第16回<自社に採用するべき「働き方改革」とは

“稼ぐオフィス”には、
時間内で終了させる仕組みがあり、

“稼がないオフィス”は
表面上の働き方を変えて自滅する

    今回は<自社に採用するべき「働き方改革」とは>です。

 第4次安倍内閣で2018年4月6日の第196回国会に提出され、同年6月29日の参議院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した、政府肝入りの法律改正です。

   正確には、働き方改革関連法(正式名称「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」)と言い、日本の8つの労働法の改正を行うためのものです。主に3つの柱で構成されています。

第1に、働き方改革の総合的かつ継続的な推進
第2に、長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現等
第3は、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保

 要は、誰かに重荷を負わせて、長時間労働させ、賃金も支払わないのはいけませんよ。働きに見合った賃金を分け隔てなく支払なさい、と企業に強制する法律です。

 目標としているのは、長時間残業を減らし労働生産性を高めることです

 あなたはこの政策をどの様に受け止めておられますか?

 ある調査では、このことで経営に支障が出る、あるいは支障がありそうと回答したのは5割だったそうです。

 そのなかでは「時間外労働の上限規制」「年次有給休暇取得の義務化」「同一労働同一賃金の義務化」が問題でした。

 企業側からは「時間外労働の代わりに、サービス残業が増える」とか、有休取得の義務化と同一労働同一賃金の義務化については、「休みの人がいる分、補う人の働く時間が長くなって、結局支払う賃金が上がる」とのことです。

 また、優秀な社員から不満が出るとか、残業の上限を定めたら生産性が下がるとか、その分人を増やせば人件費が上がり、人件費で取られた費用を賞与から引けば、その他の社員の士気に影響が出るなど。悲観論ばかりが目立ちます。

 「長時間労働をやめよう」というスローガンのもと、働き方改革が進められていますが、日本企業の残業体質はなかなか無くなりません。それはなぜでしょう。

 まず第一に言えることは、優秀な人に業務が集中するからです。普通の人は残業します。業務が終わらないからです。

 出来る人は定時に帰ります。終わらない業務は、風呂敷で持ち帰ります。

 優秀な人は残業します。そして次の朝も早出します。業務が多すぎるからです。

 第二として、仕事を部下に振る上司も、「率先垂範」の掛け声のもと、自分で仕事を抱え込み残業します。すると部下たちは帰りにくくなります。この同調圧力が働くと、仕方なく残業します。

 そして極めつけは、ランニング・ハイになるように、ザンギョウ・ハイになることだと思います。

 前職で、移転案件の新規顧客を開拓したことがありました。この担当者は、夜遅くにも問合せ電話をかけてくる人でした。私もその頃は、別案件の資料作成などで徹夜残業していました。翌朝の5時くらいまで作業をして、社長室のソファや、梱包用の段ボールを床に敷いて、新聞紙で身をくるんで仮眠をとったこともあります。

 そんな時でしたから、深夜の電話のやり取りは苦ではなかったのですが、競合数社の中から私を選んでくださった理由が、私が「深夜でも対応する、熱心な人だったから」でした。なんと恐ろしいことでしょう!

 こうした脳内モルヒネの力は、本人がやる気の時には効果的かもしれません。しかし、一度やる気が失せてしまった時、例えば昇進の機会が潰えたり、掲げさせられた高い目標数字を達成できなかったりした時に、心の病になるという逆効果にもなりかねません。

 あなたは社員の残業の実態を把握されていますか?

 「年次有給休暇取得の義務化」や「同一労働同一賃金の義務化」についてはどうでしょう?

 属人的な会社では、「その人でないと分からない、行えない業務」があります。仕事を抱えている人は、休むことが許されません。同一労働なんてありえません。能力差によって仕事を割り振っていることになっていますから、同一賃金にもできません。

 こうした“稼がないオフィス”は根本原因を考えずに、表面だけ働き方を変えています。

「ノー残業デー」

「残業申告制」

「定時PC強制シャットダウン」

「自動オフィス消灯」などの施策をとにかく行ないます。

 世の中の流れがそうなっているから、我が社も続け!とばかりに、今までの働き方の延長線上でやってしまいます。

 でも、こうした強制力だけで改革できるでしょうか?

 それとは対照的に“稼ぐオフィス”は、時間内で終了させるための働かせ方を考えます。そして、規則ではなく、原則である社風や、仕組みでひとつひとつ緩和していくのです。

 「残業させない」という解決策を決めるよりも先に、現状を把握して、「なぜ残業しなくてはならないのだろう」と、根本的な問題を見定め、改めることから始めます。

 「家族的な会社」や「一体感のある会社」と言う社風は両刃の剣です。間違った解釈をすれば、「皆が仕事しているから帰れない。人事権のある上司の手前、一生懸命仕事して見せる。仲間の社員たちのためにも、ここはもうひと踏ん張り!」となります。

 しかし、見方を変えれば、「仲間と共に楽しく稼ぎたい!しかし、残業までしたくない。他の人達が早く帰るようにできないか。皆の仕事を平準化するにはどうしたら良いか。」と、同じ社風でも前向きで建設的に考え、行動するようになります。

 私が主張するのは、ただ表面上の働き方を変えるのではなく、「原則を定め、社風とともに、働かせ方を変える仕組みをつくることが出来るかどうかが、長時間労働させずに儲けを出す鍵である」ということです

 そのように考えれば、根本的な問題を見定めることができます。そして、経営者であるあなたが、仕組みによって改めた「働かせ方」をオフィスに取り入れるのです。

 これは、社外からは見えない仕組みです。他社の真似事の、表面上の規則ではないからです。

 そして、重度のストレスや過労から、心の病にかかることなく、元気な社員達が働ける空間づくりをします。社員に長時間労働を強いたりせず、仕組みで回るようにすれば恐れることはないのです。

 そもそも儲かっていない会社が長時間労働を強いるのであって、儲かる会社になれば、問題のほとんどは解決出来てしまいます

 こうすることによって、長時間残業を減らし労働生産性を高めることができるのです。

あなたのオフィスは、「働き方改革」をしていますか?
それとも働かせ方を変える仕組みをつくっていますか?