“稼ぐオフィス”には、
優先客のためだけの場所があり、
“稼がないオフィス”は
すべてを呼び込もうとして躍起になる
今回は<自社にとっての優先客と劣後客>について考察します。
「自社オフィスに、優良顧客を呼び込んで商談する」のが“稼ぐ営業オフィス”です。そのためには、優良顧客を厳選しなければなりません。
ではどのような方法で顧客を選別したら良いでしょう?その具体的なやり方を取り上げます。
どんな会社であっても、必ずお客様は存在します。
会社の継続年数にもよりますが、長い付き合いから、単発まで実に様々です。「サービスをすべてのお客様へ!」と言っている会社もありますが、それは「中途半端なサービスをしている会社です!」と公言しているのと同じです。
やはり、いい意味での区別、差別を決めて、社員達を集中させてあげることが、良いサービスにつながります。
「優先客」とはまさに優良顧客のことです。
付き合いが長い短いは別として、あなたの会社と継続して取引をして下さる顧客。
こちらの説明が筋の通ったものであれば、価格にケチをつけない顧客。他の取引先などを紹介してくださる顧客といった、ありがたいお客様のことです。
対して「劣後客」とは、単発だったり、過去に取引はあったものの、現在はほとんど取引のない顧客。また、トラブルや、値引きを迫ってくる、厄介な顧客等のことです。
顧客は平等に扱う必要がありますが、公平の観点で考えると、優良と不良は分けるべきなのです。
優良な顧客を優先し、不良客は劣後させ、あるいは切るべきことを厭わないことが重要です。不良と言うと語弊があるので、株のように劣後という表現にします。
例えばある会社では、Aランク~Eランクというように、顧客リストにランク付けをして、営業マンが訪問する頻度や、売価の違いといった差別化を図っています。
良い意味での区別といった事です。システムにも連動させて、取引開始日から取引終了日までを、時系列で記録しているところもあります。
“稼がないオフィス”にも顧客リストはあります。
住所・電話番号から始まり、代表者氏名・設立年月日、担当者名から趣味まで、特に関係のない項目まで載せています。このリストの一番ダメな点は、すべての顧客を一覧表にしているところです。また不用項目が多すぎて使いにくく、逆に必要な項目がないのです。
例えて言うなら決算書のようなものです。取引実績から、数字の傾向を把握・分析するためには有効ですが、ある顧客が、将来も自社に利益をもたらす可能性を、ここからは読み取ることができません。飽くまでも過去の実績に基づく予想でしかないからです。これでは、ある程度は用を足しますが、それだけでは足りません。
何が足りないのでしょう?
それは、顧客ごとの生涯価値が反映されていない点です。
顧客の将来性と、自社との取引を継続させて、将来の利益を分かち合えるか、を見通すために必要な項目です。これは簡単なことではありませんが、会社にとっては重要な課題です。
“稼ぐ営業オフィス”には、この課題を満たす、顧客リストがあります。
そして、もっとシンプルかつ有効なツールです。
まず、顧客ごとの生涯価値を割り出して、「優先客・劣後客」に2分します。
とはいっても、Aランク、Bランク・・・と細分化するのではありません。このリストの目的は、顧客を定期的に招待するためのものです。決定した優先客のみに焦点を絞り込んで、この顧客の喜ぶことだけを商談化します。
では、どのように作成できるでしょうか?
ある会社A社があります。(ここでは、「従業員数」の項目に絞り説明します。)
普通のリストであれば、従業員数200名と記録されているところを、組織ごとに細分化します。
営業部100名、マーケティング5名、製造部20名、企画開発5名、・・・のように、記録します。
更に細分化して、営業部には、(統括1名(専務)営業部長10名、営業課長10名、その他一般営業のように、責任者が何名いるのか、その氏名や直通の連絡先(メールアドレスや携帯番号)を詳細に載せます。このように作成します。
では、A社の組織や詳細を知るためには、どうしたら良いでしょう?
これはもうトップ会談しかないと言えます。
そして、具体的な目的を告げます。相手社長に納得してもらえれば、その会社内の情報を戴くことは難しくないと思います。
個人情報保護の問題が取り沙汰されていますが、きちんと目的について話し合い、了承のもとに得る分には、問題ないでしょう。
逆にプライベート情報を欲しがる会社がありますが、それこそ、プレゼントや接待で押してくる、問題につながる昭和営業です。あくまでもビジネス上の付き合いを徹底させます。
目的は、「A社の利益向上のための提案を、A社の担当部署の責任者へ提供する」ことなので、何も責任者の奥様への誕生日プレゼントは含みません。
このような、知らなくても良いプライベート情報から、昭和営業をしようとすると、「では、ご子息の大学入学を、知り合いに頼んでみます」なんて不正につながってしまうのです。
これらの情報を入手できたら、「機密保持契約」をしっかり締結して、外部に漏れないように、ここは慎重にオフィス対策をします。
そして、トップと幹部社員が戦術を練ります。
「A社のために何ができるのか」を社長と幹部が考えるのです。
そして、「この方向性で提案する」と決めた事柄を、一般社員たちに割り振ります。
割り振られた社員たちは、考え出した案のうちの一つを商談にまとめます。その後、A社の招待日をスケジュールに落とし込み、A社のためだけの招待作戦が開始されます。
招待日には、社内を案内し、担当者が商談しているときにも、全社員がA社からの訪問者をもてなします。
良い挨拶、飲み物の提供、お互いを知るためのちょっとした雑談など、社内を見学しているA社からの訪問者を全員で歓迎します。そして、城下町式のオフィスで、準備の整った商談をします。
どこも皆、自社の利益追求に忙しいので他社の利益など考える余裕はありません。それをここでは、担当者のみならず、一般社員までが考えてくれているのです。
訪問者は、是非ともこの商談を、取引先への販売促進に利用したいと思います。この招待会の出来事は、訪問者の印象に強く焼き付きます。
「付き合うならこの会社だな」こう思ってもらえれば招待会の半分は成功です。
また次回招待が控えています。違った切り口でいくつもの提案が生み出されるでしょう。
そしてやがては、A社の販売成績も向上します。
その暁には、あなたの会社に報いるべく、継続して取引をして下さる更なる優良顧客になります。ここまで来て初めて、“稼ぐ営業オフィス”の完成です。
但し注意点もあります。
リスト作りにおいても、商談化をするオフィスづくりにおいても、仕組みによって回す必要があります。闇雲にやってはいけません。
リストだけで招待しても、「商談化をするオフィスの仕掛け」をしなければ、うまく作用しないのです。これらを順序通りに行うことによって、“稼ぐ営業オフィス”にすることができるのです。
このやり方が、“稼ぐ営業オフィス”の「優先客・劣後客を分ける」という考え方です。
優先客だけの利益増大を第一に考えることに照準を合わせたサービスです。劣後客のことはひとまず置いておきます。
このことによって、利益を上げた優先客は、必ずやあなたの会社のファンになることでしょう。優先客がさらに優良になれば、新規の優良顧客が集まることにもなり、好循環をもたらします。
そして、顧客の明るい将来性と、取引継続により、将来の利益を見通す項目がリストに追加されます。
あなたのオフィスを優先客だけの商談の場にしますか?
すべての顧客を呼び込んで中途半端なサービスを提供しますか?