第24回<社員の帰属意識を高める方法>

“稼ぐオフィス”は、
イベントを社員の継続的成長のために企画する、

“稼がないオフィス”は、
一過性の一大イベントで自己満足する

今回は<社員の帰属意識を高める方法>について考察したいと思います。
 前回までで、“稼ぐオフィス”の3大戦略の概要をみてきました。

 これらの戦略を実現するためには社内外の協力者が必要です。

 まずは社員たちの協力から考えましょう。

 愛社精神とまで言わなくても、仕事への愛着や自分の働いているオフィスへの好感度は、社員のモチベーションアップに止まらず、利害関係人全体に影響を及ぼします。

 多様化しているのは、顧客が求める製品・サービスだけではなく、働く人にも言えます。多品種小ロットの多様な要望だからこそ、臨機応変に対応する社員一人ひとりの働きが求められます。

 しかし、自分一人くらい大丈夫という甘えと、組織の一員である自覚のなさとが影響し、競合とのちょっとした差になったりします。どうしても意識改革が必要です。

 自社への帰属意識を育むには、「自分の働いている会社に親しみをもって、誇りある仕事をお客様に提供し、一緒に働く仲間とともに成長したい」という共感や一体感が大事なポイントになります。

 ではどんな方法があるでしょう?

 自社に対する帰属意識を高める方法として、「○○周年記念行事」を行う企業もありますが、心機一転の効果を狙って、「オフィス移転行事」を実施する企業もあります。またこの2つをセットにして相乗効果を狙う企業もあります。

「○○周年記念行事」と「オフィス移転行事」の類似点は、その目的です。

「企業理念やビジョン、ミッションを社内に浸透させたい」

「企業ブランドの見直しや新規事業への挑戦を社外に発信したい」

そして「社内を活性化させたい」といったものです。

 見落としている効果として、このプロジェクトを成功させれば間違いなく儲けにつながるイベントであるということです。

 これらをきっかけに、何かを仕掛けていけば、良い方向へ変化していきます。
 相違点は、その頻度と定期性で、記念行事は10年に1度や5年に1度、頑張れば1年に1度実施できます。

 しかしオフィス移転行事はそのように何度も実施できません。滅多にしないオフィス移転ですが、どうしたら成功させることができるでしょうか?

 移転計画時に目的を明確にして、事前から事後までのロードマップを作成しておけば、移転後も定期性を保ちながら、毎週、毎月の招待イベントを打ち続ける事ができます。

 そして、社員個人が自分から顧客をもてなすことで、そのご褒美としてお客様が自社に利益を与えて下さり、信頼関係が積み重なることで、自社も存続しているということを、社員一人ひとりが「自分ごと」として捉えて、現状の感謝と共に、将来のお役立ちを約束することを発信していくことです

 では、「自分ごと」として考えるようにするにはどうしたら良いでしょう?

 “稼がないオフィス”は、この視点が欠如しているため成功することはありません。目的が「自社のため」になっているので、経営層が一部の社員と密室でコソコソと策定したイベントを、他の社員に押し付けるカタチで実施します。

 押し付けられる社員たちは、目的を「自分ごと」として捉えることはできません。「うちの上の人間は、なにをやらせようとしているのだろう?」「移転するらしいけど、面倒くさいな」「そんな金を使うなら、給料をよくしてほしいのに」と疑心暗鬼になり、不信感をあらわにします。

 このように、自ら考え、行動しているわけではないので、一大イベントも一過性の儀式で終わってしまっています。

 何が最もいけないかと言えば、経営層の意図が社員に伝わらないことです。

 プロジェクトメンバーに選ばれなかった社員は、日和見になって、「まあ頑張ってください~」と他人事です。せっかく時間もお金もかけたのに実にもったいない話です。

 これに対して“稼ぐオフィス”は、社内外の継続的成長のための企画をします。目的は、「顧客のため」です。

 そしてこのイベントを通して、社員達への感謝と、将来への期待の機会にします。この経営層の意図を理解する社員に権限委譲して、その社員が他の社員をアサインするのを支援します。

 全社員の前で、「皆が豊かになるための移転であること」と「このプロジェクトを全員参加で行うための調整役任命」を宣言します。

 成功のカギを握るのは、この選抜社員の働きです。経営層は、方向性や方針をこの社員と共有しますが、細かな指示命令は発令せずに、彼が経営層の後ろ盾を得て行動していることを公にします。

 選抜された社員は、経営層の意図は心得ますが、やり方や方法、仕掛けは、仲間の社員達と相談します。

 現場で働く自分たちの意見を自由に出し合い、

「うちの会社に親しみをもってもらえるようにするにはどうしたら良いだろう?」

「お客様に喜ばれる仕事を提供するために何ができるだろう?」

「仲間とともに成長するためには何が必要だろうか?」

という社員たちの意見を取りまとめます。上からの目線や、指示にただ従うのではなく、社員一人ひとりが「自分ごと」として捉えることで、共感や一体感が強化されます。

 このように、選抜社員は他の社員を奮い立たせ、自分たちの意見も採用されているということを理解させることで、持てる以上のリーダーシップを発揮します。

 このようにして共感者を増やす仕組みを回すので、「オフィス移転」というイベントはたった一度ですが、事前と事後で、ある一定期間の啓蒙効果もあり、継続して意識改革の成果が得られます

 そして取りまとめを任じられた社員と、その協力社員との間にも、成功体験から自信が付き、ともに成長する事ができます。協働・共感から儲けにつながる新商談を、次々に生産できるオフィス機能になります。

 このような好循環によって社外へも「自分ごと」として発信できるようになります。こうして、継続的に社員全員の帰属意識を高めて、“稼ぐオフィス”にしていくのです。

あなたのオフィスは社員の帰属意識を高める仕組みを採用していますか?
オフィス移転を社員の継続的成長のために企画していますか?