“稼ぐオフィス”には
心に働きかける方針があり
“稼がないオフィス”には
心の内に働きかける配慮がない
今回は<一流会社のオフィスには組織力を高める方針がある>です。
社員たちの世代間ギャップでコミュニケーションが低下していると聞きます。また独裁や合議制をとる会社がありますが、経営者のどの様な行動が社員たちの心に火をつけるのか、社員たちの世代背景から考察します。
あなたの会社では、団塊の世代がリタイアしてから、組織力は変化しましたか?
彼らの働きは、良くも悪くも他の世代を上回っていました。一番は何と言ってもコミュニケーション能力でしょう。
組織のどの位置にいても、同期、先輩、後輩の優劣はあっても、根回しが上手で、団結力が秀でていました。やはり数の力、引退されると良かれ悪しかれ影響は出ると思います。
現在の社員構成は、年配者(定年前からバブル期入社組)若手(新人から30代)そして、その中間層が、「仕事仲間」になっています。
皆異なった背景を持ち、価値観もバラバラです。コミュニケーションギャップがあると言われて久しいですが、何が問題なのでしょう?
根本的な問題は、「育った環境」の違いです。
団塊の世代は皆同じような環境で育った経緯があります。貧乏でも、周りに同じような境遇の友達がごろごろいて、気になりません。日本の経済が右肩上がりになっていく中、その影響下に皆同じように置かれ、「一億総中流」なんて言われていました。皆同じような生活なので、組織の中での考え方も似てきます。
また、いま50代前半の人々はバブル期入社組を含む、昭和後半の幸せな世代を生きてきました。その少し前は「3丁目の夕日世代」つまり、高度成長時代で日本中が湧いていた希望ある子供の世代です。
彼らが入社した頃は、先輩たちに親切に指導された経験を持ちます。と言っても、時には横っ面を張られたり、数日口もきいてもらえなかったりと、厳しさにも耐えながら鍛えられてきました。
この方法が良かったとは言いませんが、この世代の近親は大東亜戦争を生きた世代で、食べるものや住まうところに困窮し、身内を戦争で亡くし、ひもじい生活をした人が多かったはずです。
この頃の親たちに育てられた人々は、モノの無い厳しい状況で子供時代を過ごしてきました。「自分にして欲しいことはみな同じように他の人にもしなさい」と、イエス・キリストは教えられましたが、その裏返しが、「自分がされたようにしか人にもできない」ということなのです。
この厳しい生活を強いられた人たちに育てられた、バブル期入社組までの古き良き昭和の人たちが現在、ハラスメントの問題も起こす「老害」と呼ばれています。
では、若手たちと中間層についてはどうでしょう?
果たして馬鹿にする昭和世代と違って素晴らしいでしょうか?
世界的に見ても、ある時が転換点となって、時代や世相が大転換することがあります。日本においては、1987年あたりがその転換点であったのではないかと感じます。
1987年生まれは「バブル」と共に生まれ、中学3年生の時には「ゆとり教育」が始まり、現在は「ゆとり世代」と揶揄されていますが、実際には、ゆとり教育の恩恵(?)には預かってはいません。
ゆとり世代まんまん中はそれより後の平成生まれからなのです。このようなことがあるから、昭和62年生まれと平成年生まれというごく短い期間でさえ性格、性質が違ってくるのです。
年配者は、彼らを一括りにしたがりますが、彼らにもプライドがあります。「いいよなゆとりは」と言われて面白いわけがないのです。
「よく言うよ。私たちは悪いとこだけ昭和の人間。なにさ自分たちはバブルの恩恵で、三流大学出でも、大学に行っていない人さえも、難なく就職させてもらったくせに。給料も分不相応に最初からたんまりもらえて、順調に出世してポストも与えられて。あんたたちの負の遺産を私たちの世代に先送りして。」と次から次へと文句があふれ出ます。
彼らは現在30代になり、本来は中堅として会社の将来を見据えて、一層の奮起をしなけらばならない人たちです。丁度自分たちの親が現在の年寄り世代に当たります。親に対する不満も手伝って、その世代ひっくるめての怒りに燃えているのです。
もっと哀れなのは中間層。年配者世代と若手に挟まれ、仕事面と感情的板挟みにあっています。就職氷河期に就職を勝ち取った彼らは当初「勝ち組」でした。
しかし、この世代は、果たして企業に就職する道が良かったのか、起業してベンチャー企業で活躍できる可能性に賭けた方が良かったのか、と自己の選択に疑いを持っています。
親が敷いたレールに疑いもなく乗った過去の世代とは違い、情報量が多く、グローバルな環境にいた彼らは、選択肢で惑わされ、情報の洪水に溺れそうなのです。
「勝ち組」だったはずの彼らもまた被害者なのです。
そんな中、年配者世代は自分たちの定年後の生活や、会社にしがみつくことに専念して、若手や中間層の世代には関心がないように見えます。
一括りにできないこのような背景であれば、当然コミュニケーションが円滑であるはずがないでしょう。根本的な問題である、「育った環境」の違いから生じる世代間の垣根を取り去ることは土台無理なのです。
では、解決のための鍵となるのは、何でしょうか。
今はやりのオフィスのカタチにすることで解決できますか?
流行りのオフィスでは、セクショナリズムを無くすとか、年配者と若者を交わらせようとしたり、逆に分離するといった、配置に腐心して、「社員が共にくつろげるコーナー」「社員交流のイベント開催できるコーナー」「社員同士が意見交換できるインフラ整備」などに力を入れています。
しかし、それだけで世代間の垣根を超えることはできるでしょうか?
いいえ、表面上のカタチだけ変えても解決できません。ただの配置の問題ではなく、働く人たちの心が関係しているからです。
人の心には、欲求、考え、傾向、態度、能力、動機、目標といった要素があるそうです。
「もっとキャリアアップして、高給を貰いたい」
「世のため人のために仕事をしたいものだ」
「良いアイデアを人にも分かちたい」
「礼節を表したい」
「特技を活かして仕事をしたい」
「会社に貢献して同僚と皆で幸せになりたい」・・・
一人ひとり心の内は沢山の想いを持っています。これらを叶えてくれる環境を自分の会社の経営者に要求しているのです。
ですから、賢い経営者は半ば強制的に組織を形づくることが肝要です。「社員たちのコミュニケーションを円滑にするためにはどんなコーナーが必要だろうか?」などと、合議制をとって、いちいち社員の意見を採り入れようとしている経営者にお会いしますが、「あなたご自身はどのようにお考えですか?」と聞きたくなります。
「うまくいかなかったときの言い逃れのためですか?」上場企業ではコンプライアンスの問題もありますが、中小企業でしかも創業者であれば、責任独裁で結構ではないですか。
決して人のせいにはせず、ご自身で決断し、皆に表明して、経営責任をとる覚悟を持っている。こういう経営者がする独裁は社員たちの心に訴えます。
そして、やる気のある社員はついてきます。優れた経営者が明確なビジョンと経営目標を立てて、それを完遂するために、強力な組織を構築します。強い組織力を持った企業は、その目的に沿ったオフィスを創ります。
そのために、オフィス方針が必須になるのです。そして、オフィス方針を、組織力を最大限活かした“稼ぐオフィス”として設計した最適空間を実現し、やる気のある組織で稼ぐオフィスが動き出します。
私は、一流企業のオフィスとは、「おもてなしを原則として考え行動できる場」だと考えています。
「おもてなし」を辞書で引くと、「表裏がない心でお客様を迎える」というのが一般的です。
しかし「モノを持って成し遂げる」「人や物事に対する扱い、取計らい、処置」つまり「自分の思うとおりに相手を操る」という意味合いもあります。
ここにおいても、経営者が取計らい、半ば強制的に組織づくりを処置する事で、やる気のある個々人が考え行動する場が生まれるのです。
「お客様本位の目標」「社員一丸となってやっていこうという大義名分」「我が社と組んで新しい価値を提供しましょうという宣伝」「公正さを示した利益配分」こうしたことが、外部からも見て取れる場が、責任感ある経営者の、稼ぐ組織力のあるオフィスです。
そして経営者が指し示す方向性こそ、世代間のギャップを埋める明確な方法なのです。
目ざとい経営者は、目標に社員たちの心を向かわせるために、オフィス方針をつくるのです。あなにもこのような方針がつくれます。
あなたの会社には世代間のコミュニケーションギャップがありますか?
それを乗り越える明確なオフィス方針がありますか?