“稼ぐオフィス”には、
均一化されたサービスと儲かる仕組みがあり、
“稼がないオフィス”は、
社員の努力もむなし,尽くし損に終わる
今回は<顧客が感動するサービスとホスピタリティとは>を考えてみましょう。
「お客様に喜ばれるサービス」を提供することが当たり前の世の中ですが、「顧客が喜ぶサービス」では飽き足らず、「顧客が感動するサービス」をするように叫ばれています。
このような標語を見かけるたびに、「なんか違うな」と違和感を覚えるのは私だけでしょうか?
あなたは、社員にどんなサービスを提供するように求めておられますか?
一般的に「サービス」とは「相手のために気を配って尽くすこと」、「ホスピタリティ」とは「訪問者を丁重にもてなすこと」、という意味で使われます。
「もてなす」はこの場合、「心を込めて客を待遇する」に近いニュアンスになります。
本などで紹介されている好例は、ホテルのザ・リッツ・カールトンです。
社員一人ひとりが、「クレド」という基本心得を書いたカードを身に着け、常にお客様へ最善と思われるサービスを心掛けています。
この会社の姿勢は大変立派で、サービスをおもてなしにする仕組みがあります。実践したいと思っていた時期もありました。それは営業マンをしていた時期です。属人的営業でしたので、参考になりました。
しかし今では、考え方を変えています。最大のメリットである、「個人が個人の必要を満たすために行動する」ということが、「会社組織としての仕組み化」をする上で最大のデメリットになると気づいたからです。
個人ごとの必要を満たすことー「カスタマイズされたサービス」という行為はつまり、均一ではないということです。
仕組みというものは、「誰がやっても均一」に出来なければなりません。操作方法や設定値を、サービス提供者側が使いやすいように変えることはいけません。この部分でどうしても相容れないものとなってしまうのです。
BtoCあるいはCtoCの商売であれば、均一でなくても何ら問題はありません。「カスタマイズされたサービス」の方が有効な場合もあります。しかし、BtoBは全く別物です。
クライアント企業はいつも変わらぬサービスを求めます。
BtoCではありますが、ひとつの例を上げましょう。
営業マンAとBがいる車のディーラーがあるとします。
修理のために、お客様が運転して来店されました。営業マンAさんは受付にスタンバイして、お客様をお迎えし、修理時間待つ間に、お客様が退屈しないような配慮をサービスします。
そして、「では、お寛ぎください」と中座して、外出してしまいました。お客様はそれでも、きちんと出迎え接客をしてくれたAさんのサービスに満足しました。
後日、同じお客様がまた修理のために来店されました。担当者のAさんは外出中のため、代打Bさんが応対することになっています。
Bさんは、お客様を受付で待つのではなく、路面でお待ちして、お客様が入店しやすいように、一番近い駐車スペースに誘導しました。これにはお客様も「いや気が利くな」とうれしく思います。
もちろん修理の待ち時間の気配りも忘れず、修理完了後もそれは良いものでした。駐車場から車の誘導をして、通りの車の流れを見ながら、安全に公道に出れるよう誘導してくれたのです。
「こんなサービスは初めてだ」とお客様も感動を覚えながら帰ったのでした。
しばらくして、別の用事でお客様が来店されました。元々の担当者Aさんが対応します。先回同様、Aさんが良いと思うサービスをしました。
ところが今回は、お客様は苛立ちます。先回は満足したはずの、Aさんのサービスが気に入らないのです。修理自体が悪かったわけでも、値段が高かったわけでもないのにです。
Aさんのサービスが気に入らないのは、どうしてでしょうか?
ここに、均一ではないサービスの落とし穴があるのです。
AさんもBさんも良いサービスを個人的にしました。しかしお客様の立場からすると、Bさんのサービスが印象に残り、これが「当たり前のサービス」になってしまったのです。
あとからAさんの行ったサービスは劣ったように思えました。つまり陳腐化してしまったのです。これではAさんBさんのサービスは尽くし損と言えます。
別の例で考えてみましょう。今度は床屋さんです。(これもBtoCですが)
開店したばかりの主人は、「自分が客ならこうして欲しいな」というサービスを考えます。
待ち時間に雑誌だけ置くのではなく、コーヒーを淹れて差し上げたら、それも上質の豆を使ったオリジナルブレンドを。
そしてカット中にリラックスして頂けるように、BGMは心地よい、自然の風を感じるような音楽を流し、「お客様の髪の癖はこうですので、それに応じたカットとはこういうものです」と個人個人にアドバイスを行う、まるで専属のヘアーコンサルタントのようなサービスで、他店との差別化を考えます。
他店よりも、一つ上の上質を狙ったホスピタリティです。
しかし、時経つうちに変化します。こだわりコーヒーは、こっちの方が健康的だからと、ほうじ茶に、BGMは主人好みのロックに変更し、カットのアドバイスは、「流行はこんな髪型ですよ」と、自分が得意とするカットを勧めます。
今でもサービスは提供しています。お茶も淹れるし、BGMも流す、アドバイスもしています。ただ「お客様に喜ばれたサービス」や「ホスピタリティ」が、無くなってしまったのです。
どちらの例も同じことです。サービスというものが、「仕組み化」つまり、「均一化」されずに、提供者の都合で勝手に変えられていることです。BtoC、CtoCでもこのような状況であれば、BtoBはなおさらです。
本物のサービスとは、「相手(顧客)のために、どのような気配りをし、何をするのかを事前に決め、いつでも、誰が応対しても、毎度変わる事のないものを提供すること」です。
また、ホスピタリティとは、購買行為をストーリーに見立て、「日頃のサービスに、ひとつ上の心遣いを追加して、ストーリーの最後に“良かった”と顧客が思える結末を演出すること」なのです。
そうすることによって、途中間違いや手違いがあったとしても、終わり良ければすべて良し、ハッピーエンドで、この気分をまた味わいたいと感動するのです。
顧客目線で考える経営者は、このような本物のサービスやホスピタリティに注目します。そして、「仕組み化」させるために、素早く行動に移されます。
そしてこれをオフィスに当てはめて、“稼ぐオフィス”に変化させるのです。
来社する取引先が、この会社は、応対する社員によっていつも違うなと、戸惑わないように、社内サービスの「仕組み化」に取り組みます。
「いつもお世話になっています」と慣用句がありますが、これを、「いつも、誰でもが、良いサービスを提供しております」というメッセージとして、自社オフィスから醸し出します。
そしてプラスα(ひとつ上の心遣い)で、来社体験の最後に「良かった」と取引先が思える結末を、演出する仕掛けを準備するのです。
あなたの会社のサービスは均一化されていますか?
稼ぐ仕組みで、ホスピタリティをオフィスに仕掛けていますか?