第25回<社外への意識づけを強める方法>

“稼ぐオフィス”は、
スペースを顧客の成長のために設える、

“稼がないオフィス”は、
社員の満足度アップに苦慮する

今回は<社外への意識づけを強める方法>について知って戴きたいと思います。
 前回、<社員の帰属意識を高める方法>を考えました。“稼ぐオフィス”を実現するためには社内外の協力者が必要です。優良顧客や取引先を自社に招き入れて商談を行うというカタチですから、社員だけではなく、社外の人々の意識づけは大切な要素です。

 まず、一見関係なさそうな、社外の方々からの協力について考えてみましょう。

 移転に限らず、レイアウトを変更するときには、外部の作業員に移動の依頼をします。

 クライアントご自身には、荷物を段ボールに詰めてもらいます。レイアウト図面の現状と変更後を見比べながら作業員たちが什器と荷物を運んで設置します。簡単な席替えであれば、作業前日の夕方、業務終了間際に箱詰めをしています。

 この時にこの会社で働く人の人柄といいますか、人間性が出ます。事前に担当者から口頭や書面(あるいはメール)でも「手順」がアナウンスされています。「PCや電話機は離線して机上にまとめること」「片袖机の引き出しの中身を箱詰めすること」「荷物にはすべて行先ラベルを貼ること」。自席についてはこの3点だけのお願いです。なにも面倒なことは頼んでいません。

 それでも当日立ち合ってみると、「離線されていない」「袖机に書類や備品がそのまま」「行先ラベルを貼っていない」。ひどいときには、階の移動をする両袖机の引き出しに、荷物が入りっぱなしの上、ご丁寧に施錠までしている人もいました。

 わたしはクライアント担当者へ、「皆さんにお伝えください」というときは、一言添えるようにしています。「社外の人が運ぶのですから、分かり易いように、運びやすいように気遣い下されば大丈夫です」と。

 自分が運ぶなら、箱は軽めにしようとか、机上が片付いていないと運びにくいだろうな、とか、担当している田中さんは段取り大変だったろうから、少しでも楽になるように協力しよう、とかありますよね。このように他人を思いやることをする良い機会です。

 これが出来ない人は、気が利かない、想像力に欠ける人だと思います。もちろん日常業務が忙しく時間がないという方もいるでしょう。だったらなおさら、担当者への協力をしてあげるのが仲間です。こんなことで外部の顧客や取引先のことを親身に考える事ができるでしょうか?

 社外への意識づけを強めるには、想像力を働かせることが大切です

 社外の人である作業員たちをただの肉体労働者とみていますか?アルバイトの若者たちは定職のない者だと思われますか?

 彼らの中には、優れた才能を持った人たちが大勢います。空間把握力に優れた人や、物理、数学、計算力のある人たちが身を転じていたりするのです。大手ビール会社で営業マンをしていた人、造船会社で設計をしていた人、魚屋の跡取りだった人、会社役員だった人もいました。

 若手のバイト君たちも、一流大学に通いながら、土日しかバイトできないので生活費稼ぎのために、割のいい肉体労働を選んだと言っている子もいました。実に多彩で面白い人のあつまりです。

まるで世の中の縮図のようではないですか?

 彼らが連携して運んでくれるのです。先程書いた、

 ・階の移動をするのに、引き出しに荷物が入りっぱなしの上、ご丁寧に施錠までしている両袖机をどうやって運ぶか?
 ・間口70㎝しかない個室扉からどうやって80㎝角の応接椅子を運び出すか?
 ・8階から1階へ、どうやってエレベータに乗せられず、階段室も通らない、板面(2m40㎝×1m20㎝)もある大型テーブルを下ろすか?・・・

 その場でみんなで相談し、知恵を出し合って、いくつか方法があれば、どの方法が一番楽にできるかまで考えて解決していました。

 そんな彼らですからバカではありません。作業に来て、仕事ですから文句は言いませんが、やはり作業前に片付けられていて、清掃もしてあり、準備が整っている会社の変更作業であれば、「この会社いい会社だな」とか、バイトの若者であれば「自分もここで働きたいな」とか、友人にも話して、口コミで良い評判が広まる可能性だってあるのです。

 “作業ご苦労様”“ありがとうございます”なんてメモが机上に貼ってあったり、“お茶をどうぞ”なんてあったりしたら、まずファンになってくれます。そのように気遣いを示す会社は稀だからです。逆は言わずもがなです。

 知らないところで働いている、作業の人たちのことも思いやれる想像力があるなら、顧客や取引先の必要としていることを思い描くことも容易になっていくはずです

 “稼がないオフィス”は、「自社に目が向いている」ので、満足度調査で明らかになった社員の不平不満を真に受けて、「どうしたらみんなが満足するオフィス機能になるだろう?」と考えます。

 例えば、「震災後オフィスに水と食料が不足するので、オフィスコンビニを設置して欲しい」「コミュニケーションスペースが不足している」「テストキッチンが欲しい」・・・

 いくらでも要望が出てきます。「そのためには・・・」と、担当メンバーは時間と労力を注いで、優先順位をつけ、経営陣と相談して、できるところは実施します。

 ところが、つくってみれば、リフレッシュエリアには菓子の食べこぼしや、飲料の容器の放置。コミュニケーションスペースは社外との商談ではなく、社内の雑談での使用。テストキッチンの稼働率は上がらず、新製品もなかなか生まれない。

 必要だったのはテストキッチンではなく企画力の方だったなんてことも起こります。売上げにつながるわけでもなく、せっかくの投資も無駄になります。「みんなが満足するオフィス」を目指すと、みんな中途半端で不満が出てきます。このように社員の満足度アップに苦慮するだけです。

 “稼ぐオフィス”では、スペースを、最適空間とその他機能に分離して、顧客の成長のために「利他的VIP待遇」を考える社員達の働く場を設えます。

 社内の日常業務で、
「あの顧客の製品Aに、どんな付加価値をつけたらもっと販売促進できるだろう?」
「あの仕入先Bのサービスと、我が社のαを組み合わせて拡販できるようにならないか?」
「顧客Cの取引先Dが本当に必要としている製品とはなんだろう?」と考え、情報を収集・選択・加工して、招待時に情報交換できるように準備する場を整えます。また、招待会社にのみ喜ばれる有益な仕掛けができる空間デザインをします。

 知らないところで働いている、顧客や取引先や、その先の顧客たちのことも思いやれる想像力があると、目の前のニーズのみならず、その先まで思い描いて、彼らも気づかなかった、本当に必要としていることを見出して、新たな商談づくりが加速します

あなたのオフィスは社外への意識づけを強める仕掛けをしていますか?
オフィス移転を顧客の成長のために企画していますか?