2019年第1回<価値あるコミュニケーション力を発揮する場>

“稼ぐオフィス”には
明確な方針書で場をつくる経営者がいる

“稼がないオフィス”は
納入事例を切り貼りした場づくりをする

 2019年1月1日
 新しい年を迎えました。本年もよろしくお願い致します。

  富士山上空からカメラが狙ったTV中継では、予定通り、6時49分に日が昇りましたが、地元では、近くを流れる江戸川河川敷に大勢の人たちが、雲から出でる一足遅い日の出を待ち侘びていました。10分ほど遅れて喘ぎ出た初日の出を、新鮮な気持ちで見ることができました。

 「今年もきっと良い出会いが待っている」と予感させる、うれしくなる体験でした。あなたにも良いことが起きる1年であると良いですね!

 さて、新年の第1回は<価値あるコミュニケーション力を発揮する場>について考察します。

 イノベーションを生み出す環境づくりには、「社員同士のコミュニケーションをアップさせるスペースが必要です!」と言われます。

  2018年秋に、家具メーカーのI社が京橋から日本橋へ移転しました。目的は、「働く喜びがあるオフィスをつくるお手伝いをするために、働き方を変革させる試みを、まず自社で実践してみる」ためのようです。

 そして、得られた知見をクライアントのオフィスに活かして、提案材料にするという狙いがあるようです。あなたも見学に行かれましたか?

 考え方はとっても良いと思います。でも、それだけでは、「価値あるコミュニケーション力を発揮する場」は出来ないと感じます。

 というのは、オフィス環境関連業者は一様に、クライアントへ訴求するための突破口として、「コミュニケーションだ」と叫びますが、果たして、採用した企業ではうまく機能しているのだろうか?という疑問です。

 私が過去に携わったプロジェクトを例にとるなら、95%は失敗だったと思っています。これは決して大袈裟に言っているのではなく、完成後の感想をお聞きしたからです。

  改装や移転をした後、「あのスペースはその後、有効に使用されていますか?」との質問に、「いやあ、提案通り作って良かったよ。社員同士の交流が深まって、意見も自由に交わせるようになったし、取引先への提案力も増して、売上げの向上に貢献しているんじゃないかな」というお言葉もありますが稀です。

 ほとんどが、「まあまあかな。社員達も何も文句言ってこないし」との返答。確かにヒアリングを経て作った場ですから、だれも業者に対して文句はないでしょう。しかし喜ばしくもない。

 だってその場を作った効果が現れているわけではないのですから。
 社員間のコミュニケーションが活性化する、パントリー、コピーコーナー。それが、一部の人しか使用していない、もったいない場になっています。

 なぜこのようになるのでしょうか?

 それは、提案する側も、それを受け入れる側も、その企業が目指すべき指針、方針の上辺にこだわってしまい、本質的な目的まで突っ込んで吟味していない為です。

  この本質的なことを探求するためには、「価値あるコミュニケーション力」が欠かせません。文章では簡単に書きましたが、これは非常に大切かつ難しい問題です

  経営者の考えを幹部に伝える。幹部がリーダー格の社員たちに伝える。リーダー格の社員たちがその他社員に伝える。この過程のどこかで、外部の者に提案を求めることが挟まれます。

 子供の頃に伝言ゲームをしましたが、この人づての曖昧さ、勝手な解釈と思い込みといった事柄は、本当に歯がゆく、じれったいものでした。これを克服しない限り、円滑なコミュニケーションは、いつまで経っても成り立ちません。

 ではどのように行えばよいのでしょう?

 まず、経営者ご自身が意図を明確にすることです。
 次に、経営者の意図を、幹部以下全員が理解し、共有できるようにすること、つまり指針として明文化した、「方針書」にまとめることです

 これは、先程の伝言ゲームであれば、最初に伝えようとする人が、2番目から最後の人まで全員に、「こういうことを伝えます!」と絵を見せるようなものです。

 単に耳から入る情報に頼るのではなく、目から入る情報と、共有する空間を同時に提供できます。こうすることによって、曖昧さを無くし、勝手な解釈と思い込みからも脱却できます。

 この「方針書」は、外部の者に伝えるツールとしても活躍します。手伝う側からすれば、経営者の意図というものは、最も欲しい情報です。これがうまく伝わることで、経営者の意図する形を中心にして、様々な仕掛けも提案でき、効率的だからです。

 「社長のお考えはどのようなものですか?」と総務部長に質問して、「多分、うちの社長はこんな感じに考えていると思う」ではなく、「社長は、方針書にお考えを明記されている。これがそうです」とはっきり伝えることができます。正にコミュニケーションツールといえるものです。

 今度は、社員同士がコミュニケーション力を向上させる場について考えてみましょう。

 あなたは、経済誌に紹介されるような、有名企業の納入例を参考にされていますか?家庭の居間やダイニングみたいな空間です。楽しそうな社員たちが働いていて、話し合いも弾んでいるように見えます。

  ではそれを参考にするのを止めて下さい。
  なぜなら、その企業の成功例など、あなたの会社でのコミュニケーション向上とは関係がないからです。

  価値あるコミュニケーション力は、「相手を気に掛けること」から生じます。そして、これを円滑に行うには、「相手が安心して話せる状況にすること」、つまり信頼関係が必要です

 この意味において、他社を真似る必要は、どこにも見当たりません。
  関係ないどころか「百害あって一利なし」になる可能性もあります。

 見て印象付けられたことによる先入観を拭えずに、イメージを引きずった他社の二番煎じになるからです。

 そうして出来上がるのが、利用頻度の低い、もったいない場です。ですから他社の真似をしないで済むように、納入例は見ないことです。

  コミュニケーション力の向上を、あなたが求めている理由は何ですか?

 社員達が仲良しになるようにするためですか?

 いいえ、各々が持っている能力を他に波及させて、イノベーションを起こしたいからです。違いますか?

 そのような目的があるなら、あなたの会社独自の仕組みを考え、仕掛けない限り、コミュニケーションの活性化は期待できません。

 現代は、呑ミュニケーションも少なくなり、互いを知る機会が減っています。それぞれが干渉されたくない、特定の人々とのみ、繋がっていたいと考える風潮があります。

 これを払拭する仕掛けをオフィスに取り入れて、互いを知り、「相手を気に掛けること」から始めなければなりません。そして「相手が安心して話せる状況にすること」を目標に、コミュニケーション力を育む場を、意図的に設ける必要があるのです

 そこまで準備できれば、オフィス環境関連業者の勧めるモノを選択して、ふさわしい場に配置する事ができるでしょう。

 そして2019年は、価値あるコミュニケーション力を発揮して、“稼ぐオフィス”を創りましょう!

 あなたは、コミュニケーション力を向上させる、仕組みのある場を提供するために、方針を明確にしておられますか?
 価値あるコミュニケーション力を育む場を設けていますか?