“稼ぐオフィス”は、
繰り返し刷り込んでファンにする、
“稼がないオフィス”は、
一発勝負で集客をしようとする
「ねえテラサキさん。こんど移転披露パーティを行うので来ませんか?」不動産業を営む社長からのご招待です。
ワインを持ってお祝いに行きました。社員思いの社長がつくった、とても良いオフィスでした。
テーブルには、招待客一人ひとりの名前を書いた札があり、客をもてなす心遣いを感じた席でした。こんな招待を何度でも受けたいと思います。
今回は、前回話したオフィス戦略としての変革を、どのように行ったら効果的かを具体的に取り上げたいと思います。ひと言でいえば、タイトルにあるように「行事」として実施することです。
世の中には実に様々な行事があります。
城下町を訪れると、「○○祭り」「○○舞踊会」など、季節ごとに趣向を凝らした催しが開かれています。これらは古くからの習わしではありますが、現代風にアレンジされたものや、他の地方で受けがよかったもの、その土地での新たな取り組みの宣伝を兼ねたものがあります。
これらを見ると、外部の人々を惹きつけるための仕掛けなのだと気づかされます。
企業にはそれぞれ歴史があり、会社ごとに特筆すべき出来事、ストーリーがあります。これを社内外に発信することによって、活性化やリブランディングを仕掛けるところもあります。
一般的には、100周年記念、50周年、10周年ごとなど、「周年行事」を機会にします。
「周年行事」の目的や効力は、その企業の「歴史」や「取り組み」「将来性」など、「ブランド価値」を見直したり、取引先への日頃の感謝、将来も組みたい会社として存続します、といった宣言の機会になります。
これと似た現象を起こせるのがオフィスの改装・移転を機にする「オフィス変革行事」です。
一昔前であれば、事業の拡大・縮小や社員のモチベーション向上、使い勝手の便利性といった目的でしていたことですが、これからは、「オフィス戦略」として捉えて、より積極的にこの機会を利用すべきだと考えます。
せっかく時間もお金もかけてやる行事ですから、きちんと投資をして回収まで熟慮した計画をすべきです。
そうそう改装・移転はしないでしょう。ですからするときには、最大限利用できるようにします。
通常は、「移転しましたのでお披露目します、来てください」で終わってしまいます。これでは一度きりのイベントになってしまいます。そこで3段階の仕掛けをします。
第1段階は、移転前に社内外の意識を変えることです。
コンサルティングを受けて「オフィス戦略方針書」を作成します。それを社内で発表して、プロジェクトチームを発足させます。
チームメンバーには経営者の後ろ盾を与え、彼らが社内外のパートナーと協働して進行できるように取り計らいます。
第2段階は、移転時に、今の延長ではない、変える未来像を示してお披露目をします。
移転プロジェクトと併行して、招待計画をすすめます。優良顧客と取引先を優先して、数社ずつ選抜して招待するようにします。
将来のビジョンと、その時に自社と組むパートナーの特典を示します。この新しいオフィスで、これから行われることへの期待感を演出することが大切です。
第3段階で、移転後継続的に招待をするのです。
「顧客カルテ」をもとに、「利他的商談」を次々に仕掛けていきます。来社した顧客には、彼らの商売のテコになる、「提案」「おみやげ」「予想宿題」を提供します。
これを繰り返し行っていきます。
こうすることで、“お披露目イベント”は一度ですが、オフィス変革の「行事」として、社内外への情報発信の機会を何度もつくり出すことができて、面談回数をふやし、顧客接点の場から商談を増やすことができます。
オフィス内の営業力強化で受注を増やすことで、“稼ぐオフィス”に仕立てるのです。
人の脳は刺激を求めます。強い刺激を与えるためには、麻薬のような、よりインパクトのある印象が必要になるでしょう。
そのためにはお金をかけないとできないため、凝った内装のオフィスにして、“一大お披露目イベント”をしないと映えないことになります。
しかし、お金をそれほどかけなくても、顧客に刺激を与える方法があります。
継続的な招待で与える断続的な刺激です。実は一度の強い刺激よりも、脳は刺激の繰り返しを好むのでこちらの方が効果的です。
例えるなら、映画とドラマの違いでしょうか。
制作費にクローズアップすると、映画とドラマでは、10倍ほどの差があるようです。
ある調査会社の調べでは、映画製作費1位から3位は以下の通りです。「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」という作品は、日本円で、341億8000万円。「クレオパトラ」で339億5000万円。「タイタニック」が294億3000万円になっています。
これに対して、NHK大河ドラマで年間30億円だそうです。朝の連ドラ(年間)でも20億円であがるとのことでした。
視聴者へのインパクトですが、確かに映画は話題性もあってインパクト大です。しかし、ドラマの定着性はいかがですか。特にNHK大河と朝の連ドラは地味かもしれませんが、威力としては、ボディブローのようにジワリと効きませんか?予算10分の一でも繰り返しの効力は絶大なのです。
もう一つ、興行収入のことを少し述べておきます。
映画の場合、制作費の3倍というのが採算がとれるかどうかの判断基準です。
「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」で1000億円超の興行収入がないと赤字です。映画は博打だとはよく言ったものです。
それに引き替え、ドラマは興行収入としては求められていませんから、その意味では気楽です。気楽と言っても、朝の連続テレビ小説は、視聴率平均23%から24%が当たり前ということですので、作る方の苦労はありますが・・・。
横道にそれたので戻しますが、一発勝負よりも、継続で勝負した方が費用対効果でも良いのです。オフィス変革行事をきっかけに繰り返し刺激を与える仕組みにすることです。
あなたは、行事を最大限利用した稼ぐ仕組みにしますか?
それとも、金をかけすぎた仕組みのないオフィスにしますか?