第40回<これからのオフィスが備えるべき機能>

“稼ぐオフィス”は、
仕事の本質を機能させて稼ぎ出す、

“稼がないオフィス”は、
軋む競争の機能を回し続けて焼き付く

 今回は、<これからのオフィスが備えるべき機能>とはなにかをとりあげます。
 めまぐるしく変わる世界で、オフィス環境も変化させることを迫られています。テクノロジーの進歩と共に、人々の仕事のやり方も進化させなければなりません。この不確実性を脅威と見るか、面白いとみるかで、経営方針にも大差が出ることでしょう。脅威と感じれば委縮して「守り」の方針になり、面白いと感じれば挑戦や実験、試行錯誤を繰り返し、積極的かつ前向きな「攻め」の方針になります。
 オフィスづくりは戦略です。変わり映えしない現状を打破するためには、日常業務の改善を社員に指示するだけでは足りません。経営課題であり、仕事の本質とも言える「顧客を知り、喜ぶ仕方で提供すること」をどう仕組むか。そのために、ただの改善に留まらずに変革まですることが必要です。変革するのは実権を握る経営者の専権です。

未来のオフィス像を考えるとき、あなたはどんな戦略を立てますか?
相変わらず競合とシノギを削る戦略でしょうか?
私は“やさしい戦略”をお勧めします。それはどのようなものでしょうか?

 戦略として「社長が自分のやりたいことをやる」ことです。なぜなら、自分にして欲しいと思うことが、顧客も求めている可能性が高いからです。でも決して難しい事ではなく単純であったりします。「顧客と対話すること」だけです。ですから“やさしい戦略”と申し上げたのです。

その戦略を実行するには、オフィスにどんな機能が必要でしょうか?

 これからの時代には共感力が重要です。備えるべき機能とは、「付加価値共創の場」です。「顧客と対話すること」を積極的にオフィスに仕組みます。相手を知ることは、面談することである程度は分かりますが、あくまでも表面上のことです。心の奥底にある考えや欲求にまで思いを馳せるには、想像力や洞察力が欠かせません。予知能力のような特殊なものがなくても、このような特質はだれにでも培える能力です。相手が何を望み、なにを欲するであろうかを知る、この仕組みをつくるときに、この「誰にでもできる」ということが鍵になります。また、オフィス機能は「誰にでも使える」ものでなくてはなりません。機能を使いやすくすることで、コミュニケーションや信頼関係強化が生まれます。

 現代は対話力が低下しているのではないでしょうか。会話と違って対話は「相手との思考の交流」、互いを理解するためのコミュニケーションとも言えます。いま社会が複雑化している原因は、コミュニケーションを対面でしないからだと考えます。婉曲で曖昧で複雑化している。何一つとして確実ではなく変動的です。こんな時に有効なのは、自社に招待して会って話す。顧客を肯定し、安心感を与え、信頼するといった気遣いです。対話を通して相手を知ることで、共感力のあるコミュニケーションを強化します。つまり、社員の能力を再定義することで、「喜ぶ仕方で提供すること」を切り拓く機能です。

 これからのオフィスに必要な機能は、今までのように競争力に目を向けた戦略を、適応しやすく、好奇心をもって共感する戦略にシフトさせることです。これは新しいアイデアを生み出し、とり入れ、巧みに実現させる能力が大事だということです。慣行を新しくすることです。

 “稼がないオフィス”は、いままでの機能にこだわります。特に支障も無かったり、お金をかけたシステムなので、変えるのに躊躇します。“競合と闘う複雑な戦略”で、社内に目を向け、コストダウン重視で、自社の利益を優先する、古い慣行から脱却できないでいます。

 例えていえば、オイル交換せずに回し続けているエンジンのようなものです。潤滑油である“戦略”が粘り気も無くなっているのに使い続けています。このままでは焼き付くことは間違いありません。同じようにオフィスでは人間関係が、特に大事な顧客との関係が焼き付きます。「適応力・好奇心・共感力」といった特質を培う場が機能としてないために、「守り」の方針になり、顧客の欲するものを提供できなくなっています。

 しかし“稼ぐオフィス”は“やさしい戦略”でこの「付加価値共創の場」が機能しているので、円滑にレッドゾーンまで一気に回転数を上げて、スピードを出すことができます。
 このような機能を導入するには、改装・移転などの「オフィス変革行事」の時がチャンスなんです。創造性と全体的なパフォーマンスが向上します。顧客との協働を通してイノベーションを起こすのは、「利他的な企画と提案力を仕掛けること」です。「社長が自分のやりたいことをやる」には、自分の頭で考えたものをうまく伝える技術が必要です。そのために、「オフィス戦略方針書」という明確化した考えを文書化するのです

 オフィス機能の優先順位上位に「セキュリティ」を挙げる企業もありますが、外部を受け入れる心を閉ざす現在の方法は、イノベーションを阻害する要因だと考えます。
 受付が「企業の顔」だなんて古くさい考えです。「顔」は評判、実際会うことで受ける印象から感じ取ってもらうものです。サーバー室はクラウド化やデータセンターに移して管理を不要にします。個室の壁もいりません。あなたはレストランで食事を楽しむ時、閉塞感のある個室がお好きですか?それよりも他の人々を観察したりして楽しむのではありませんか?オープンスペースで、とにかく不要なものは次々に駆逐して風通しの良い社風にすることも、イノベーションを生むコラボレーションをするのに備えるべきことです。
そして、オフィス機能の最上位は、「ICTの働きのある機能」になります。
この話は次回にしたいと思います。

あなたは、これらの機能を回転させることでスピードを上げますか?
それとも、いままでのオフィス機能にしがみついていますか?