った素敵なオフィスづくりをしていきましょう」と、あなたの会社の中に入り込みます。

 そこには当初の納入事例も、過去の実績も、イメージパースとも違う、その中の要素をいくつか組み合わせた、「創造的真似をしたオフィス」しかありません。

 “稼がないオフィス”は、素敵に見える他社を真似た「きれいなオフィス」を作ります。
 ネットでの情報、各種勉強会、外部友人への相談や他社オフィス見学から、オフィス環境改善業者を選びます。

 彼らの実施する、社内アンケート、ヒアリングで社員の希望をまとめます。彼らのショールーム見学もして、「ご希望を形にします」という「提案」を受け入れます。

 そして、「きれいなだけのオフィス」が完成します。

“稼ぐオフィス”を創ろうと思うなら、あなたの会社独自の仕組みが必要です。

 「独自性」を考えた時、「見て聞いて覚えたよいところ」を参考にすることは、他社の真似であり、オリジナリティなど存在しません。創造性もありません。

 ビジュアルから入る情報が多くなると、刷り込み、思い込みから離れる事ができず、見たことのある、実在するものが頭から離れず、どうしても二番煎じになってしまうのです。

 また、見栄えをよくすることにばかり注意が向き、本質である、儲かる仕組みのある“稼ぐオフィス”づくりに集中できません。

 自社オリジナルの“稼ぐオフィス”をつくるには、逆説的なようですが、“オフィスのプロ”になろうとはせずに、「素人だからこその発想力」を発揮して、あなた自身でプランを練り、社員を巻き込んで「オフィス戦略方針書」を創って、「あなたの方針をカタチに変換してくれる」、“オフィスのプロ”をビジネスパートナーとして活用することの方が重要なのです。

 日頃から「誰と組むか」を考えて業者を見分けておくことも社長の務めであると考えます

 どうしてそのように言えるのでしょうか。

 TVのクイズ番組で、ある官公庁が「ペーパーレス化」の取り組みをしていました。
「この取り組みを有効にするためにとった施策はなんでしょう?」という出題でした。

 家具メーカーにいる営業ならみんな知っている常識です。
「机の天板裏にある、センター引き出しを無くすこと」です。

 こうすることで、「とりあえずしまっておこう」という書類の置き場が無くなるため、書類を無くす行動につながるというものです。

 しかし、私は他の回答者の発想の方が良いと感じました。ある芸人さんの回答ですが、「表面ボコボコ」と書いていました。

 つまり、机上面がなだらかでなく、書きにくい環境なら、書類を使いたくはなくなるだろうという発想です。

 このように、素人だからこそ、業界の知識がないからこそ生まれる知恵が、オフィスづくりにも大切なのです。

 新元号も発表され、昭和から平成、令和となりましたが、新しい時代にふさわしいオフィスづくりの発想力は、過去につくられたものからは生み出せないと考えます。

 もちろん、「歴史から学ぶ」ということはあります。失敗を繰り返さないとか、ローマの衰退から現代の似たところを見出して、「では世の中はこのように変化していくだろう」という予測をすることは必要です。しかし、こと“稼ぐオフィス”を創ろうと思うなら、真似っこはダメです。

 あなたの会社独自の仕組みが必要です。他社の真似ではない、創造性のある発想から “稼ぐオフィス”を生み出せるよう、コンサルタントに相談しましょう。
 外観からオフィスを考えるのではなく、内面から変革できるよう熟慮して、あなたの創り上げた「オフィス戦略方針書」から“オフィスのプロ”に依頼して下さい。

 そうすれば、彼らが「あなたの方針をカタチに変換してくれる」でしょう

あなたは、豊かな発想力で独自の仕組みをつくり“稼ぐオフィス”を創造しますか?
それとも、創造的真似のきれいなオフィスをつくることにお金をかけますか?」