第42回<オフィス変革に必要な考え方>

“稼ぐオフィス”は、

構想力ある社長のビジョンで形づくる、

“稼がないオフィス”は、

現状の延長線から継ぎ足して作る

 

「てらさきさん、近いうちに増員を考えているんだけど、ちょっと相談に乗ってくれないか・・・」とクライアントからの依頼がありました。昨年、全体のレイアウトを見直したオフィスです。数名社員を増やす計画なので、またレイアウトを触る必要が生じます。

 話し合いをしていると、ここにある収納庫はここに持って行って、空いたところに机を増やして、そうだロッカーも足りなくなる・・・。

「社長、ロッカーを廃止することも視野に入れては如何ですか?作業着に着替える必要があるお仕事なら必要ですが、個人の私物入れになっているようであれば、いっそのこと無くしてしまえば、スペースも生まれますよ。できるだけ無くせる家具は減らして、オープンスペースをつくり、可動性のある家具に変更すれば、コミュニケーションエリアを充実させる事ができます。」とお伝えしました。ただの物置のためと、コミュニケーション活性化のためとでは、スペース効率が違います。

 “稼がないオフィス”は、現状の延長線で考慮するため、継ぎ足してレイアウト変更をします。

 改装・移転当初は、それなりに整えられた“きれいなオフィス”であったのに、度重なるレイアウト変更で、コミュニケーションエリアに執務エリアが食い込み、セキュリティの観点から、さらにコミュニケーションエリアを縮小して壁を設置したりして、オフィスの重要な機能を破壊していきます。

 当初目的は“商談目的”であったのに、いつの間にかただの執務スペースになっています。これでは改装・移転当初に考えていた、費用対効果も見込めず、結果的に無駄遣いをしたことになります。

 将来を見据えて計画し、そこから逆算して今はこうあるべき、と配置を考えれば、少し余裕のあるレイアウトをつくります。最初からバッファをみておけば、重要機能である、“商談の場”を削ったりすることはありません。

 “稼ぐオフィス”は、構想力ある社長のビジョンで形づくるので、そのようなことは稀にしか起こりません。

 稀というのは、計画よりも早く事業が波にのり、急な増員を考えるときだけです。ただ、その時には次の移転を考えていますし、このような変革行事を重要な投資とみています

 ですから、目先の流行りに振り回されることなく、着実に階段を上って、ビジョンに近づけるのです。

 これを行うためには、外部視点がどうしても必要です。

 明確なビジョンを持ち、そこから逆算していま何を行うかを定めている知恵ある社長は、まず最初に、ご自身の構想をカタチにするために、専門家に相談して「方針書」としてまとめます

 全社一丸となり、顧客と共創するためのオフィスに投資する、その代わり費用対効果を求める。このオフィス戦略の「方針書」を羅針盤にします。航海には、凪もあれば嵐もあります。その時にはその場に合った対処が必要です。しかし、向かうべき目的地は変わりません。社長の構想力で描く目的に沿ったオフィスをつくります

 あなたにも明確なビジョンがあるのではないですか?

 島根県安来市にある、足立美術館をご存知の方も多いでしょう。広さ5万坪の敷地に6つの庭園。「名園と横山大観コレクション」が売り物です。足立全康氏が、「美の感動に接してもらいたい」と始めたそうです。

 展示物も素敵ですが、なによりもすごいのは、部屋の窓から見える景色です。枯山水を始めとする各庭園から遠くの山々までがまるで一つの庭であるかのような錯覚を起こし、見る人々を魅了します。

 借景と呼ばれる技法ですが、ふつうは時代と共に寂れてしまうものです。長野県にある松本城も素晴らしい借景を築城した城主は描いていたようですが、時経つうちに、周りの個人が好き勝手に建てた建造物に邪魔されて感動も今一つになっています。

 ところが足立美術館は、創った主人がカネをつぎ込んでまわりの山々まで買い取り、将来的にも変な建物が入り込まないように配慮したのです。なんという将来展望でしょう。

 これこそ構想力というものです。今さえよければ、自分さえよければなんて狭い了見はみじんも感じられません。作った主人は鬼籍に入り、自分では見ることができませんが、この施設が今でも訪れる人に感動を与え続けることによって名を残すことができています。

 現在も「美の感動に接したい」来館者がいるということは、足立氏の目的が達成できた証拠ではないでしょうか。

 すぐ目の前にある流行に乗るのはやめましょう!

 うそ偽りなく「わたしはこうしたい!」と、実現すると決めたビジョンを掲げ、そのためには、~する。そのためには、~する。そのためには・・・と逆算して、だから「いまオフィスを変革する」と戦略を描きましょう!

 そのためのお手伝いを喜んでします。

あなたは、将来の費用対効果を見込んだオフィス投資をしますか?
それとも、無駄遣いをしていないつもりでお金を浪費しますか?