第19回<集中させるためにやめるべきこと>

“稼ぐオフィス”は、
より多くを得るためにやめるべきことを決めている

“稼がないオフィス”は、
多くのことに手を出してより集中させられない

 「選択と集中」や「やるべきことに集中する」と叫ぶ経営者にお会いすることがあります。

 経営方針や経営目標にも、たくさんのやるべき項目が並んでいますが、あれもこれも掲げて、果たしてやり遂げることができるのでしょうか?

今回は<集中させるためにやめるべきこと>について考察します。

 やめるべきこととして、どんなことが挙げられますか?

1「重要ではなく、緊急でもないこと」
2「重要ではあるが、緊急ではないこと」
3「重要ではないが、緊急ではあること」
4「重要であり、かつ緊急でもあること」

 これらの事柄がある場合、優先順位をつけますが、一番から四番まで並べますか?
 それとも重要かつ緊急なことに絞って、あとは捨てられますか?

 “稼がないオフィス”は、最適化のためと称して、多くのことに手を出して、あれもこれも社員にさせて、混乱させています。

 複合機の用紙補充やトナー交換をはじめ、ゴミ当番、備品管理、トイレ掃除、蛍光灯の交換作業など、オフィスでは雑事が多いことは事実です。

 DIYが好きな社員も中にはいるので、修理のための道具を経費で買ったり、自分たちでなんでも行って、外部への支払いを削減できたと自慢している人たちもいます。

 しかし、それらをしている時間や労力は、本業に活かすべきではないですか?

 例えば、今は複合機やプリンターも台数を減らして1台を大勢で共用することも増えました。前の使用者が、用紙やトナー残量が少ないことに気づきながら放置しています。自分のときに交換作業が発生し、補充・交換をしてやっと使えます。

 シュレッダも袋が一杯です。袋を交換し、再生用のゴミ捨て場に持っていかなければなりません。サッと片づけられる作業に手間取りイライラします。

 小さな不満は積み重なると恨みや妬みを引き起こします。こういう人々が働くオフィスは人間関係がギスギスしています。

 これに対して、“稼ぐオフィス”は、最適化するためにやめるべきことを決めています。

 先程の質問も、結論から言えば、一点集中で、あとはバッサリ切り捨てです。
 そしてやるべきことに集中できるように、オフィスを最適化します。

 では、最適化するとはどのようにすることでしょうか?

 それは、オフィス機能に省力便利性があるようにすることです。

 省力便利性を追求したオフィスとは、いつでもだれでもが、使いたいときに必要なだけ、利用できる設備や備品を揃えます。

日頃から整理整頓をして、道具の手入れを怠らず、在庫管理を徹底します。これを行うために必要なこととして、個人の心掛けがあります。

 「自分が使う立場ならこうして欲しい」という思いをもって備品を大事に扱います。

 また、つまらないことで人間関係がギスギスしないように、管理業務をアウトソーシングすることです。

 オフィス規模にもよりますが、外部委託の有効な面に注目します。仕事以外の煩わしさからの解放です。これは非常に有益です。

 些末な業務を、高給取りの大事な社員にやらせるべきではありません。社員には、商談づくり、製品・サービスを生み出し、組み合わせて商品にして、拡販する企画や仕掛けづくり、顧客へ提案する仕事に集中させたくないですか?

 安全面でも問題です。例として蛍光灯の交換作業を挙げますが、高いところにありますので脚立を使用します。

 本来脚立は一番上の天板面に乗ってはいけません。2段目に足を乗せて跨ぐカタチにします。こうすることでバランスを崩さないようにするのです。

 ところが、知識のない小柄な社員たちは、平気で天板面に両足で乗ります。もっと危険なのは、回転チェアの座面に両足を乗せている例です。デスクの上に乗って作業しているツワモノもいます。

 転落したらどうなりますか?軽くて打撲、打ち所が悪ければ死に至ります。こんな危険な作業を社員にさせて良いはずがありません。

 このように、社員の不満や安全面に関する費用対効果を考えた時、どちらがお得ですか?

 本業で儲けを出し続ける社員達が、仕組みを回すことと、とるに足りない業務をする時間の価値は同じではないのです。結果的にどちらがお得かはすぐに分かることです。

 他にもやめるべきことはあります。

「文具の通販」や「置き菓子」の類いです。

 気軽に購入できるため、よく考えもせず、ただ習慣で買い続けるという中毒性があります。

 また、「週刊誌」や「情報誌」の類いもそうです。

 雑誌専用の収納庫に飾られているのを見かけますが、顧客向けに揃える訳でもないのなら、誰も読まず、場所塞ぎになるだけでなく、各誌の最新号を正面に、バックナンバーを庫内に整理する労力も無駄になります。

 そして、特に緊急でも重要でもない「定例会議」という時間泥棒もあります。会議は緊急であったり、重要な議題があるからこそ、集って話し合う場ではないでしょうか?

 これらを捨て去ることができれば、お金、時間、労力、気力、を別のことに活かすことができます。

 別にコストカットが目的ではなく、余分な贅肉を落とすダイエットのようなものです。

 ダイエットは、ただ体重を落とすことが目的ではなく、ぜい肉を落とすことによって得られる効果として、動きやすくなったり、気分が晴れたり、意欲的に行動できるようになる、といった肉体的・精神的な最適化を狙います。

 同じように、やめることを決めてオフィスを最適化すると、意欲的に働いてもらえるようになります。

 顧客を気遣うことに集中することで、顧客に儲けさせるアイデアが数多く生まれて、顧客に喜んでもらえ、巡り巡って自社の利益につながります。

 やめるべきこととは、やるべきことに集中することの裏返しです。また、やるべきことが明確になっていることで本気度に違いが出ます。

 例えるなら、選挙の公約に似てるかもしれません。主義主張が明確になればなるほど、選出される確率が上がります。本気で変化をさせてくれるのではないかと期待できます。つまりやめるべきこととやるべきことは、表裏一体なのです。

 何かを得るためには、何かを捨てなければなりません。
より多くのことを捨てれば、時間と労力をより多く得ることになります

あなたのオフィスでは、社員が集中できる最適化を図っていますか?
それとも煩雑な業務で混乱させていますか?