“稼ぐオフィス”は、
「オフィス戦略方針書」から最適空間を創り、
“稼がないオフィス”は、
トータルコーディネートの罠にはまる
今回は<オフィスづくりでやらなければならないこと>を考察します。
前回、オフィスづくりで絶対してはならないこととして、
・オフィス業界の「手」にのってはいけないこと
・「見ること」で知らず知らずに真似をしてしまっていること
・どこにもない独自性を出すには発想力が大事であること
をみてきましたが、今回はその裏返しの「やらなければならないこと」です。オフィスの改装・移転プロジェクトでは、決めなければならない事柄が多岐にわたります。
期間内に「モレやオチがなく」完遂するために、何をやらなければならないでしょう?
寺崎は、自社で「オフィス戦略方針書」をつくることをお勧めしています。
方針書には、大きく分けて5つの要素を盛り込みます。
・目的・目標:なんのために、どうなりたいのか
・仕組みと仕掛け:どのような仕組みに、なにを仕掛けるのか
・社内体制:だれが、いつまでに、それを行うのか
・社外の協力体制:(それを行うために)だれと組み、どこまでしてもらうのか
・全体の流れ(工程):プロジェクトの期間は、いつからいつまでか
オフィスの構成要素には様々なことがありますが、仕掛けのなかで今回は「色づかい」に焦点を当ててみましょう。
お金をかけて改装するのですから、戦略的に考えたいものです。ただきれいにすることが目的ではなく、心理的な効果を引き出せるのが「色づかい」の特長です。
一般的なオフィスでは、全体的にモノトーンで統一しているところが多いです。白は気持ちをリセットする効果があり、黒は存在感のある色なので、シャープな感じのオフィスには無難な選択です。
赤は自己主張の強い色です。攻めのイメージがあり、営業部のチェアなどに取り入れて、活気を演出します。青は信頼感をもたらします。一般社員のチェアや応接セットに採用されています。白、黒、赤など原色が使われることが多いです。
その他にもあります。
緑と茶は自然をイメージするため、癒し効果があり、オフィス内に観葉植物を置いたり、カーペットに茶色を使ったりします。
ピンクはやさしさのイメージで、レディースクリニックの壁の色などに利用されています。
オレンジは自信が湧いてきます。黄色は脳を活性化する作用があり、紫は精神性を高めるそうです。
オフィス改善業界のデザイナーは、学校でデザインの歴史を学び、社会でも最新情報を仕入れて勉強しています。えらいと思います。
しかし、彼らが顧客へ勧める「色づかい」を観察すると、どこも似たり寄ったりの提案をするな、と感じています。
“稼がないオフィス”は「統一感」を重視するので、仕方ないのかもしれません。「高級感」をうちだして、受付周りが重厚であれば、オフィススペースも、ミーティングエリアも、役員室もみんな統一されて、重い感じがします。
逆に「シンプル」を掲げると、白と黒で統一されて、かえって無機質な印象です。また、「楽しく」をコンセプトにすると、ポップな「統一感」で、遊び場のような、落ち着きのない空間になったりします。
全体の配色を考えるのは、提案してくる業者のデザイナーです。
「営業に力を入れている御社には、コーポレートカラーの“情熱的な攻めの赤”をメインに持ってきましょう」「受付は企業の顔とも言うべきものです。御社のコーポレートカラーをふんだんに入れました」と受付周りは赤くなります。これが普通です。
トータルでのカラーコーディネートは、それはそれで、きれいなオフィスにはなるでしょう。しかし、“稼ぐオフィス”にはなりません。
なぜでしょうか?
なぜなら、方針をきちんと立てたうえで、パートナーのデザイナーへ指示を出さなければ、部分的な効果も最大限考慮された提案をしてもらえないからです。
招待客に、安心してリラックスして、と思ってもらいたいなら、どうして、落ち着けない「赤」を受付周りに配するのでしょう?
“稼ぐオフィス”への方針がないと、このようにトータルコーディネートの罠にはまるのです。これを前もって方針書に謳っておけば、パートナーのデザイナーは「赤」を使わずに、他のふさわしい配色を考えてくれます。これが大事です。
“稼ぐ営業オフィス”では異なっています。「オフィス戦略方針書」を作成しているので、パートナーと打ち合わせるときに、「招待する取引先との商談を最大限魅力的にするためには、どの場に、どの色を配したら効果的かを考えてくれ」とはっきり伝えられます。
・ここのコーナーには、白、黒を多用しない方が良いか?
・このくつろぎ場には、緑、茶を採用しよう。
・来客に観てもらう商品は赤いので、背景になる場には黒を持ってきたら映えるのでは?
と、目的に応じたデザインの相談ができます。
商談づくりは思いを巡らせることが大事ですから、黄色をどのように使おうか、とか、自社の存在感を敢えて誇張しないで、誠実な印象をあたえるために受付周りは青系かな?と、来客が安心してリラックスし、誠実な社員達と商談や意見交換をするのに適した空間づくりを目指すべきなのです。
そうすることによって、取引先にも社員にとっても最適空間が生まれるのです。
比較的期間がタイトなプロジェクトである「オフィス改装・移転」では、「色づかい」ひとつをみても、見落とされがちな一面です。ですから、バタバタしても外すことのないように「オフィス戦略方針書」を準備しておくことが、“やらなければならないこと”なのです。
これをいっぺんに作成するのは難儀ですが、「寺崎式オフィスメソッド」で、順番に作成していけば何てことはありません。お手伝いしますので、是非ともお声がけください!
以上のように自社の考えと方針を準備しておけば、他社の真似ではない、他社に真似されにくい、独自性のある“稼ぐ営業オフィス”を設計できます。そして、あらかじめ精査して決めているビジネスパートナーの協力のもと、基本設計を実施設計へと進めて、順調にプロジェクトを完遂させる事ができるのです。
あなたは、「オフィス戦略方針書」を準備されますか?
それとも、思いつきでプロジェクトの舵取りを任せてしまいますか?