第33回<気を散らすことから解放する>

“稼ぐオフィス”は、

時間の用い方を仕組み化して

利他的な企画提案に力を注ぐ、

“稼がないオフィス”は、

システムと言いながら

自分都合でまわりの貴重な時間を奪う

 

今回は<気を散らすことから解放する>を考察します。
 以前読んだ本の中で、ある会社が、コア・タイムには私語を禁止していました。社員同士の会話さえも許さない徹底ぶりでした。顧客もこのことを知っており、この時間帯には電話をかけてこないよう、気遣いを示していたほどです。

 良し悪しは別にして、仕事に集中させるために、客まで待たせることをしてまで、効率重視することが必要なのだろうか?と、当時考えさせられました。

 オフィスの中で気を散らす要因にはどんなものがあるでしょう。
 社員目線では早朝、静かな時間に片づけたい仕事があるのに、上司に呼び出される。見積書や提案書づくりに追われている最中に、同僚から話しかけられる。誰一人として取ろうとしない電話。郵便物や宅配便の受け取り、セールスの訪問。ビル管理会社の定期検針。清掃員の出入り。置き菓子、水、ベンダーの補充。文具通販会社から送られた荷物の振り分け等、数え上げたらきりがありません。

 どうしてこんなに商売とは直接関係のない雑事があり、たくさんの業者と契約を結んでいるのだろうと、疑問にさえ思っていません。

 営業がらみのバーター取引。顧客や取引先とのお付き合いもありますが、一番大きいのは“コンビニエンス”として利用を始めてしまったものです。便利な通販、置き菓子、おいしい水の類です。「わざわざ外に出なくても、居ながらにして使用できる」と積みあがったもの。
 この溜まった滓を一度整理してみるべきです。気を散らす原因削減の仕組みを考えます。

 まず、すべてを書き出して分類、仕訳します。次に商売と関係ないものは、躊躇することなくバッサリ切ります。その中でも残った業者は、まとめます。どの様にまとめるかは、こちらで指定した月ごと、週ごと、時間帯に、同時に来てもらうことです。

 例えばコピー用紙などの文房具系です。通販会社に都度依頼しているため、バラバラに到着し、その場にいた社員が受け取って、開梱し、共用場所に並べているのが現状です。これを廃止して、月ごとや週ごとに切り替えます。

 近隣の文房具屋に依頼して、現在の在庫をチェックし、定期的に補充するのを、その会社で代行できないかを相談をします。そして仮に、毎月第一水曜日の午後一に行うよう定めて、その時に一斉に管理をします。チェックと精算を同時にします。

 また、他の業者、例えばビル管理会社の水質、空気、感知器チェックのような定期点検も、文房具屋の時間帯に少しずらして予約しておきます。
 すべての業者をまとめることは現実的ではないかもしれませんが、まとめられるものは全てまとめてしまえば、毎月第一水曜日の午後一から2時間を雑用時間として取り分けておくことで、あとは対応する必要が無くなります。これだけでも気を散らす事柄の半分は解消します。これらは、社員にやらせれば解決できる改善策です。

 厄介なのは社長や上司からの突然の呼び出しです。社員の口からは言えないことです。こういう時に、リーダーシップを発揮して頂きたいものです。

「社員を集中させるために、気を散らすことを削減する仕組みにする」と決めて、呼び出すときは、月ごと、週ごと、日ごとに、「だれを参加させ、だれを参加させずにおくか」を周知して、社長の意図とメッセージを社員に伝えます

 これを受けた社員たちは、参加をしなければならない時には、求められるものも大きい事を自覚して、事前準備や頭の整理をして臨むようになります。
 社員を、自分の都合の良いときに呼び出して、話をするのが仕事ではなく、社員が自主的に仕事をするように仕組むことが、効率を重んじる社長のなさる仕事だと考えます。

 そして、“稼ぐオフィス”はもう一歩すすみます。ムダを削減し効率を重んじますが、その上で「風通しの良い社風」を目指します。利他的な気持ちをもつ余裕が必要と考えます

 顧客第一と考える社長には、気を散らすことからの解放が、効率的で商談を生み出す、働きやすいオフィスなのだ、というご理解を頂けると信じます。

 とかくこの世はシステム化を推し進めますが、緩やかな人と人とのつながりをもたせることが、社員の新しい発想、企画力や提案力を鍛えるのです

 「情報化社会」は人々を“ノイズ”として排除しようとします。

 これを説明するのによい例は、“身分証”です。会社には“社員証”がありますが、毎日通る正面入り口で、顔見知りの警備員がいます。ある人が“社員証”を忘れて頼みます。「○○部の○○です。通してください」それに対して、「“社員証”を提示しなければ通せません」。毎日見ている顔なら余程の馬鹿でもない限り覚えます。

 これは警備員が覚えてないからではなく、本人の顔よりも“社員証”のルールを優先しているからです。こういう融通が利かない社会を「情報化社会」だと私は思います。一度“仕事が出来ない人”と決めつけると、“レッテル”を貼ります。そのような人とは口も利きません。社内がこんなギスギスした人間関係で良いはずがありません。

 人とのつながりを重視すれば、「○○部の○○です。通してください」に対しての返事は、「見てませんから勝手に通って下さい」になります。

 これはたとえですから、実際に警備員がこれをやったら解雇されてしまいそうですが・・・。ただ、社外の人々ともこんな冗談を言い合える仲になれることは、とっても大事なことだと言いたいのです。人々を“ノイズ”として扱うのではなく、“インタレスト”な存在という視点がもっとあれば、利他的商談で、顧客第一に考える人々が働く、“稼ぐオフィス”に変革できるのです。

あなたの会社では、ムダなく効率的に働く社員で利他的商談していますか?
それとも、ギスギスした社員に気を使いながら、仕事に集中させられずにいますか?