第41回<オフィスの重要機能はICTで働かせる>

“稼ぐ営業オフィス”は、
重要機能を仕組みで回して快速で行動する

“稼がないオフィス”は、
全ての機能を充実させようとして失速する

 「ねえ寺崎さん、いまうちの社員がこんな働き方してるんだけど、もっと自主的に動いてもらう方法はないもんかね。どんなオフィス機能をとりいれたらうまくいくかね。」

 あるクライアントからの質問です。こういった悩みはいま始まったことではなく、昔からよく言われることです。社員の自主性や、自分ごととして捉えること。なぜこのことがうまく機能しないのでしょうか?どのようにしたらうまくいくのでしょうか?

 今回は、オフィスが備えるべき重要機能にICTの働きを取り入れる方法をとりあげます。

 これは第28回でも概論を述べましたので興味のある方はそちらも併せて読んで頂ければより理解が深まります。

 前回(第40回)は、「エンジンのたとえ」で話をしましたが、「付加価値共創の場」を機能させるためには、新しい戦略に“オイル交換”しないと焼き付いてしまいます。これを具現化するための策を示したいと思います。

 一般的な機能とは、受付エリア(待合の機能)、執務エリア(情報機能)、会議エリア(打ち合わせ機能)、役員エリア(意思決定機能)開発エリア(開発機能)、収納エリア(整理機能)というように、それぞれが機能を持っています。但しすべてが“自社都合”で作られています。

 受付エリアは、来客を“待たせる”ためです。執務エリアは、客に“売り込む”資料と“社員の”業務のためです。会議エリアは、客に“買わせる”ための方法を話し合うためです。役員エリアは、社員達をもっと効率的に“働かせるかを考える”ためですし、開発エリアは、“自社製品”改良のためです。収納エリアは、“売上げた記録を保管する”ためです。“稼がないオフィス”には、スピード感を感じません。社員達も他人事です。どの機能もまんべんなくあって、さして特徴がありません。

 “稼ぐオフィス”では、同じ機能でも、受付エリアは、来客を“出迎えて案内をする”ためです。執務エリアは、“客が売れるようになるための企画をする”ためにあります。会議エリアは、客に提案したり、“客がもっと売れる方法を話し合う”ためです。役員エリアは、コラボレーションの場へ解放して、開発エリアは、“客とプロトタイプをつくる”ためです。収納エリアは、倉庫へ集約して、動き回れるスペースを生み出します。

 これら全体に3つの重要な機能を挿入します。このようにして、“顧客のため”にオフィスをつくり直します。社長の意志で働く人々が、自主的にその機能を十分に活かし、スピード感をもって、稼ぎ出す仕組みを回しています。それは、顧客が売れるための企画を練る習慣であり、自分ごととして捉えて行動する動機づけとなる仕掛けです。社長は、重要機能に絞って集中させます。その他の機能はオマケ程度に考えて、業務を見直し、社員個々の負担を軽くします。

 そして“顧客のため”考えさせる装置と、この3つの機能が整えば素早く行動されます。

 例えるなら、自転車を漕ぐときのようなものです。
自転車は、速くペダルをこぐことで、車体が安定します。オフィスもスピード感をもって変化させます。自転車のパーツ構成は、フレームがあり、ハンドル、サドル、ペダル(と駆動装置)、タイヤ、ブレーキなどが主だったものです。フレームという装置に、ハンドルとタイヤとペダルの3つの機能があれば早くこぎ出すことができます。サドルがなくても、ブレーキがなくても、泥除けやライトが付いていなくても、速く走ることが可能です。

 同じように、オフィス機能も、この装置さえあれば、「重要機能に集中させ、スピードをもって対処する」ことができるのです。

 重要機能とは、「創造の場」「提案の場」「商談の場」の3つです。社内中心の製品・サービスではなく、社内外のパートナーたちと一緒に商談をつくり出す、お客の製品・サービスを売り込む機能です。「創造の場」とは、外部視点で顧客のことを考える場です。「提案の場」は、優良顧客が「欲しい」と思うことを提案する場です。「商談の場」は、顧客と商談を共創する場のことです。

 「自社へ誘い込んで攻める戦略」の「付加価値共創の場」が3大機能です。この戦略には、装置であるICT(一致・コミュニケーション・提案力)が欠かせません。

 また、若い力に漕いでもらえばもっと速く走れます。新しい戦略に“オイル交換”することだけではなく、若い社員に自分ごととして考える習慣を持たせるよう仕掛けます。

 若い社員を鼓舞するためには、社長の強い意志が不可欠です。「コミュニケーションを円滑に行える機能があること」に加えて、「一致させる・コミュニケーションをさせる・提案力を上げる」と決めることが必要です。“お客様本位”で、“全社一丸”となって顧客の利益を追求します。

 顧客から、“組みたい会社”として認知され、共に成長するために3大機能にICTを掛け合わせれば、積極的かつ利他的な会社として持続成長できることや、潤沢な利益を還元できる道程を示せます。

 将来展望を明るくすることでやる気にさせます。いまの自分の働きが、顧客を喜ばせ、将来的に報われると自覚させることが大切です。

 3大機能は「付加価値共創の場」をつくるという一つのことを言っています。エリアはいくつもありますが、どのエリアでも、「顧客のための場」にできます。

 そして、ICTというフレームと、ペダル・タイヤ・ハンドルの3大機能を掛け合わせます。このフレームであるICTという装置が、社員を自主的に、自分ごととして捉えて、積極的に働かせる原動力なのです。大事なことは、社員個々が、「自分の頭で考え・他の人に考えをうまく伝え・他人の意見を取り入れる」ことから、「利他的な企画と提案力を培う」ことです。こうして若さも巻き込んで速くこぐ事ができて、経営を安定させながら“稼ぐオフィス”が回転するようになります。

あなたは、オフィスの重要機能を“顧客向け”にスピーディに回転させますか?
それとも、じっくりと各機能に分散させて“自社の”取り組みに集中しますか?